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1次変換。

2014-11-29 00:03:06 | mathematics
ベクトルをベクトルに移す写像 f が1次変換であるというのは

f(x+y)=f(x)+f(y)

および

f(kx)=kf(x)

が任意のベクトル x, y およびスカラー k に対して成り立つことである。

1次変換の著しい特徴の一つは,1次変換同士の合成もまた1次変換になるということである。実際,f と g とを1次変換とし,それらの合成 gof を h とおくと,

h(x+y)=g(f(x+y))=g(f(x)+f(y))=g(f(x))+g(f(y))=h(x)+h(y),
h(kx)=g(f(kx))=g(kf(x))=kg(f(x))=kh(x)

となるからである。このような,合成という演算に関して閉じている写像の集合は特別な世界を形成する。

さて,もしも1次変換 f が全単射であれば逆変換が存在する。それを F と記すことにしよう。

任意のベクトル a, b に対し,ちょうど f(x)=a かつ f(y)=b となるようなベクトル x と y がそれぞれただ一つ定まる。このとき,これらの関係は言い換えれば F(a)=x かつ F(b)=y ということだから,

F(a+b)=F(f(x)+f(y))=F(f(x+y))

となるが,任意のベクトル z に対して F(f(z))=z が成り立つから,

F(a+b)=x+y=F(a)+F(b)

となる。また,任意のスカラー k に対し,

F(ka)=F(kf(x))=F(f(kx))=kx=kF(a)

となるから,逆変換 F もまた1次変換であることがわかる。

というわけで合成変換や逆変換もまた行列で表せるはずであるが,それらはちょうど f と g の表現行列の積であったり,f を表す行列の逆行列であったりするわけである。ここへきて初めて行列の積という演算の意味がはっきりする。そもそも単に連立方程式を掃き出し法で解くという段階では行列の演算は不要である。また,行列の演算だけを抜き出して最初に導入するのもいかがなものかと思う。線形代数とは1次変換を研究する学問であると初めに位置づけ,その上で行列の演算を導入するのが妥当ではないだろうか。

ただしそのような理論構成にする場合,1次変換を何のために研究するのか,目的ないしは動機を明確にすべきであろう。それらの動機は,工学系の諸学科においては各々の目論見があるはずであり,工学教育ではそういった専門分野からの要請といった側面をきちんと学生に提示することが重要なのではないかと思う。

こうしたことは数年前から真剣に考えているのだが,自分が教えている学科の専門分野の知識がほとんどないため,気持ちだけが空回りしている。しかし,困難だからといって努力せずに初めから諦めてしまうのはやはりよくないことなのだろう。自分の力の及ぶ限り,あがくほかあるまい。
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