例年と違い,年末年始は完全にオフである。
といっても,担当授業の資料作成など,休み中にすべき仕事はいろいろあるのだが,なんだかすっかりだらけモードに入ってしまった。
というわけで,脳内に架空の厳しい秘書(女性)を作り出し,彼女に厳しくスケジュール管理をしてもらうという遊びでどうにか計画的に休みを有効活用できないか,考えてみた。
とりあえず,趣味と実益を兼ねて,冬季の長期貸し出しによって借りている,合計30冊以上の本を少しでも読むよう,読書目標を立てようと思う。
秘書は今後「マル秘」というコードネームで呼ぶこととし,『鬱宮(うつのみや)マル秘』シリーズを立ち上げることとする。
第一弾は『鬱宮マル秘の叱咤(しった)』で,今週は一日,新書サイズで100ページ以上の文章を読むというノルマを課す。
第二弾は『鬱宮マル秘の激励』で,授業用のプリントの作成など,新学期にいろいろスムーズに行くように仕事を進めるという企画である。
第三弾は『鬱宮マル秘の激務』で,専門分野の勉強や論文の執筆などの学術的な活動を取り扱う予定である。
必要ならば,第四弾以降も構想する。
さて,今日は第一弾『叱咤』の初日であるが,実施状況ははかばかしくない。
マル秘「社長,今日の成績はいかがでしたか。」
私(あだ名は社長)「それが・・・,その,マル秘君,怒らないで聞いてくれたまえ。」
マル秘「『怒らない』というのは,ことと次第によっては確約しかねます。」
私「や,やっぱりそうだよね,うん。ええと,今日は,昼間はほとんど寝てて,夜になってからちょこっとだけ本を読んだのね。」
ビキッ。←マル秘の額に青筋が浮かび上がった音。
マル秘「・・・。どんな本を,何ページお読みになったのでしょうか・・・?」
(マル秘の声はかすかに震えていて,怒りを必死に押し殺しているさまが窺える。)
私「(こ,こえぇーーー!)えっと・・・,中公新書の,市川伸一さんの『考えることの科学』っていう本の第1章だけしか読めなかったのね。」
マル秘「・・・。それは何ページあるのですか。」
私「きっかり40ページ・・・です。」
マル秘「40ページ・・・,と。(何かの用紙にメモメモしている。)で,他には・・・?」
私「日本評論社から出ている,銀林浩さんの『人文的数学のすすめ』という面白そうな題名の本の,『開講の弁』っていう,前書きの2ページです・・・。」
マル秘「合計42ページですね。メモメモ。」
私「あ,あと,平凡社の『歴史の中の数学』のフィリップ・P・ウィーバーによる序文の1ページも追加しておいて。」
マル秘「はい。43ページ,と。メモメモ。」
私「そういえば,紀伊国屋書店から出ているヒュー・レーマンの『数学と哲学』の訳者あとがきの2ページも読んだっけ。」
マル秘「45ページですね。メモメモ。」
私「あ,最後に,みすず書房から出ているイーヴァル・エクランドの『数学は最善世界の夢を見るか?』の『はじめに』を読もうとしたかな。あと,岩波新書の藤田正勝さんの『西田幾多郎』の序章の最初の1ページだけと,現代数学社から出ている清史弘さんの『数学の幸せ物語・前編』の登場人物紹介とか,ちょっと読んだかな・・・。」
マル秘(少しイライラした様子で)「あれこれ手を出しているのは十分わかりました。それで,肝心のページ数はいくらなのですか?」
私「・・・。とりあえず,無しでいい・・・です。」
マル秘「はぁ?」
私「どれもこれもちゃんと読んだとは言いがたいので,実際に算入するのはまだ時期尚早かな,と・・・。」
マル秘「・・・。ということは,本日の実績は45ページということでよろしいですか?」
私「そういうことになるかな。」
マル秘(大きなため息をついて)「これでは全然ノルマを達成できていませんね。これだけ暇な時間があるのに,やはり社長には一日100ページですら重荷なのでしょうか。ノルマを引き下げますか?現実的な選択肢として,検討の余地があるかと思いますが。」
私「ちょ,ちょっと待って。まだ見捨てないで!初日で,ちょっと調子が出なかっただけだよ。明日,明日からはすごいんだから。そのうち,逆にノルマの引き上げを検討することになるんだから。見ててよ。」
マル秘「・・・。わかりました。とりあえずその言葉を信じましょう。ところで,僭越ながら,わたくしから一つ提案したいことがあるのですが。」
私「大体予想がつくけど,何?言ってみたまえ。」
マル秘「ほんの45ページしか読んでいないのに,つまみ食いをした本を7冊も挙げておられました。もっと対象を絞るべきではありませんか?例えば一冊の本に集中すれば,丸一日もかけずに100ページなど楽に達成できると思いますが。」
私「僕はじっと一冊の本に集中するのが大の苦手なんだよね・・・。困ったことではあるんだけど,なかなかこの癖を直せなくて。」
マル秘「そうですか。それが社長のスタイルだとおっしゃるのなら仕方がありませんね。では,いろいろな本に手を出してもよいが,せめて一章を単位としてまとめて読むという方針にしてみてはいかがですか。」
私「うん。それはいいアイデアかもね。それくらいは実現できるよう,努力してみるよ。」
マル秘「では,明日の報告を楽しみにお待ち申しております。」
私「まあ,あんまり期待しないで待っててよ。先は長いんだから,気長にのんびりやっていこう。」
マル秘「そんなだらしのない心構えでは,冬休みの二週間など,あっという間ですよ。」
私「そ,そうだよね。うん,もう少しビシッとやろうかなっ。」
マル秘(本当に大丈夫かしら,この人・・・。)
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>> 続く
といっても,担当授業の資料作成など,休み中にすべき仕事はいろいろあるのだが,なんだかすっかりだらけモードに入ってしまった。
というわけで,脳内に架空の厳しい秘書(女性)を作り出し,彼女に厳しくスケジュール管理をしてもらうという遊びでどうにか計画的に休みを有効活用できないか,考えてみた。
とりあえず,趣味と実益を兼ねて,冬季の長期貸し出しによって借りている,合計30冊以上の本を少しでも読むよう,読書目標を立てようと思う。
秘書は今後「マル秘」というコードネームで呼ぶこととし,『鬱宮(うつのみや)マル秘』シリーズを立ち上げることとする。
第一弾は『鬱宮マル秘の叱咤(しった)』で,今週は一日,新書サイズで100ページ以上の文章を読むというノルマを課す。
第二弾は『鬱宮マル秘の激励』で,授業用のプリントの作成など,新学期にいろいろスムーズに行くように仕事を進めるという企画である。
第三弾は『鬱宮マル秘の激務』で,専門分野の勉強や論文の執筆などの学術的な活動を取り扱う予定である。
必要ならば,第四弾以降も構想する。
さて,今日は第一弾『叱咤』の初日であるが,実施状況ははかばかしくない。
マル秘「社長,今日の成績はいかがでしたか。」
私(あだ名は社長)「それが・・・,その,マル秘君,怒らないで聞いてくれたまえ。」
マル秘「『怒らない』というのは,ことと次第によっては確約しかねます。」
私「や,やっぱりそうだよね,うん。ええと,今日は,昼間はほとんど寝てて,夜になってからちょこっとだけ本を読んだのね。」
ビキッ。←マル秘の額に青筋が浮かび上がった音。
マル秘「・・・。どんな本を,何ページお読みになったのでしょうか・・・?」
(マル秘の声はかすかに震えていて,怒りを必死に押し殺しているさまが窺える。)
私「(こ,こえぇーーー!)えっと・・・,中公新書の,市川伸一さんの『考えることの科学』っていう本の第1章だけしか読めなかったのね。」
マル秘「・・・。それは何ページあるのですか。」
私「きっかり40ページ・・・です。」
マル秘「40ページ・・・,と。(何かの用紙にメモメモしている。)で,他には・・・?」
私「日本評論社から出ている,銀林浩さんの『人文的数学のすすめ』という面白そうな題名の本の,『開講の弁』っていう,前書きの2ページです・・・。」
マル秘「合計42ページですね。メモメモ。」
私「あ,あと,平凡社の『歴史の中の数学』のフィリップ・P・ウィーバーによる序文の1ページも追加しておいて。」
マル秘「はい。43ページ,と。メモメモ。」
私「そういえば,紀伊国屋書店から出ているヒュー・レーマンの『数学と哲学』の訳者あとがきの2ページも読んだっけ。」
マル秘「45ページですね。メモメモ。」
私「あ,最後に,みすず書房から出ているイーヴァル・エクランドの『数学は最善世界の夢を見るか?』の『はじめに』を読もうとしたかな。あと,岩波新書の藤田正勝さんの『西田幾多郎』の序章の最初の1ページだけと,現代数学社から出ている清史弘さんの『数学の幸せ物語・前編』の登場人物紹介とか,ちょっと読んだかな・・・。」
マル秘(少しイライラした様子で)「あれこれ手を出しているのは十分わかりました。それで,肝心のページ数はいくらなのですか?」
私「・・・。とりあえず,無しでいい・・・です。」
マル秘「はぁ?」
私「どれもこれもちゃんと読んだとは言いがたいので,実際に算入するのはまだ時期尚早かな,と・・・。」
マル秘「・・・。ということは,本日の実績は45ページということでよろしいですか?」
私「そういうことになるかな。」
マル秘(大きなため息をついて)「これでは全然ノルマを達成できていませんね。これだけ暇な時間があるのに,やはり社長には一日100ページですら重荷なのでしょうか。ノルマを引き下げますか?現実的な選択肢として,検討の余地があるかと思いますが。」
私「ちょ,ちょっと待って。まだ見捨てないで!初日で,ちょっと調子が出なかっただけだよ。明日,明日からはすごいんだから。そのうち,逆にノルマの引き上げを検討することになるんだから。見ててよ。」
マル秘「・・・。わかりました。とりあえずその言葉を信じましょう。ところで,僭越ながら,わたくしから一つ提案したいことがあるのですが。」
私「大体予想がつくけど,何?言ってみたまえ。」
マル秘「ほんの45ページしか読んでいないのに,つまみ食いをした本を7冊も挙げておられました。もっと対象を絞るべきではありませんか?例えば一冊の本に集中すれば,丸一日もかけずに100ページなど楽に達成できると思いますが。」
私「僕はじっと一冊の本に集中するのが大の苦手なんだよね・・・。困ったことではあるんだけど,なかなかこの癖を直せなくて。」
マル秘「そうですか。それが社長のスタイルだとおっしゃるのなら仕方がありませんね。では,いろいろな本に手を出してもよいが,せめて一章を単位としてまとめて読むという方針にしてみてはいかがですか。」
私「うん。それはいいアイデアかもね。それくらいは実現できるよう,努力してみるよ。」
マル秘「では,明日の報告を楽しみにお待ち申しております。」
私「まあ,あんまり期待しないで待っててよ。先は長いんだから,気長にのんびりやっていこう。」
マル秘「そんなだらしのない心構えでは,冬休みの二週間など,あっという間ですよ。」
私「そ,そうだよね。うん,もう少しビシッとやろうかなっ。」
マル秘(本当に大丈夫かしら,この人・・・。)
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>> 続く