「今日は,貴重な体験談をお聞かせくださるゲストをお招きしております。」
すりガラスの向こうに,やや小太りな男性の影が映る。
「杉村開さん(仮名),ようこそいらっしゃいました。」
杉村(仮名)「どうも,はじめまして。」
※ プライバシー保護のため,音声は変えてあります。
「それで,今日はどういった内容をお話いただけるのでしょうか?」
杉村(仮名)「それがですねぇー,ワタクシ,これだけはやっちゃあヒトとしておしまいだろということをやってしまいまして。」
物々しいナレーション(以後,N):
杉村(仮名)さんは,軽い気持ちで大手ハンバーガーチェーン店のケータイ会員に登録したという。
「差し支えなければ,もう少し具体的にお店の特徴をお教えいただけないでしょうか・・・?」
杉村(仮名)「あのー,赤地にでっかく黄色い M の文字がトレードマークの・・・。」
「あ,そ,それ以上はもう何もいわないで下さい。っていうか,小技利かせてリアルな記号を書かないで下さい。よくわかりましたから。(っていうか,その企業,この番組のスポンサーなんだけど・・・。そっか,番組で取り上げるってことは,一種の宣伝みたいなもんだから,問題ないどころか,むしろプラスに評価してもらえるかも。)」
N:ケータイ会員になると,週に一回ほど,お得なクーポンの情報がメールで送られるという。
杉村(仮名)「最近来たクーポンで,結構お買い得だな,と思えるものがあったんですよね。」
N:それが杉村(仮名)さんを困った事態に陥らせる巧みな甘い(うまい?)罠だったという。
杉村(仮名)「セール中で,ただでさえ普段に比べて安くなっているセットメニューがあったんですけど,それを二つ頼むと,ぽっきり千円で,ばらばらに頼むより80円も安くなるっていうクーポンが目に入ったんです。」
「あー,もう大体話の結末は予想がつきましたよ。テレビの前の視聴者の皆さんも,お分かりですよね?」
N:杉村(亀井)さんは,7月に入ってから食事の量を減らし,10月末には5キロもの減量に成功したという。ところが,11月のたった一ヵ月で,3キロもリバウンドしてしまったらしい。
「あ,ダメダメ!本当の苗字がモロバレしてますってば。」
杉村(仮名)「秋から冬にかけては,寒さに備えて皮下脂肪が増えるからちょっと太るのは仕方がないのかと思っていましたが,むしろ寒いので体温を維持するためにエネルギーを消費するからやせる,という説を最近ネットで見かけまして。」
N:ネットで読んだ専門家の言葉によると,冬はやせる傾向にあるはずだが,暖房を使いすぎると体のバランス調節機能がおかしくなり,逆に太ることもあるという。
杉村(仮名)「うちは部屋が散らかっているのもあって,暖房を使うとしたらエアコンなんですが,エアコンを使うとどうも体調がおかしくなるので,夏も冬も結局エアコンをつけずにやり過ごしてしまいます。」
N:部屋の温度が10℃を下回っても,厚着をしてひざ掛け毛布等でやり過ごすという杉村(仮名)さん。外に出かけるときと同じ格好を室内でしているわけだけれども,外と違って家の中では冷たい風が吹かないから体感温度は全然違うのだとか。
「といいますと,社会全体が節電ムードになるずっと前から,常に節電を実行していたというわけですね。」
杉村(仮名)「節電っていったって,エアコンをつけてないってだけの話なので,照明とか,他の部分でこれといって気をつけているわけではありませんから,そんな大層なことではありませんよ。」
N:もったいぶらないで,さっさとオチに向けて話を進めろとのディレクターからの指示です。
「わかりました。もう答えは99%わかりきっていることですが,せっかくですから,杉村さん(仮名)ご自身の口から結末を語っていただきましょう。」
杉村(仮名)「え,あのー,すみません,なんの話でしたっけ・・・?」
「ええっ,忘れちゃったんですか?ご自分の話なのに,ありえなくないですか?ほら,えーっと,あれですよ,アレ。えっと,なんだっけ?うちのスポンサーがどーたらこーたらって。」
N:セット2人前が千円で安いと思ったっていう話だったじゃん。
「ああ,そうだったそうだった。けど,2人で分けるなら一人当たり500円で,そこそこお得なんだろうけど,一人で食べるんだったら,千円って別にそんなに安くないじゃん。って,あ!しまった,言っちゃった。てへぺろ」
N:その「てへぺろ」ってヤツ,最近ネットで知った言葉だろ。
「バレちゃった?てへぺろ」
杉村(仮名)「あのー,俺,帰っていいっスか?なんかすっかりグダグダだし,もうつきあってられないんで。」
「そうね。じゃあ,まとめよろしく。」
N:要するに,杉村(亀井)さんは,つい目がくらんで,一人分にしては割高の千円を払って,しかも二人前を一人で平らげるという,経済面,健康面の両方でどうかと思う行為に走ってしまったというわけだ。(別に,ヒトとして終わっているというほどのことではないと思うが,多くの人に「あちゃー」とか,「やっちまったなぁ!」と呆れられたり,ドン引きされてしまうような,トホホな行為であることは間違いない。)
クーポンの持つおトク感という魔力。そこへ,「週末限定クーポン」という名の「期間限定」の強迫観念が拍車をかけ,そういうのに弱い杉村(亀井)さんはまんまとつけこまれたという話である。
杉村(亀井)「いやー,しかもドリンクは両方ともノーマルの○カ・○ーラにしちゃったんだよねー。」
「そこはせめて○健○茶にでもしろよ。まったく。そりゃ太るに決まっとるがな。救いようがないな,こりゃ。」
杉村(仮名)「てへぺろ。」
はぁ~。明朝の体重測定が身が重いよ。じゃなくて,気が重いよ。
すりガラスの向こうに,やや小太りな男性の影が映る。
「杉村開さん(仮名),ようこそいらっしゃいました。」
杉村(仮名)「どうも,はじめまして。」
※ プライバシー保護のため,音声は変えてあります。
「それで,今日はどういった内容をお話いただけるのでしょうか?」
杉村(仮名)「それがですねぇー,ワタクシ,これだけはやっちゃあヒトとしておしまいだろということをやってしまいまして。」
物々しいナレーション(以後,N):
杉村(仮名)さんは,軽い気持ちで大手ハンバーガーチェーン店のケータイ会員に登録したという。
「差し支えなければ,もう少し具体的にお店の特徴をお教えいただけないでしょうか・・・?」
杉村(仮名)「あのー,赤地にでっかく黄色い M の文字がトレードマークの・・・。」
「あ,そ,それ以上はもう何もいわないで下さい。っていうか,小技利かせてリアルな記号を書かないで下さい。よくわかりましたから。(っていうか,その企業,この番組のスポンサーなんだけど・・・。そっか,番組で取り上げるってことは,一種の宣伝みたいなもんだから,問題ないどころか,むしろプラスに評価してもらえるかも。)」
N:ケータイ会員になると,週に一回ほど,お得なクーポンの情報がメールで送られるという。
杉村(仮名)「最近来たクーポンで,結構お買い得だな,と思えるものがあったんですよね。」
N:それが杉村(仮名)さんを困った事態に陥らせる巧みな甘い(うまい?)罠だったという。
杉村(仮名)「セール中で,ただでさえ普段に比べて安くなっているセットメニューがあったんですけど,それを二つ頼むと,ぽっきり千円で,ばらばらに頼むより80円も安くなるっていうクーポンが目に入ったんです。」
「あー,もう大体話の結末は予想がつきましたよ。テレビの前の視聴者の皆さんも,お分かりですよね?」
N:杉村(亀井)さんは,7月に入ってから食事の量を減らし,10月末には5キロもの減量に成功したという。ところが,11月のたった一ヵ月で,3キロもリバウンドしてしまったらしい。
「あ,ダメダメ!本当の苗字がモロバレしてますってば。」
杉村(仮名)「秋から冬にかけては,寒さに備えて皮下脂肪が増えるからちょっと太るのは仕方がないのかと思っていましたが,むしろ寒いので体温を維持するためにエネルギーを消費するからやせる,という説を最近ネットで見かけまして。」
N:ネットで読んだ専門家の言葉によると,冬はやせる傾向にあるはずだが,暖房を使いすぎると体のバランス調節機能がおかしくなり,逆に太ることもあるという。
杉村(仮名)「うちは部屋が散らかっているのもあって,暖房を使うとしたらエアコンなんですが,エアコンを使うとどうも体調がおかしくなるので,夏も冬も結局エアコンをつけずにやり過ごしてしまいます。」
N:部屋の温度が10℃を下回っても,厚着をしてひざ掛け毛布等でやり過ごすという杉村(仮名)さん。外に出かけるときと同じ格好を室内でしているわけだけれども,外と違って家の中では冷たい風が吹かないから体感温度は全然違うのだとか。
「といいますと,社会全体が節電ムードになるずっと前から,常に節電を実行していたというわけですね。」
杉村(仮名)「節電っていったって,エアコンをつけてないってだけの話なので,照明とか,他の部分でこれといって気をつけているわけではありませんから,そんな大層なことではありませんよ。」
N:もったいぶらないで,さっさとオチに向けて話を進めろとのディレクターからの指示です。
「わかりました。もう答えは99%わかりきっていることですが,せっかくですから,杉村さん(仮名)ご自身の口から結末を語っていただきましょう。」
杉村(仮名)「え,あのー,すみません,なんの話でしたっけ・・・?」
「ええっ,忘れちゃったんですか?ご自分の話なのに,ありえなくないですか?ほら,えーっと,あれですよ,アレ。えっと,なんだっけ?うちのスポンサーがどーたらこーたらって。」
N:セット2人前が千円で安いと思ったっていう話だったじゃん。
「ああ,そうだったそうだった。けど,2人で分けるなら一人当たり500円で,そこそこお得なんだろうけど,一人で食べるんだったら,千円って別にそんなに安くないじゃん。って,あ!しまった,言っちゃった。てへぺろ」
N:その「てへぺろ」ってヤツ,最近ネットで知った言葉だろ。
「バレちゃった?てへぺろ」
杉村(仮名)「あのー,俺,帰っていいっスか?なんかすっかりグダグダだし,もうつきあってられないんで。」
「そうね。じゃあ,まとめよろしく。」
N:要するに,杉村(亀井)さんは,つい目がくらんで,一人分にしては割高の千円を払って,しかも二人前を一人で平らげるという,経済面,健康面の両方でどうかと思う行為に走ってしまったというわけだ。(別に,ヒトとして終わっているというほどのことではないと思うが,多くの人に「あちゃー」とか,「やっちまったなぁ!」と呆れられたり,ドン引きされてしまうような,トホホな行為であることは間違いない。)
クーポンの持つおトク感という魔力。そこへ,「週末限定クーポン」という名の「期間限定」の強迫観念が拍車をかけ,そういうのに弱い杉村(亀井)さんはまんまとつけこまれたという話である。
杉村(亀井)「いやー,しかもドリンクは両方ともノーマルの○カ・○ーラにしちゃったんだよねー。」
「そこはせめて○健○茶にでもしろよ。まったく。そりゃ太るに決まっとるがな。救いようがないな,こりゃ。」
杉村(仮名)「てへぺろ。」
はぁ~。明朝の体重測定が身が重いよ。じゃなくて,気が重いよ。