担当授業のこととか,なんかそういった話題。

主に自分の身の回りのことと担当講義に関する話題。時々,寒いギャグ。

気になる人々。

2011-12-11 16:53:27 | mathematics
以前も書いたような気がするので,一部,繰り返しも含まれているかもしれない。


ポアンカレ (H. Poincaré) は,三部作『科学と仮説』,『科学の方法』,『科学の価値』において科学全般(といっても,主に数学と物理学)について論じているが,例えば『科学と仮説』(1902年) は,まず数と量についての検討から始まる。

『科学と仮説』が出版された年は,まだアインシュタイン (A. Einstein) の特殊相対性理論が発表される前であった。

アインシュタインの特殊・一般相対性理論が完成された後に,ワイル (H. Weyl) が『数学と自然科学の哲学』(1947年)という書物を著した。この書はポアンカレの『科学と仮説』とよく似た話題を取り扱っている。

そういうわけで,プレ相対性理論のポアンカレと,ポスト相対性理論のワイルの著作を対照して読むのは面白そうだと思っている。


ならさっさと読めばいいのだが,なかなか腰をすえて読む機会を作れないでいる。


ポアンカレの『科学と仮説』は冒頭部分や,興味のあるところをある程度読んだ記憶があるが,通読はしていない。
そんな中で,「タンヌリ (Tannery)」という人物の名が挙げられて(第二章の冒頭)おり,それまで聞いたことがなく,また,独特の響きがあるので,強く印象に残っていた。

そして最近,近代的な積分論の創始者の一人として知られるルベーグ (H. Lebesgue) の『量の測度』というきわめてマイナーな本の存在を知ったのだが,そこにもタンヌリ氏の名前が出てきた。


これはもうググるしかない。


僕の(といっても,僕一人のものではなく,世界中のたくさんの人たちの)とても優秀な助手である G○○le さんにお願いして,Tannery について調べてもらった。
一瞬で返ってきた調査報告の中に,期待通りの答えがあった。

Jules Tannery は,フランスの高等師範学校 (École Normale Supérieur) に学び,そしてそこで教鞭を取った人物とのことで,エルミートの下で学位を取得し,弟子にはアダマールがいるとのことである。
(しかし,フランスの人物なのにフランス語版のWikipediaの記事がまだないというのは面白い。)

というわけで,高等師範学校で学んだフランスの超一流の学者たちにおいては,タンヌリ氏の名を知らない者はいなかったに違いない。

タンヌリ氏の著作についても調査せねばなるまい。

なお,タンヌリ氏について解説している英語版の Wikipedia に張られている "Tannery on geometry" というサイトには,Tatjana Ehrenfest-Afanassjewa という名が出てきており,この名前はどこかで見たと思ったら,熱力学の第二法則について調べているときに見かけた名前であった。
Ehrenfest という名前で熱力学といえば,統計力学の分野で有名なエーレンフェスト夫妻が思い浮かぶが,どうやらまさにその「夫妻」の「妻」の方であるらしい。
なんというか,まあ,全く関係ないところで妙なつながりを見出したわけだが,これはまさにインターネット的なつながりに他ならない。

ちなみに,フランス人であるタンヌリ氏に関するフランス語版の Wikipedia の記事がまだないのは面白いことである。


他に最近気になる人物としては,上に述べたこととは全く関連がないが,Errett Bishop がいる。
ちょっと前に別件の調べ物をしているときに,たまたま Bishop 氏の "The crisis in contemporary mathematics"(現代数学の危機,1975年)というセンセーショナルな題名の論説が目に留まった。

それで興味を持っていたところ,これまた別件で関数解析の基礎的な文献をあさっていると,Bishop の(Phelps との共著の)論文に行き当たった。もしやと思って確かめてみると,これら2つの論文の Bishop は同一人物であった。

Bishop 氏は "constructive analysis" という,訳せば「構成的解析学」という分野について著作があるそうだが,それが大いに気になるのである。

そしてこの「構成的解析学」は,上記のワイルと密接な関連がある。

おそらく構成的解析学というのは,選択公理などの「非構成的」な論理を用いないで解析学の基礎を構築しようという試みなのだろうが,ワイルは「非構成的」な論法を非常に警戒していたとのこと(小平邦彦氏の著作でそのような話を読んだことがある)で,いわばワイルの憂慮に応えた理論であるといえる。
ワイルの「非構成的な手法」に対する見解は,おそらく『数学と自然科学の哲学』にも述べられているのではないかと期待されるのだが,それは読んでのお楽しみであろう。
というより,読むときの気をつけるべきポイント(あるいは読む動機,目的)が一つ定まったというべきだろうか。

僕は超準解析というものに対しても強い興味というか,憧れを抱いているのだが,Bishop の批判はその超準解析に向けられたものらしいので,そういう観点からも Bishop の仕事は非常に気になるところである。

いずれは,"The crisis" をちゃんと読み,"constructive analysis" とはどんなものであるかも覗いてみたいものである。
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