路隘庵日剰

中年や暮れ方近くの後方凡走

散るはずの花の冷えゆく夜の城

2013年04月14日 | Weblog


 朝晩は寒かったりする。というか目覚めると突然雪積もってたりする。驚く、ということである。


                    

                    

                     


 それにしてもハルキさんの小説どうしてそんなに売れるのだろうか。なんか日本人だったらみんな読まなきゃナリマセヌ、みたいになってきたな。自慢じゃないがワシは一冊も読んだことがない。作者そうとうに儲かるんだろうなあ、ということに専らな興味がわくばかり。

 でもってブログもめんどくさくなって来て、というより何もかもめんどくさくなってきて、イカンナア、という自覚症状あるだけいいのか。よくわからんが。
 なんか、無聊をナグサメるのに簡単なものでも読んでみるか、と定期試験直前の中学生みたいになって、本棚眺めたらテキトーなのなくて、なぜか、吉村昭『戦艦武蔵』(新潮文庫 昭和四十八年四刷)なんか出してきてしまった。
 これは簡単でも適当でもないけどね。


                     


 もう大昔に読んだものだけど、印象的な冒頭から鮮明に思い出した。
 昭和12年、九州の魚業界に異変が起こる。有明海沿岸の海苔養殖業では海中に浮遊する海苔の胞子を付着させるため浅い海に竹竿を林立させ、そこに棕櫚製の網を張るのだけれど、その棕櫚の網が全く手に入らなくなってしまったのだ。棕櫚は九州に主に自生するありふれた植物で、漁具の一部に使われるくらいでたいした用途もない。それがこの年、九州全域からいっせいに消え、さらには四国のものさえもなくなってしまった。
 さて、何ゆえであるか。
 という書き出しからグングン引き込まれ、またたくまに読み上げてしまった。
 吉村昭の史伝ものの記念すべき第一作。
 事実を細部まで掘り起こし、叙事に徹して読ませる。作者の秘めた気迫が伝わる一篇。海の城「武蔵」の破滅へ向かっての航海が胸をうつ。


 ということで、季は春。
 野に出なければナリマセヌ。
 
 「我らは黒き土に伏し まことの草の種まけり」であります。
 

花巻農学校精神歌




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