天狗舞は1990年代の地酒ブームで結構よく聞いた銘柄だ。
最近は大きなリカーショップでは簡単に見つけられるし、ここ石川県ではどのスーパーでも売っている。
改めてみると、山廃であること、そして熟成っぽいのが特徴のようだ。
味わいとしては熟成味があり、色は山吹色であるらしい。
地酒ブームの時には、吟醸香豊かなすっきり系の日本酒が人気だったと思っていたが、どうやらそのイメージしていた味わいとは異なるようだ。
さて、注ぐ。確かに山吹色だ。山吹色は、山廃だからというのが理由ではなく、無濾過であったり熟成させているところからくるように思うが、どうだろうか。
飲む。
確かに個性が強い。熟成酒の味わいだ。
甘めで濃厚で、少し酸味もある。古酒ほど熟成味はないが、冷やではつらい。
燗にしたらうまいかもしれない。
箱は「山廃仕込」
ラベルには「山卸廃止酛仕込」とフルネームとなっている。
20220624追記。
熟成味で言えば、常きげん山廃の方が強い気がする。やや刺激感が強く、辛味を感じる。アルコール度数も高く感じる。
燗にしたものと、缶つまシリーズのかき油漬けと合わせる。
口に近づいたときに、酒の熟成香が際立つ。そして飲んでしまうと、牡蠣の貝臭さが途中でより感じられる。んーまあ、トータルでは臭い印象。酒の熟成香と牡蠣の魚介臭さ。それが合わさる。腐敗して酸っぱくなったかのようなツウ好みの味わい。
燗から戻って冷やしたものを飲むと、意外とスッキリしている。冷やした方が飲みやすいのだろうか。
確かに冷やすと味覚が抑えられて、それに伴ってクセも隠れてしまう。燗にすると隠れていた味覚が沸き上がってきて、重厚になる。
これはどちらとも言いがたい。冷やに飽きたら燗にし、燗に飽きたら冷酒にするという堂々巡り。
20220625追記。
イカフライに合わせてみる。常きげん山廃純米の時と印象が違う。
酒の方が勝つのだ。イカフライの衣の音程と天狗舞の音程が近いため、相加効果で風味がより強くなってしまうのかもしれない。
日本酒は奥が深い。
20220626追記。
ブリの刺身と合わせる。予想通り、ブリの油が天狗舞の熟成味がマッチする。やや酒の方が強いので、酒を飲んだ後にブリを合わせるといいかもしれない。
20220701追記。
さっぱり系のフルーティーな他の酒を飲んでいて、つまみはせんじ肉。そしてその直後にこの天狗舞を飲んだら、まさにカラメルの味だった。菊姫のホームページには酒の味覚としてカラメル風というのが出てくる。まさにそう感じた。カラメル、プリンの上にかかっているカラメルだ。そしてともすればプリン本体の黄味の風味さえ感じる。こうなってくると日本酒というより、食べ物に近いものとなる。そういった意味でせんじ肉との組み合わせは面白い。ああ、ダメだ。プリンを飲んでいると錯覚し出した。
20220703追記。
蛍烏賊魚醤干しと合わせる。すると、これも合う。イカの干したものの風味、特に半生のワタの風味が、酒の熟成香が打ち消す。そうすると天狗舞の苦味が際立つ。辛口の苦味ではなく、ウェッティーで濃い目の苦味だ。熟成香が消えるだけで、飲みやすくなる。ウィスキーを飲むような、紹興酒に近いか。大阪の雅一のようでもある。それよりは濃醇ではあるが。
20220708追記。
あん肝の水煮と合わせる。食べた直後に飲むと天狗舞の個性が緩和され飲みやすいという印象。
ボディーが感じられなくなり、その周辺の 風味、グッと来る強いパンチ力を感じる。