医療裁判傍聴記

傍聴した観想など

医療事故で脳神経外科医2人を書類送検 赤穂市民病院、業過致傷疑い

2024-07-23 20:15:09 | 医療界

赤穂市民病院(兵庫県赤穂市)脳神経外科に在籍していた40代男性医師=大阪府=が関わった手術で、令和元年9月ごろから8件の医療事故が相次いだ問題があり、兵庫県警捜査1課などは22日、業務上過失致傷の疑いでこの男性医師を書類送検した。捜査関係者への取材で分かった。 

書類送検容疑は2年1月、腰痛を訴えていた同県内の70代女性患者に対し、腰椎(ようつい)の神経圧迫をなくすため、ドリルで腰椎の一部を切除する手術を実施。その際に適切に止血を行わなかったなどの過失により、脊髄(せきずい)神経を覆っている硬膜を損傷させ、露出した神経を損傷、切断したとしている。女性は、両足のまひや排泄(はいせつ)障害など重度の後遺障害があるという。男性医師は3年8月、病院を依願退職した。

同課は同日、注意義務を怠ったとして、当時この男性医師の上司だった50代の上級医についても同容疑で書類送検した。

また、同課などは5月9日にも、靱帯(じんたい)が骨化する難病「後縦(こうじゅう)靱帯骨化症」を患う別の70代女性患者に対し、頸椎(けいつい)手術の際に過失により頸髄(けいずい)を損傷させたとして同容疑で2人を書類送検している。

■医療事故、半年で8件 病院対応遅れで調査開始に2年

赤穂市民病院では、わずか半年の間に、書類送検された男性医師が執刀した手術で8件の医療事故が相次いだ。男性医師は6件目の事故を起こした後にようやく病院に報告。病院側も事態を把握して以降、外部機関との情報共有が遅れ、事故調査委員会の検証が始まるまでに約2年を要した。専門家は、重大な医療事故が短期間に複数件起きたのを病院が把握した時点で「直ちに厳重な監視下に置き、被害の拡大を食い止めなくてはならない」と対応の不備を指摘する。

男性医師は令和元年7月に着任。同年9月~2年2月に少なくとも8件の手術を担当、手術後に2人が死亡し6人に障害が残った。病院は外部有識者の検証を受けて、8件の手術を医療事故とし、このうち、今回の容疑となった70代の女性に対する腰椎手術を医療過誤と認定した。

同病院が医療事故発生時の対応を定めた内規「医療安全対策実施要項」では、重篤な医療事故が起きた場合、担当者は過失の有無を問わず院長、医療安全推進室に連絡した上で、24時間以内に報告書を提出するよう規定。患者の死亡や後遺症を伴う医療事故であれば、院長の指示で事故調査委員会を設置し、原因究明と再発防止策を検討するよう定めている。


MUFG、社長ら20人超を処分 企業の非公開情報を無断共有

2024-07-23 20:12:28 | その他

 傘下の銀行と証券会社が取引先企業の非公開情報を無断で共有していた問題などを巡り、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は19日、経営責任を明確化するための社内処分を発表した。亀沢宏規社長ら経営陣の報酬を減額するほか、退職した役員にも自主返納を求めた。処分された役員は計20人超。  

 三菱UFJ銀行と系列の三菱UFJモルガン・スタンレー証券、モルガン・スタンレーMUFG証券は2021~23年、企業の非公開情報を無断で共有し、証券2社は情報を利用して営業活動を行った。同じグループの銀行と証券は、顧客を保護する「ファイアウオール規制」で情報共有が制限されている。銀行には認められていない有価証券の勧誘行為も複数見つかり、金融庁は6月、3社に金融商品取引法に基づく業務改善命令を出した。

 改善命令を受け、MUFGなどは19日、社内処分や再発防止策を盛り込んだ業務改善計画書を金融庁に提出した。不正があった当時、銀行頭取を務めていたMUFGの三毛兼承会長は、不正を認識していたのに適切に対応しなかったとして5カ月間、月額報酬30%の減額処分とした。MUFGの亀沢社長と三菱UFJ銀の半沢淳一頭取、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の小林真社長の3人は3カ月間、月額報酬30%の減額とした。

 MUFGなどは19日、東京都内で記者会見を開き、亀沢社長は「関係者の皆様に心よりおわび申し上げる。実効性のある再発防止策とお客さま本位の営業活動を実践し、信頼回復に努める」と陳謝した。  

 問題が起きた背景については、グループを挙げて銀行と証券の連携を推進する一方、「法令順守の意識が十分浸透していなかった」と説明。再発防止策として、AI(人工知能)を活用した不正の監視強化や、顧客情報の共有に関する社員向け相談窓口の設置を挙げた。

 不正発覚後、企業や自治体が三菱UFJモルガン・スタンレー証券を債券発行の主幹事から外す動きが相次ぐなど、業績への影響も懸念される。亀沢社長は「(少なくとも)数十億円程度の影響はありそうだ」と述べた。【成澤隼人】

2024年7月19日 毎日新聞


「ガキだよね」「お子ちゃま発想」検事の発言は違法 取り調べ中の黙秘権を侵害、国に賠償命じる 東京地裁

2024-07-23 20:05:12 | 法曹界

 横浜地検に犯人隠避教唆容疑で逮捕、起訴され有罪が確定した元弁護士の江口大和(やまと)氏(38)が、取り調べで黙秘権を侵害され、検事から「ガキだよね」などと侮辱されたとして国に1100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は18日、国に110万円の賠償を命じた。検事の発言は「黙秘権保障の趣旨に反し、人格権を侵害し違法」と判断した。(中山岳) 

♦「あなたの言っている黙秘権っ何ですかか」

 訴訟では、取り調べの録音録画データを弁護側が証拠請求し、地裁の勧告を受けて国側が提出した。逮捕翌日に否認から黙秘に転じた江口氏に川村政史検事が「あなたの言ってる黙秘権って何なんですか、全然理解できない」「お子ちゃま発想」などと話す取り調べ映像の一部が、13分間にわたり法廷で再生された。弁護側は映像を動画サイトで公開し、話題となった。
 
 貝阿彌(かいあみ)亮裁判長は判決理由で、検事の発言は「ことさらに侮辱的、揶揄(やゆ)する表現を使い、弁護士能力や一般的な資質に問題があると繰り返し指摘し、人格を不当に非難」したと認定。「非難を繰り返して供述させようとしたと評価せざるを得ず、黙秘権保障の趣旨に反する」と結論付けた。
 
 訴訟で国側は「反省を促し、真実を供述するよう説得する目的だった」と主張したが、貝阿彌裁判長は「発言の内容からそう読み取るのは困難。仮にそうでも、人格を不当に非難することを正当化する理由にならない」と退けた。江口氏が黙秘の意思を伝えた後も取り調べを続けたことには、違法性はないとした。
 
♦黙秘から56時間続いた取り調べ、違法性否定に「納得できない」
 
 判決後の記者会見で江口氏は「黙秘権行使をばかにし、供述を得ようとする発言は許されないと判断されたことは良かった」とする一方、黙秘の意思を伝えてから56時間続いた取り調べの違法性が否定され「納得していない」と述べ、控訴する意向を示した。
 
 法務省は「判決内容を検討し適切に対処する」とコメントした。
 
 江口氏は2016年の横浜市内での死亡事故を巡り、車の所有者の刑事責任を避けるため、運転の男にうその供述を依頼したとして18年に逮捕、起訴された。昨年9月に執行猶予付き有罪判決が確定し、弁護士資格を失った。
 
2024年7月18日 東京新聞

千葉県立病院、アクシデントで10人死亡 23年度、インシデントは過去最多

2024-07-23 19:54:04 | 医療界

 千葉県病院局は16日、県立5病院で2023年度、医療に起因して患者に大きな影響が出た「アクシデント」事案が前年度比11件増の94件発生し、うち患者が死亡したのは3病院の計10件、10人(前年度比1件増)だったと発表した。影響が小さかった「インシデント」事案は過去最多の1万1821件(同915件増)だった。

 同局によると、患者が死亡したのは、がんセンター5件、佐原病院4件、循環器病センター1件。医療に起因することが疑われる予期せぬ死亡など、医療法における「医療事故」に該当する事案はなかった。

 同局はアクシデントを3段階で分類。死亡は「レベル5」で10件、永続的な障害や後遺症は「レベル4」で12件、人工呼吸器の装着や手術、入院を必要とする処置や治療などは「レベル3b」で72件だった。

 アクシデントの原因は、手術後の合併症などの「治療・処置」が最多の60件だった。続いて、転倒や禁食指示忘れといった「療養上の世話」が13件。

 インシデントでは「療養上の世話」が最も多い3276件、次いで内服忘れや量・日時間違いなどの「薬剤」が3045件だった。

 同局は調査委員会を設置していた21年発生の死亡事案1件、20年発生の術後脳梗塞事案1件の調査結果も公表。ともに医療過誤はなかったとした上で、主治医と家族間で口頭のみで承諾を得た患者への対応方針が病院内で情報共有されていなかった点など、それぞれ改善の余地があるとした。

 同局は16年以降、医療の透明性確保などを目的に、各病院からの報告状況を年1回公表している。担当者は「人が行う以上、ミスはゼロにできない。再発防止や重大なアクシデントを減らすことを目的に、事案が発生した場合は報告するよう求めている」と話した。

2024年7月17日 千葉日報


元検事正起訴の検察、初めて事件概要を公表 対応一転に評価分かれる

2024-07-13 20:02:04 | 法曹界

元大阪地検検事正の弁護士、北川健太郎被告(64)が12日に準強制性交罪で起訴された事件。捜査の主体となった大阪高検は、被害者のプライバシー保護を理由に事件の概要をこれまで一切説明してこなかったが、起訴にあたって対応を一転。発生日や場所などの詳細を初めて公表した。専門家からは一連の対応に理解を示す見解がある一方で、「後手」との批判もあがった。

「元大阪地方検察庁検事正に係る刑事事件の処理について(公表)」。12日午後3時過ぎ、大阪高検はこう題した文書を報道各社に配布した。文書には被告の起訴に加え、事件発生日や場所といった起訴内容の概要が記載されていた。

大阪高検が北川被告を逮捕した6月25日に配布した文書には、名前や職業などの記載があるのみで、通常設けられる報道各社を集めての説明の場もなかった。こうした対応に検察内部からも「身内に甘いと言われても仕方ない」と疑問視する声が出ていた。

一方、この日は、逮捕時になかった説明会を実施。約20分にわたって高検の小橋常和次席検事が報道陣の質問に答え、被害者が当時の部下であることや、事前に複数人で飲食店で酒を飲んでいたといった経緯を明かした。

逮捕時と対応が異なる理由を問われると、小橋次席は「今後の公判で一定の事実が明らかになるため」と説明。これまでの対応に批判的な意見や報道が多くあったことを踏まえてか「可及的速やかに捜査しており、いわゆる隠蔽と言われることは一切なかった」と語気を強める場面もあった。

高検の一連の対応について、事件捜査に詳しい近畿大の辻本典央教授(刑事訴訟法)は「逮捕段階で被害者保護を優先したのはやむを得ない」と理解を示す。逮捕の時点では不起訴になる可能性が残っており、公の法廷で審理されるかどうかが分からないからだ。

「公の場で被告の罪を追及すると決めた以上、被害者保護に配慮しながらも説明責任を果たすべき段階。逮捕時と状況が異なり、妥当な判断だ」と評価する。

一方、東京地検特捜部の副部長などを歴任した検察OBの若狭勝弁護士は「元検事正を逮捕する以上、相当な証拠がなければできない。ましてや約6年前の事件。起訴する可能性は極めて高かったはずで『起訴したから説明する』というのは詭弁(きべん)だ」と批判する。「説明を避けることでさまざまな憶測を呼び、痛くもない腹を探られることもある」として、組織の危機管理に疑問を呈した。

2024年7月12日 産経新聞