国立研究開発法人「国立がん研究センター東病院」(千葉県)で特定のメーカーの医療機器を使う見返りに賄賂を受け取ったなどとして、警視庁捜査2課は21日、収賄の疑いで、東病院の元肝胆膵内科医長、橋本裕輔容疑者(47)=米在住=を、贈賄容疑で医療機器メーカー「ゼオンメディカル」(東京都千代田区)の前社長、柳田昇容疑者(67)=川崎市中原区=を逮捕した。警視庁は認否を明らかにしていない。
逮捕容疑は、令和3年5月ごろ、ゼオン社が販売する医療機器「ステント」を東病院で優先的に使用してもらうなどの便宜を受けた見返りに、約170万円を受け取ったとしている。
ステントは血管などを内側から広げるために挿入する機器で心疾患などの治療に用いられる。捜査2課によると、橋本容疑者は平成31年4月に医長に就任。手術で使う医療機器の選定権限などを持っており、就任後、ゼオン社のステント使用数が急増していたという。
橋本容疑者とゼオン社の間では、ステント利用に関する契約書が締結されていた。有効性などを業者にフィードバックする「市販後調査」に関するもので、1つの利用で橋本容疑者が1万円を受け取る内容になっていたという。捜査2課は、市販後調査の実態はなく、ゼオン社がほかの病院に同様の営業攻勢を掛けていたとみている。
がん研究センターの職員は「みなし公務員」で収賄罪の対象となる。橋本容疑者は退職後、米国の大学病院に勤務していた。センターは「元職員が逮捕されたことは誠に遺憾で、深くおわび申し上げる。捜査に全面的に協力し、再発防止に努める」とコメントした。
2023年9月21日 産経新聞