たまごのなかみ

千葉県北西部在住。映画・観劇、近隣のこと。毎日 元気に機嫌良く♪

月も朧に白魚の...

2007年06月23日 00時52分15秒 | 観る

勘三郎が二十歳の時(当時 勘九郎)、唐十郎のテント芝居を見て「これが江戸歌舞伎だ」と興奮。先代の勘三郎に「こういう芝居をやりたい」と話したところ、「100年早い」「それより『連獅子』を100回 稽古しろ」と 叱られる...。叱り方が 気が利いているじゃありませんか。テント芝居を否定するのではなく、そういう芝居がやりたくば まだまだ精進が足りぬ...と言うのだから、器が大きいというか やはり新しいものを取り込むことに貪欲だった17代目らしい叱り方だなぁ...と思うわけです。そして、18代目が振り返って言うことには、「確かに、あの時やったら失敗していた。おかげで『鏡獅子』も『道成寺』も誰にも負けないつもりで、稽古をした」。


13年目8回を数えるコクーン歌舞伎も 1994年当時は、斬新な演出に賛否両論で、観客に熱烈な支持を受けつつも 専門家には酷評だったとか...。専門家って何...?誰...? だって、元来 歌舞伎というものは、人気の作家が 大衆の好むものを書き 斬新な演出で 面白おかしく見せたものだったりするだけで、崇高で高尚で... 一部の知識人にしか理解出来ないなんてんじゃぁ つまんないじゃん。

そんな生い立ちのコクーン歌舞伎も、昨年の「東海道四谷怪談 北番」では、読売演劇大賞の最優秀演出家賞を受賞したわけだけど、この『北番』ってのがまた 斬新な演出故か、派手さのある『南番』と比べて 反応にはムラを感じたわけですが、どうやら『北番』に関しては 専門家(?)にウケが良かったみたい。...&‘歌舞伎って初めて族’にも 評判が良かったみたいです。専門家でもなく 歌舞伎も幾らかは観ている私としても、「すっげー オモロかったぜ 北番☆」でした。にしても、大量の水を使ったり 大量の雪を降らせたり、雪がどっちゃり在るのに盆を回してくれちゃったりするシアターコクーンって 太っ腹。劇場と串田との長いお付き合いと信頼関係故かしら。そんなこんなで、歌舞伎座や国立劇場を飛び出し すっかり世間に受け入れられたコクーン歌舞伎なのでございます。

で、今年...
二○○七 渋谷・コクーン歌舞伎 河竹黙阿弥・作『三人吉三』(6/20)
再演ということもあり、演目自体の前評判が高いせいもあるのでしょうが、「楽しみたい!」「面白がりたい!」「もっとやって!」的な空気が充満していて、客席の反応の良いこと この上ない。ウケるウケるウケまくる。初演時にはなかった いきなりの‘なま犬’の登場には 笑った笑った☆ 上手から下手へと単独横断しながら チラッと客席を見る余裕(?)に、相当な大物犬と見た。訓練されていながらも野良犬に見えることが条件だったというこのワンちゃん。初日の十日前には まだ探している状態だったのだとか。演出 串田和美(かずよし)が拘りに拘ったワンちゃんだけあって 幕開きから会場は拍手喝采でした。そんな良いムードの中、亀蔵と金貸しに扮した勘三郎とのとぼけたやり取り(含む:お金を貰ったら申告しなくちゃね)にまたまた大爆笑。6年前には まだまだ線の細さを感じた七之助も すっかりいい役者に育ち、勘太郎・七之助の‘実は双子!カップル’のバランス(役は 初演と逆)も ぐっとよくなっていました。観客を味方に付けた会場は、沸きに沸いて 怒濤の総スタンディングオベーションへと傾れ込むのでありました。

野田秀樹演出『研辰の討たれ』での、歌舞伎座異例のカーテンコール & スタンディングオベーションも話題になりましたが、今回は その比ではありません。それを遙かに上回る一体感でした。これまで8回のコクーン歌舞伎の中でも 別格だったのではないでしょうか。アンコールの拍手も 椎名林檎の曲(これ、今回の目玉です)にノリながら いつしか手拍子へと替わり、勘三郎に抱きかかえられワンちゃんもカーテンコールに登場☆ 来月は、また別の演目(『法界坊』演出 串田和美)でニューヨーク公演だというのだから、凄いバイタリティです。ニューヨーク公演では 法界坊の独白を 英語でやるんですって! んで、帰ってきたら 納涼歌舞伎! やるな...勘三郎...。



お気に入りの場は 数々あるのですが...、
勿論、百人中百人が 土肝を抜く大詰めも 外せませんし(初演で知っているだけに もうワクワク♪)...、それでもやっぱり好きなのは【大川端 庚申塚の場】お嬢吉三の ──月も朧に白魚の....こいつァ春から、縁起がいいわへ── ですね。通常の歌舞伎の舞台は 装置も照明もベタですから、背景の描かれた書き割りが舞台奥にあり 大川も上下(かみしも)に流れていて、お嬢吉三は 当然ながら正面を向いて この名台詞をいうことになります。一方 串田版はと言うと、こりゃもうルール無用ですから 照かりも現代演劇調なら 装置もやりたい放題。家に上がるのだって 段差無しのバリアフリー(?)だったりするわけです。で、大川も 丸い。回り舞台の上に 本水を配した大川端、杭に足を掛け 客に背を向けたまま「月も朧に...」と始めるお嬢吉三。台詞と共に盆が廻り、やがてお嬢が正面を向くという寸法。待ってました! 成駒屋!! 画期的でしょ? 場としては、有名すぎるほど有名、スタンダード中のスタンダード ではありますが、やっぱりここがね 大好きなんですョ。【巣鴨吉祥院の場】で、欄間から顔を出すお嬢吉三の「俺だよぉ~」も好きなんですが、...スミマセン、福助ばかりで...。なにしろ大好きな演目なものでですから ハイ。見所満載の『三人吉三』でした。いやぁ~ いいね、串田は。

筋書きなどは、こちらで どうぞ。

そしてこちら、コクーン歌舞伎『三人吉三』初演の翌年 インタビューに答える福助。
興味深い あんな話や こんな話。



蜷川より断然串田派の私ですが、来月の歌舞伎座は おととしの再演『NINAGAWA十二夜』なわけで、こりゃやっぱり観ておくべきかな...と思案しているところです。と言っても、チケット取りには 参戦していないので、早めに行って幕見かな...。WARNING! 因みに、上演形態が 普段の歌舞伎座とは全く違うので ご注意です。夜 行ったら休演だった(;_;) なんて事もありますョ。
コメント (16)
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