四国遍路の旅記録(平成17年)第2回 その2

9月22日     横浪の民宿で・・


天候:晴れ
6:50 宿にリュックを置かせてもらい、おかみからもらった手書きの地図を頼りに、35番を目指す。Tさんと同行。
途中、若い女性の遍路さんと言葉をかけて行き違う。この人とは後日、顔を合わせることになる。
35番に上る坂道が始まるところ、「平城天皇第三皇子真如法親王御遺蹟地」の石柱がある。平城天皇の皇子であった親王は、空海に弟子入りし、入唐しさらに天竺に行く途上客死したという。古の壮大な宗教的情熱に思いを派す地でもある。

 
清滝寺より土佐の街を望む

 清滝寺

7:50 35番清滝寺着。
清滝寺は150mほどの高地にあり、ここから土佐の街を一望することができる。
宿に戻り、リュックを背負って、9:40 36番目指して出発する。

塚地峠のへんろ道


塚地峠より

県道39号を進むと、塚地峠の遍路道の分岐点に来る。私は峠道を行く。Tさんは県道を進みトンネルを通るという。
峠まで1k、下り2kの道である。それほど厳しい道ではないが、蜘蛛の巣だらけ。ちょっと気が咎めるが杖ではらいながら進むしかない。 

青龍寺参道の地蔵

今日も暑い。30度を超えている。白衣からズボンまで汗でびっしょりになりながら、下ったところで氷の旗を見付け飛び込む。赤いシロップのかかったいちご氷、何年ぶりだろう。
人心地ついて店を出ようとすると、スポーツドリンクのご接待。「うちのばあさんがへんろさんには親切にせいといつもいっとりましたから」。感謝、合掌。

宇佐大橋を渡って、36番参道に着く。参道にはミニ88ヶ所の石仏が点々とある。これは36番を越えて奥の院の方まで続いているようだ。

 青龍寺山門の遍路さん

 青龍寺本堂、大師堂

13:40 36番青龍寺着。
ここは長い石段のある大きなお寺である。バスの団体遍路さんでいっぱい。石段前の納経所で先に納経し、登った本堂、大師堂でお参り。(実はルール違反)Tさんと待ち合わせる。

今日の宿は、横浪スカイラインの途中にある民宿。スカイラインへは、この本堂の横から山道を越えて行くのだ。
奥の院の標識を頼りに進み、途中、右へ分岐。道が崩れて小さな谷を渡るところ2箇所、ちょっと心配になるが1kでスカイラインに出られる。
ここからは、上がったり下がったりの舗装道を6kほど歩くことになる。歩く人はいない。時々車がすごいスピードで通り過ぎる。店はおろか自販機もない。
しかし、遥か下に見る外海のさま、内海(浦ノ内湾)のさま、これは素晴らしい。退屈な歩きを慰めて余りある。


 横浪スカイラインより外海の眺め

 浦ノ内湾の眺め

途中「右、明徳義塾」の看板。あの有名な学校、こんな人里離れた場所にあるのだ。出身の横綱朝青龍、青龍寺の名前をいただいたことにも納得。
宿まであと2kとおぼしきところ、アイスクリンの旗を発見。地獄に仏である。
おばあさんが一人、野良猫数匹。アイスクリンを貪り、ジュースをガブ飲み。おばあさんは、今夜、泊まる民宿のある漁港から車で送ってもらい、ここに店を開いているという。
1日何人の客があるのだろう。

17:40 みっちゃん民宿着。漁港の小さな町にある。同宿Tさん。

本日の歩行:42021歩     地図上の概算距離:25k

本日お参りした札所
第三十五番 医王山   鏡池院      清瀧寺
本尊:厄除薬師如来
宗派:真言宗豊山派
開山:行基
空海が七日間の修法満願時に金剛杖で地面を突くと水が湧き出て池となった。 これが現在の寺号となったと伝える。

第三十六番 独鈷山   伊舎那院    青龍寺
本尊:浪切不動明王
宗派:真言宗豊山派
開山:空海
空海が唐から帰るときに投げた独鈷杵が落ちた場所という。 空海が在唐中、恵果に学んだ長安の青龍寺と地形が似ていたため これを寺号にしたという。

コラム「出会い」  みっちゃん民宿のおかみ

みっちゃん民宿のおかみ、奥野三津子さんについては、辰濃和男「四国遍路」(岩波新書)に詳しく紹介されている。私は、この本を読み、みっちゃんに会ってみたいという気持ちから、このやや不便な場所に宿をとろうと決めていた。
三津子さんのご主人は、三人の小さな子供を残して、漁に出たまま帰らなかった。それから民宿を始めた三津子さんの奮闘が始まった。
この辺のことを、夕食後、少し目に涙を滲ませて話された。私は辰濃さんのように人の過去を聞きとる立場にはない。でも、苦労の末に掴まれた今の安堵感のようなものに、何か清清しさを感じたものである。
辰濃さんは5年程前に、おばあちゃんと書かれている。でも愛嬌のある大きな目、まだまだ若い。私と同年配。(もっとも世間的には私もじじいの領域なのだろうけど)
辰濃さんと一緒の写真、「もってってもいいよ」と言われたが、それは遠慮。浅草から持ってきた手ぬぐいを一本差し上げて、宿の前でいやがる写真に納まってもらいお別れした。




9月23日     横浪の海の色

天候:晴れ
7:30宿を発つ。スカイラインまでは上り道で1k近くある。おかみさんの車で送っていただく。

スカイラインよりの眺め


  スカイラインよりの眺め

スカイラインから見下ろす太平洋、海岸のさまは、それはそれは見事である。立ち止まってしばし眺める。
8kほどで県道23号との合流点に来る。この道は、36番から打ち戻った遍路が必ず通る。振り返り遍路さんの姿をもとめたが、見当たらない。
道の傍らに座って休んでいると、軽の乗用車が通り過ぎて止まる。小さな女の子が急ぎ足で近ずく。手には大きな梨1個。黙って差し出す。「いただけるのー、ありがとう・・」。納札を渡し、車に向かっても頭を下げる。
Tさんはまだ来ない。今日は、中土佐町まで30k近く歩く予定。おまけに一つ峠を越える。5時までの宿到着に間に合いそうにない。ついに歩き遍路のタブー、近代兵器の活用を決意。Tさんには携帯電話で、大間の駅で待つことを連絡。
遍路姿で電車に乗っているのは、何ともバツが悪い。しかし、何とラクチンなことだろう。
須崎まで2k分の歩きを短縮、再び歩き出す。暑さの盛りだ。

 坂峠遍路道入り口

峠より安和の街を望む


焼坂遍路道に入る。この峠(標高228m)を越える道、地図ではたいしたこと無いように見えるが、登りがきつい。
体調がおかしい。須崎の駅でうっかり飲んだ牛乳が、ウンのつきだったようだ。Tさんに先行してもらう。「野のトイレ」(何というそぐわない上品な言い方!)のお世話にならざるをえない。私は、若い頃オフロードバイクで山道を走ることが多かったため、こいう作業には結構馴れている。敷地選定、穴掘り、後処理。
峠からは安和の街が望まれる。緩やかな山道を下る。

坂遍路道を下る

17:00 中土佐町の宿に着く。

宿:大谷旅館
同宿は、何と土佐市以来のYさん、HAさん、それとTさん。Yさん、HAさんは再会にびっくり。HAさんは、足を痛めここで打ち止めし帰るという。

本日の歩行:39582歩     地図上の概算距離:29k(電車区間2kを含む)

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