四国遍路の旅記録(平成17年)第2回 その1



岡山から高知に向う列車の窓から、道の傍や田圃の畦に咲く曼珠沙華の赤い色を何かに誘われるような気持ちで眺めていた。
この赤い花には、この度の遍路の間を通じてよく出会った。10月に入ってからは枯れかけた姿で。それに代わって、風に揺れるコスモスが元気だった。

私の2回目の遍路は、春に区切りを打った土佐の31番竹林寺から伊予(今治)の59番国分寺まで。
足摺岬の38番金剛福寺は、前後の札所から7、80k隔たった所にあり、多くの遍路は38番まで行った道の途中まで打ち戻り、39番に向うルートを選ぶが、私は38番からそのまま海岸の道を歩いて、月山神社を経由して39番に向うこととした。
それほどに足摺前後の空と海への期待は大きかった。
峠越えなど土の遍路道は、できるだけ漏らさず歩きたい。これも一つの期待であった。
すばらしい四国の風物に会えるだろうか。それにもまして、ときめくような人びとの心との出会いがあるだろうか。そんななかを、涙を流して歩かせていただけることができたら。

高知の駅に降り立つ。「暑い! 真夏のようだ」。一抹の不安を抱きながら、タクシーに乗り込み竹林寺に向った。    (平成17年9月20日~10月11日)


9月20日  浦戸大橋を渡る・・暑い

天候:晴れ日中の気温は32、3度に昇ったよう。真夏並み。この暑さ25日まで続く。


萩咲く門前を出て 荒れた石段を下る

10:15 竹林寺着。門前で遍路装束に着替え、お参りする。
境内は春の時よりやや落ち着いた雰囲気。あいかわらず石段が美しい。
門前には萩の花が咲き乱れていた。今回の区切り打ちの旅の門出を祝福していただいたように感じながら、32番禅師峰寺を目指して歩き始めた。
荒れた石段の参道を注意しながら下る。
学校が見えたところで早速道を間違える。遠回りして歩いていると、軽トラが止まって道筋を指示。ありがたいものだ。
雑草の茂る造成地のなか、それにしても暑い、暑い。県道247号まで遠い、遠い。
やっと、県道に入り石土トンネルを通過すると、大きな池が現れる。
もう32番は近い。とどめは、寺に登る急坂。坂の途中で気分が悪くなり、休憩。水筒の水をカブ飲み、高知駅で買ったおにぎり、半個、口に押し込むのがやっと。

禅師峰寺(石段と山門)

12:50 32番禅師峰寺着。
車で来た夫婦の遍路、長い杖を持った先達風の人、皆元気。ベンチでへたるヨレヨレ遍路の私ひとり。
毛並みの良いネコが足に擦り寄る。残りのおにぎりをやっても匂っただけでプイ。お寺の猫は贅沢ネコだ。

今日の宿を国民宿舎桂浜荘に予約。坂道に懲りて車道を下る。県道14号の海岸に近い道を歩く。
自販機を見付けるごとにジュースを飲んだ気がする。顔の汗を拭ったひょうしに眼鏡を落としたことにも気が付かない。熱中症に罹りかかったかもしれない。
私は右目の視力が弱い。眼鏡がないと殆ど見えない。これが後のトラブルの原因のひとつともなった。
宿の近くの浦戸大橋の登りは応えた。こんなに高く橋架けなくてもよいじゃないか、ぶつぶつ呟くながら休み休みノボル。(後に同宿した遍路の話では、フェリーからこの橋を見上げ、この橋を渡らなくてよかったと言い合ったそうである。コノヤロ!)

 
種崎の街とフェリー


浦戸大橋、きつい上り


初日から散々な目のヨレヨレ遍路は、やや不釣合いに立派な宿舎に到着。16:30。

宿:国民宿舎桂浜荘。遍路の泊まりは私一人の様子。

本日の歩行:24073歩 地図上の概算距離:13k

本日お参りした札所
第三十二番 八葉山   求聞持院    禅師峰寺
本尊:十一面観音菩薩
宗派:真言宗豊山派
開山:行基
弘法大師はこの寺を訪れ、求聞持法を修し、本尊を安置したと伝える。
本尊は、船霊観音と呼ばれ、船の航行の安全のご利益がある。
近くの住人からは峰寺(みねんじ)と呼ばれている。


9月21日     マンジュシャゲの花咲く道

天候:晴れ



浦戸より水道を望む。フェリーが通る。

県道14号から分かれ、浦戸湾に沿って33番雪渓寺へ向う道、昨日宿にくる時、ガッチリ閉鎖されていたのを見ている。宿のフロントに確認する。「ありゃー 車を入れないため、人は乗り越えりゃ行けます」。「あっ そ~~お」
7:15宿を発つ。
浦戸水道をフェリーが行くのを眺める。やっぱり、フェリー乗りたかったなー。
8:20 33番雪渓寺着。
山門で、この夜同宿となるYさんと出会い、あいさつしてすれ違う。
33番を出て、春野町に入ると、へんろ石(道標)やお地蔵さんがたくさんある。曼珠沙華もいたるところに咲いている。

路傍の地蔵。マンジュシャゲの花

ヨレヨレ遍路の暑さボケはまだ進行している。33番と34番のお寺の写真撮ったつもりが撮れてなかった。
11:00 34番種間寺着。
門前のアイスクリン屋に飛びつく。おばちゃんが自分が腰掛けていた椅子を空けて勧める。まるで遍路アイスクリン屋のような格好でゆっくりいただく。「うまいなー」。(アイスクリンはよく食った。アイスクリームとシャーベットの中間みたい。四国独特の呼び方か。)
種間寺先の道で大きな体の遍路さんが休憩している。「休んでいきませんかー」と声がかかる。これがTさん(40前後とお見受け)との出会い。体が大きいうえ旭川から来ている。暑さが応えるであろう。苦しそう。ちょっと事情があって納経せずにまわっている。模範的遍路からは異端にあるタイプ。
この人とは、私が少し先行し待つ、というスタイルで37番岩本寺まで同行。少しの区間ではあるが、交通機関を利用するという、歩き遍路のタブーを犯すことになったのはこの同行の所為も多少あったかも。なーんちゃって

種間寺先の道

仁淀川を渡る


大きな仁淀川を渡り、土佐市の市街に入る。
地図にはない新しい道が出来ていて迷いに迷う。何人かの人に道を聞きやっと14:30 宿に到着。
おかみ「これから35番、十分行けるよー」。ヨレヨレ遍路2人「あしたにするーー」。

宿:喜久屋旅館。
遍路4人と同宿、相模原のYさん、徳島のHAさん、北九州のHOさん、旭川のTさん。Tさん以外は全員60代で、夕食はわいわいガヤガヤ盛り上がる。ただし35番を打ち終えてないのはTさんと私の二人だけ。

本日の歩行:29480歩  地図上の概算距離:18k

本日お参りした札所
第三十三番 高福山   雪蹊寺
本尊:薬師如来
宗派:臨済宗妙心寺派
開山:空海
以前は保寿山高福寺と号したが、近世、長曽我部元親が菩提所としたため、禅宗になり、雪渓寺と改めた。

第三十四番 本尾山   朱雀院      種間寺
本尊:薬師如来
宗派:真言宗豊山派
開山:空海
空海が唐から持ち帰った五穀の種を蒔いたことから寺号となった

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