(株)カプロラクタム-blog

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かけざんの式

2011年12月26日 | Weblog
6×8は正解でも8×6はバッテン?あるいは算数のガラパゴス性という記事を見かけました。

「8人に6本ずつペンをあげました。ペンは何本でしょう。」という問題。6本ずつ8人分なので、式は6×8=48 答え48本が正解です。僕でも式8×6は×にしますね。答えまで×にするかどうかは別問題ですが、先生が事前にはっきりそう明言した上で×にしているのなら問題ないでしょう。

この手の内容はたまに問題になるので、検索すればもっと理路整然と追及しているサイトも存在します。しかし、肝心の根拠つまり「かけざんとは何ぞや」の理解が双方違うために、ややこしい議論になってしまうようです。
このお父さん然り、普通の大人は、a×b=b×a、つまり乗法の交換法則が成立することは自明なので、何で×なのか分からない。しかし、この法則を今後使って良いと学ぶのはこの後の3年生で習いますから、2年生のこの時期の子どもには自明でもありません。そもそも「乗法の交換法則」が自然数a,bにおいて常に成り立つことを証明できるのは、早くても数学的帰納法を習う高校生になってからです。つまり義務教育中ですら「何となくそうだから」と、だましだまし使っているに過ぎないのです。しかも、実はその証明の元になる「ペアノの公理」は高校数学まででは習わないので、これを独学しないと乗法の交換法則は自明じゃないのですよね・・・とりあえず、このお父さんがドヤ顔で交換法則を主張するなら、一度「ペアノの公理」をご存知か聞いてみたいですな(笑)
「1つ分の大きさが決まっているとき、そのいくつ分を表すのに用いられる計算」をかけざんと定義している2年生の子どもにとって、この場合は6本が「1つ分の大きさ(かけられる数)」、8人が「いくつ分(かける数)」で、式は6×8となり、逆に書いてしまう子はまだ乗法の式の意味を理解していないととるのが教師の立場です。3年生で習うわりざんにも、「1つ分の数」を求める等分除、「いくつ分」を求める包含除の2種類が存在しますけど、もし2年生の時のかけざんが上記のようにごちゃごちゃに指導されていたとしたら、この2つの意味は全く理解できなくなります。だから2年生の時に、このかけざんの式の意味をしっかり押さえておく必要があるわけですね。

自分が2年生を教える時は、もっといやらしい問題を出します。「竹馬が3台あります。棒は何本でしょう。」「たこが6匹います。足は何本?」・・・やはり「1つ分の数」を見つけることがかけざんの基本ですし、こういう問題を扱うことで、日常生活でも同数あるものを乗法を用いて数えようとする子が育っていくのだと思っています。
蛇足ですが、1年生の初期においては、たしざんでさえ順序があります。「公園にこどもが3人います。あとから2人来ました。全部で何人でしょう。」これに1年生の子が2+3と答えたら変ですよね?たしざんは合併で定義し、増加を当てはめて意味を拡張するので、かけざんと違ってすぐにどちらでもよいことになりますが、この「特殊な場面で定義して、一般の場面を当てはめていく」途中の段階では、一般の場面で自明な定理が通じない瞬間がある、ということです。

この娘さん、テストでは間違えたとはいえ、習った範囲で理解したことをお父さんに非常に理路整然と伝えているようなので、むしろ褒めてあげるべきですね。5年後はもっと分かり合えない気が(笑)