カナ文字文庫(漢字廃止論)

日本文学の名作などをカナ書きに改めて掲載。

ココロ 「センセイ と イショ 4」

2015-05-06 | ナツメ ソウセキ
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 ワタクシ は カゲ へ まわって、 オクサン と オジョウサン に、 なるべく K と ハナシ を する よう に たのみました。 ワタクシ は カレ の これまで とおって きた ムゴン セイカツ が カレ に たたって いる の だろう と しんじた から です。 つかわない テツ が くさる よう に、 カレ の ココロ には サビ が でて いた と しか、 ワタクシ には おもわれなかった の です。
 オクサン は トリツキハ の ない ヒト だ と いって わらって いました。 オジョウサン は また わざわざ その レイ を あげて ワタクシ に セツメイ して きかせる の です。 ヒバチ に ヒ が ある か と たずねる と、 K は ない と こたえる そう です。 では もって きよう と いう と、 いらない と ことわる そう です。 さむく は ない か と きく と、 さむい けれども いらない ん だ と いった ぎり オウタイ を しない の だ そう です。 ワタクシ は ただ クショウ して いる わけ にも ゆきません。 キノドク だ から、 なんとか いって その バ を とりつくろって おかなければ すまなく なります。 もっとも それ は ハル の こと です から、 しいて ヒ に あたる ヒツヨウ も なかった の です が、 これ では トリツキハ が ない と いわれる の も ムリ は ない と おもいました。
 それで ワタクシ は なるべく、 ジブン が チュウシン に なって、 オンナ フタリ と K との レンラク を はかる よう に つとめました。 K と ワタクシ が はなして いる ところ へ ウチ の ヒト を よぶ とか、 または ウチ の ヒト と ワタクシ が ヒトツヘヤ に おちあった ところ へ、 K を ひっぱりだす とか、 どっち でも その バアイ に おうじた ホウホウ を とって、 カレラ を セッキン させよう と した の です。 もちろん K は それ を あまり このみません でした。 ある とき は ふいと たって ヘヤ の ソト へ でました。 また ある とき は いくら よんで も なかなか でて きません でした。 K は あんな ムダバナシ を して どこ が おもしろい と いう の です。 ワタクシ は ただ わらって いました。 しかし ココロ の ウチ では、 K が その ため に ワタクシ を ケイベツ して いる こと が よく わかりました。
 ワタクシ は ある イミ から みて じっさい カレ の ケイベツ に あたいして いた かも しれません。 カレ の メ の ツケドコロ は ワタクシ より はるか に たかい ところ に あった とも いわれる でしょう。 ワタクシ も それ を いなみ は しません。 しかし メ だけ たかくって、 ホカ が つりあわない の は テ も なく カタワ です。 ワタクシ は ナニ を おいて も、 この サイ カレ を ニンゲン-らしく する の が センイチ だ と かんがえた の です。 いくら カレ の アタマ が えらい ヒト の イメジ で うずまって いて も、 カレ ジシン が えらく なって ゆかない イジョウ は、 なんの ヤク にも たたない と いう こと を ハッケン した の です。 ワタクシ は カレ を ニンゲン-らしく する ダイイチ の シュダン と して、 まず イセイ の ソバ に カレ を すわらせる ホウホウ を こうじた の です。 そうして そこ から でる クウキ に カレ を さらした うえ、 さびつきかかった カレ の ケツエキ を あたらしく しよう と こころみた の です。
 この ココロミ は しだいに セイコウ しました。 ハジメ の うち ユウゴウ しにくい よう に みえた もの が、 だんだん ヒトツ に まとまって きだしました。 カレ は ジブン イガイ に セカイ の ある こと を すこし ずつ さとって ゆく よう でした。 カレ は ある ヒ ワタクシ に むかって、 オンナ は そう ケイベツ す べき もの で ない と いう よう な こと を いいました。 K は はじめ オンナ から も、 ワタクシ ドウヨウ の チシキ と ガクモン を ヨウキュウ して いた らしい の です。 そうして それ が みつからない と、 すぐ ケイベツ の ネン を しょうじた もの と おもわれます。 イマ まで の カレ は、 セイ に よって タチバ を かえる こと を しらず に、 おなじ シセン で スベテ の ナンニョ を イチヨウ に カンサツ して いた の です。 ワタクシ は カレ に、 もし ワレラ フタリ だけ が オトコ ドウシ で エイキュウ に ハナシ を コウカン して いる ならば、 フタリ は ただ チョクセンテキ に サキ へ のびて ゆく に すぎない だろう と いいました。 カレ は もっとも だ と こたえました。 ワタクシ は その とき オジョウサン の こと で、 たしょう ムチュウ に なって いる コロ でした から、 しぜん そんな コトバ も つかう よう に なった の でしょう。 しかし リメン の ショウソク は カレ には ヒトクチ も うちあけません でした。
 イマ まで ショモツ で ジョウヘキ を きずいて その ナカ に たてこもって いた よう な K の ココロ が、 だんだん うちとけて くる の を みて いる の は、 ワタクシ に とって ナニ より も ユカイ でした。 ワタクシ は サイショ から そうした モクテキ で コト を やりだした の です から、 ジブン の セイコウ に ともなう キエツ を かんぜず には いられなかった の です。 ワタクシ は ホンニン に いわない カワリ に、 オクサン と オジョウサン に ジブン の おもった とおり を はなしました。 フタリ も マンゾク の ヨウス でした。

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 K と ワタクシ は おなじ カ に おりながら、 センコウ の ガクモン が ちがって いました から、 しぜん でる とき や かえる とき に チソク が ありました。 ワタクシ の ほう が はやければ、 ただ カレ の クウシツ を とおりぬける だけ です が、 おそい と カンタン な アイサツ を して ジブン の ヘヤ へ はいる の を レイ に して いました。 K は イツモ の メ を ショモツ から はなして、 フスマ を あける ワタクシ を ちょっと みます。 そうして きっと イマ かえった の か と いいます。 ワタクシ は なにも こたえない で うなずく こと も あります し、 あるいは ただ 「うん」 と こたえて ゆきすぎる バアイ も ありました。
 ある ヒ ワタクシ は カンダ に ヨウ が あって、 カエリ が イツモ より ずっと おくれました。 ワタクシ は イソギアシ に モンゼン まで きて、 コウシ を がらり と あけました。 それ と ドウジ に、 ワタクシ は オジョウサン の コエ を きいた の です。 コエ は たしか に K の ヘヤ から でた と おもいました。 ゲンカン から マッスグ に ゆけば、 チャノマ、 オジョウサン の ヘヤ と フタツ つづいて いて、 それ を ヒダリ へ おれる と、 K の ヘヤ、 ワタクシ の ヘヤ、 と いう マドリ なの です から、 どこ で ダレ の コエ が した ぐらい は、 ひさしく ヤッカイ に なって いる ワタクシ には よく わかる の です。 ワタクシ は すぐ コウシ を しめました。 すると オジョウサン の コエ も すぐ やみました。 ワタクシ が クツ を ぬいで いる うち、 ――ワタクシ は その ジブン から ハイカラ で テカズ の かかる アミアゲ を はいて いた の です が、 ――ワタクシ が こごんで その クツヒモ を といて いる うち、 K の ヘヤ では ダレ の コエ も しません でした。 ワタクシ は ヘン に おもいました。 コト に よる と、 ワタクシ の カンチガイ かも しれない と かんがえた の です。 しかし ワタクシ が イツモ の とおり K の ヘヤ を ぬけよう と して、 フスマ を あける と、 そこ に フタリ は ちゃんと すわって いました。 K は レイ の とおり イマ かえった か と いいました。 オジョウサン も 「おかえり」 と すわった まま で アイサツ しました。 ワタクシ には キ の せい か その カンタン な アイサツ が すこし かたい よう に きこえました。 どこ か で シゼン を ふみはずして いる よう な チョウシ と して、 ワタクシ の コマク に ひびいた の です。 ワタクシ は オジョウサン に、 オクサン は と たずねました。 ワタクシ の シツモン には なんの イミ も ありません でした。 イエ の ウチ が ヘイジョウ より なんだか ひっそり して いた から きいて みた だけ の こと です。
 オクサン は はたして ルス でした。 ゲジョ も オクサン と イッショ に でた の でした。 だから ウチ に のこって いる の は、 K と オジョウサン だけ だった の です。 ワタクシ は ちょっと クビ を かたむけました。 イマ まで ながい アイダ セワ に なって いた けれども、 オクサン が オジョウサン と ワタクシ だけ を オキザリ に して、 ウチ を あけた ためし は まだ なかった の です から。 ワタクシ は ナニ か キュウヨウ でも できた の か と オジョウサン に ききかえしました。 オジョウサン は ただ わらって いる の です。 ワタクシ は こんな とき に わらう オンナ が きらい でした。 わかい オンナ に キョウツウ な テン だ と いえば それまで かも しれません が、 オジョウサン も くだらない こと に よく わらいたがる オンナ でした。 しかし オジョウサン は ワタクシ の カオイロ を みて、 すぐ フダン の ヒョウジョウ に かえりました。 キュウヨウ では ない が、 ちょっと ヨウ が あって でた の だ と マジメ に こたえました。 ゲシュクニン の ワタクシ には それ イジョウ といつめる ケンリ は ありません。 ワタクシ は チンモク しました。
 ワタクシ が キモノ を あらためて セキ に つく か つかない うち に、 オクサン も ゲジョ も かえって きました。 やがて バンメシ の ショクタク で ミンナ が カオ を あわせる ジコク が きました。 ゲシュク した トウザ は バンジ キャクアツカイ だった ので、 ショクジ の たび に ゲジョ が ゼン を はこんで きて くれた の です が、 それ が いつのまにか くずれて、 メシドキ には ムコウ へ よばれて ゆく シュウカン に なって いた の です。 K が あたらしく ひきうつった とき も、 ワタクシ が シュチョウ して カレ を ワタクシ と おなじ よう に とりあつかわせる こと に きめました。 そのかわり ワタクシ は うすい イタ で つくった アシ の たたみこめる きゃしゃ な ショクタク を オクサン に キフ しました。 イマ では どこ の ウチ でも つかって いる よう です が、 その コロ そんな タク の シュウイ に ならんで メシ を くう カゾク は ほとんど なかった の です。 ワタクシ は わざわざ オチャノミズ の カグヤ へ いって、 ワタクシ の クフウドオリ に それ を つくりあげさせた の です。
 ワタクシ は その タクジョウ で オクサン から その ヒ イツモ の ジコク に サカナヤ が こなかった ので、 ワタクシタチ に くわせる もの を かい に マチ へ いかなければ ならなかった の だ と いう セツメイ を きかされました。 なるほど キャク を おいて いる イジョウ、 それ も もっとも な こと だ と ワタクシ が かんがえた とき、 オジョウサン は ワタクシ の カオ を みて また わらいだしました。 しかし コンド は オクサン に しかられて すぐ やめました。

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 1 シュウカン ばかり して ワタクシ は また K と オジョウサン が イッショ に はなして いる ヘヤ を とおりぬけました。 その とき オジョウサン は ワタクシ の カオ を みる や いなや わらいだしました。 ワタクシ は すぐ ナニ が おかしい の か と きけば よかった の でしょう。 それ を つい だまって ジブン の イマ まで きて しまった の です。 だから K も イツモ の よう に、 イマ かえった か と コエ を かける こと が できなく なりました。 オジョウサン は すぐ ショウジ を あけて チャノマ へ はいった よう でした。
 ユウメシ の とき、 オジョウサン は ワタクシ を ヘン な ヒト だ と いいました。 ワタクシ は その とき も なぜ ヘン なの か きかず に しまいました。 ただ オクサン が にらめる よう な メ を オジョウサン に むける の に キ が ついた だけ でした。
 ワタクシ は ショクゴ K を サンポ に つれだしました。 フタリ は デンズウイン の ウラテ から ショクブツエン の トオリ を ぐるり と まわって また トミザカ の シタ へ でました。 サンポ と して は みじかい ほう では ありません でした が、 その アイダ に はなした こと は きわめて すくなかった の です。 セイシツ から いう と、 K は ワタクシ より も ムクチ な オトコ でした。 ワタクシ も タベン な ほう では なかった の です。 しかし ワタクシ は あるきながら、 できる だけ ハナシ を カレ に しかけて みました。 ワタクシ の モンダイ は おもに フタリ の ゲシュク して いる カゾク に ついて でした。 ワタクシ は オクサン や オジョウサン を カレ が どう みて いる か しりたかった の です。 ところが カレ は ウミ の もの とも ヤマ の もの とも ミワケ の つかない よう な ヘンジ ばかり する の です。 しかも その ヘンジ は ヨウリョウ を えない くせ に、 きわめて カンタン でした。 カレ は フタリ の オンナ に かんして より も、 センコウ の ガッカ の ほう に オオク の チュウイ を はらって いる よう に みえました。 もっとも それ は 2 ガクネン-メ の シケン が メノマエ に せまって いる コロ でした から、 フツウ の ニンゲン の タチバ から みて、 カレ の ほう が ガクセイ-らしい ガクセイ だった の でしょう。 そのうえ カレ は シュエデンボルグ が どう だ とか こう だ とか いって、 ムガク な ワタクシ を おどろかせました。
 ワレワレ が シュビ よく シケン を すましました とき、 フタリ とも もう あと 1 ネン だ と いって オクサン は よろこんで くれました。 そういう オクサン の ユイイツ の ホコリ とも みられる オジョウサン の ソツギョウ も、 まもなく くる ジュン に なって いた の です。 K は ワタクシ に むかって、 オンナ と いう もの は なんにも しらない で ガッコウ を でる の だ と いいました。 K は オジョウサン が ガクモン イガイ に ケイコ して いる ヌイハリ だの コト だの イケバナ だの を、 まるで ガンチュウ に おいて いない よう でした。 ワタクシ は カレ の ウカツ を わらって やりました。 そうして オンナ の カチ は そんな ところ に ある もの で ない と いう ムカシ の ギロン を また カレ の マエ で くりかえしました。 カレ は べつだん ハンバク も しません でした。 そのかわり なるほど と いう ヨウス も みせません でした。 ワタクシ には そこ が ユカイ でした。 カレ の ふん と いった よう な チョウシ が、 いぜん と して オンナ を ケイベツ して いる よう に みえた から です。 オンナ の ダイヒョウシャ と して ワタクシ の しって いる オジョウサン を、 モノ の カズ とも おもって いない らしかった から です。 イマ から カイコ する と、 ワタクシ の K に たいする シット は、 その とき に もう じゅうぶん きざして いた の です。
 ワタクシ は ナツヤスミ に どこ か へ ゆこう か と K に ソウダン しました。 K は ゆきたく ない よう な クチブリ を みせました。 むろん カレ は ジブン の ジユウ イシ で どこ へも ゆける カラダ では ありません が、 ワタクシ が さそい さえ すれば、 また どこ へ いって も さしつかえない カラダ だった の です。 ワタクシ は なぜ ゆきたく ない の か と カレ に たずねて みました。 カレ は リユウ も なんにも ない と いう の です。 ウチ で ショモツ を よんだ ほう が ジブン の カッテ だ と いう の です。 ワタクシ が ヒショチ へ いって すずしい ところ で ベンキョウ した ほう が、 カラダ の ため だ と シュチョウ する と、 それなら ワタクシ ヒトリ いったら よかろう と いう の です。 しかし ワタクシ は K ヒトリ を ここ に のこして ゆく キ には なれない の です。 ワタクシ は ただでさえ K と ウチ の モノ が だんだん したしく なって ゆく の を みて いる の が、 あまり いい ココロモチ では なかった の です。 ワタクシ が サイショ キボウ した とおり に なる の が、 なんで ワタクシ の ココロモチ を わるく する の か と いわれれば それまで です。 ワタクシ は バカ に ちがいない の です。 ハテシ の つかない フタリ の ギロン を みる に みかねて オクサン が ナカ へ はいりました。 フタリ は とうとう イッショ に ボウシュウ へ ゆく こと に なりました。

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 K は あまり タビ へ でない オトコ でした。 ワタクシ にも ボウシュウ は はじめて でした。 フタリ は なんにも しらない で、 フネ が いちばん サキ へ ついた ところ から ジョウリク した の です。 たしか ホタ とか いいました。 イマ では どんな に かわって いる か しりません が、 その コロ は ひどい ギョソン でした。 だいいち どこ も かしこ も なまぐさい の です。 それから ウミ へ はいる と、 ナミ に おしたおされて、 すぐ テ だの アシ だの を すりむく の です。 コブシ の よう な おおきな イシ が うちよせる ナミ に もまれて、 しじゅう ごろごろ して いる の です。
 ワタクシ は すぐ いや に なりました。 しかし K は いい とも わるい とも いいません。 すくなくとも カオツキ だけ は ヘイキ な もの でした。 そのくせ カレ は ウミ へ はいる たんび に どこ か に ケガ を しない こと は なかった の です。 ワタクシ は とうとう カレ を ときふせて、 そこ から トミウラ に ゆきました。 トミウラ から また ナコ に うつりました。 すべて この エンガン は その ジブン から おもに ガクセイ の あつまる ところ でした から、 どこ でも ワレワレ には ちょうど テゴロ の カイスイヨクジョウ だった の です。 K と ワタクシ は よく カイガン の イワ の ウエ に すわって、 とおい ウミ の イロ や、 ちかい ミズ の ソコ を ながめました。 イワ の ウエ から みおろす ミズ は、 また トクベツ に きれい な もの でした。 あかい イロ だの アイ の イロ だの、 ふつう シジョウ に のぼらない よう な イロ を した コウオ が、 すきとおる ナミ の ナカ を あちらこちら と およいで いる の が あざやか に ゆびさされました。
 ワタクシ は そこ に すわって、 よく ショモツ を ひろげました。 K は なにも せず に だまって いる ほう が おおかった の です。 ワタクシ には それ が カンガエ に ふけって いる の か、 ケシキ に みとれて いる の か、 もしくは すき な ソウゾウ を えがいて いる の か、 まったく わからなかった の です。 ワタクシ は ときどき メ を あげて、 K に ナニ を して いる の だ と ききました。 K は なにも して いない と ヒトクチ こたえる だけ でした。 ワタクシ は ジブン の ソバ に こう じっと して すわって いる モノ が、 K で なくって、 オジョウサン だったら さぞ ユカイ だろう と おもう こと が よく ありました。 それ だけ なら まだ いい の です が、 ときには K の ほう でも ワタクシ と おなじ よう な キボウ を いだいて イワ の ウエ に すわって いる の では ない かしら と こつぜん うたがいだす の です。 すると おちついて そこ に ショモツ を ひろげて いる の が キュウ に いや に なります。 ワタクシ は フイ に たちあがります。 そうして エンリョ の ない おおきな コエ を だして どなります。 まとまった シ だの ウタ だの を おもしろそう に ぎんずる よう な てぬるい こと は できない の です。 ただ ヤバンジン の ごとく に わめく の です。 ある とき ワタクシ は とつぜん カレ の エリクビ を ウシロ から ぐいと つかみました。 こうして ウミ の ナカ へ つきおとしたら どう する と いって K に ききました。 K は うごきません でした。 ウシロムキ の まま、 ちょうど いい、 やって くれ と こたえました。 ワタクシ は すぐ クビスジ を おさえた テ を はなしました。
 K の シンケイ スイジャク は この とき もう だいぶ よく なって いた らしい の です。 それ と ハンピレイ に、 ワタクシ の ほう は だんだん カビン に なって きて いた の です。 ワタクシ は ジブン より おちついて いる K を みて、 うらやましがりました。 また にくらしがりました。 カレ は どうしても ワタクシ に とりあう ケシキ を みせなかった から です。 ワタクシ には それ が イッシュ の ジシン の ごとく うつりました。 しかし その ジシン を カレ に みとめた ところ で、 ワタクシ は けっして マンゾク できなかった の です。 ワタクシ の ウタガイ は もう イッポ マエ へ でて、 その セイシツ を あきらめたがりました。 カレ は ガクモン なり ジギョウ なり に ついて、 これから ジブン の すすんで ゆく べき ゼント の コウミョウ を ふたたび とりかえした ココロモチ に なった の だろう か。 たんに それ だけ ならば、 K と ワタクシ との リガイ に なんの ショウトツ の おこる わけ は ない の です。 ワタクシ は かえって セワ の シガイ が あった の を うれしく おもう くらい な もの です。 けれども カレ の アンシン が もし オジョウサン に たいして で ある と すれば、 ワタクシ は けっして カレ を ゆるす こと が できなく なる の です。 フシギ にも カレ は ワタクシ の オジョウサン を あいして いる ソブリ に まったく キ が ついて いない よう に みえました。 むろん ワタクシ も それ が K の メ に つく よう に わざとらしく は ふるまいません でした けれども。 K は がんらい そういう テン に かける と にぶい ヒト なの です。 ワタクシ には サイショ から K なら だいじょうぶ と いう アンシン が あった ので、 カレ を わざわざ ウチ へ つれて きた の です。

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 ワタクシ は おもいきって ジブン の ココロ を K に うちあけよう と しました。 もっとも これ は その とき に はじまった わけ でも なかった の です。 タビ に でない マエ から、 ワタクシ には そうした ハラ が できて いた の です けれども、 うちあける キカイ を つらまえる こと も、 その キカイ を つくりだす こと も、 ワタクシ の テギワ では うまく ゆかなかった の です。 イマ から おもう と、 その コロ ワタクシ の シュウイ に いた ニンゲン は ミンナ ミョウ でした。 オンナ に かんして たちいった ハナシ など を する モノ は ヒトリ も ありません でした。 ナカ には はなす タネ を もたない の も だいぶ いた でしょう が、 たとい もって いて も だまって いる の が フツウ の よう でした。 ヒカクテキ ジユウ な クウキ を コキュウ して いる イマ の アナタガタ から みたら、 さだめし ヘン に おもわれる でしょう。 それ が ドウガク の ヨシュウ なの か、 または イッシュ の ハニカミ なの か、 ハンダン は アナタ の リカイ に まかせて おきます。
 K と ワタクシ は なんでも はなしあえる ナカ でした。 たまに は アイ とか コイ とか いう モンダイ も、 クチ に のぼらない では ありません でした が、 いつでも チュウショウテキ な リロン に おちて しまう だけ でした。 それ も めった には ワダイ に ならなかった の です。 タイテイ は ショモツ の ハナシ と ガクモン の ハナシ と、 ミライ の ジギョウ と、 ホウフ と、 シュウヨウ の ハナシ ぐらい で もちきって いた の です。 いくら したしくって も こう かたく なった ヒ には、 とつぜん チョウシ を くずせる もの では ありません。 フタリ は ただ かたい なり に したしく なる だけ です。 ワタクシ は オジョウサン の こと を K に うちあけよう と おもいたって から、 ナンベン はがゆい フカイ に なやまされた か しれません。 ワタクシ は K の アタマ の どこ か 1 カショ を つきやぶって、 そこ から やわらかい クウキ を ふきこんで やりたい キ が しました。
 アナタガタ から みて ショウシ センバン な こと も その とき の ワタクシ には じっさい ダイコンナン だった の です。 ワタクシ は タビサキ でも ウチ に いた とき と おなじ よう に ヒキョウ でした。 ワタクシ は しじゅう キカイ を とらえる キ で K を カンサツ して いながら、 へんに コウトウテキ な カレ の タイド を どう する こと も できなかった の です。 ワタクシ に いわせる と、 カレ の シンゾウ の シュウイ は くろい ウルシ で あつく ぬりかためられた の も ドウゼン でした。 ワタクシ の そそぎかけよう と する チシオ は、 イッテキ も その シンゾウ の ナカ へは はいらない で、 ことごとく はじきかえされて しまう の です。
 ある とき は あまり に K の ヨウス が つよくて たかい ので、 ワタクシ は かえって アンシン した こと も あります。 そうして ジブン の ウタガイ を ハラ の ナカ で コウカイ する と ともに、 おなじ ハラ の ナカ で、 K に わびました。 わびながら ジブン が ヒジョウ に カトウ な ニンゲン の よう に みえて、 キュウ に いや な ココロモチ に なる の です。 しかし しばらく する と、 イゼン の ウタガイ が また ギャクモドリ を して、 つよく うちかえして きます。 スベテ が ウタガイ から わりだされる の です から、 スベテ が ワタクシ には フリエキ でした。 ヨウボウ も K の ほう が オンナ に すかれる よう に みえました。 セイシツ も ワタクシ の よう に こせこせ して いない ところ が、 イセイ には キ に いる だろう と おもわれました。 どこ か マ が ぬけて いて、 それ で どこ か に しっかり した おとこらしい ところ の ある テン も、 ワタクシ より は ユウセイ に みえました。 ガクリョク に なれば センモン こそ ちがいます が、 ワタクシ は むろん K の テキ で ない と ジカク して いました。 ――すべて ムコウ の いい ところ だけ が こう イチド に メサキ へ ちらつきだす と、 ちょっと アンシン した ワタクシ は すぐ モト の フアン に たちかえる の です。
 K は おちつかない ワタクシ の ヨウス を みて、 いや なら ひとまず トウキョウ へ かえって も いい と いった の です が、 そう いわれる と、 ワタクシ は キュウ に かえりたく なくなりました。 じつは K を トウキョウ へ かえしたく なかった の かも しれません。 フタリ は ボウシュウ の ハナ を まわって ムコウガワ へ でました。 ワレワレ は あつい ヒ に いられながら、 くるしい オモイ を して、 カズサ の そこ イチリ に だまされながら、 うんうん あるきました。 ワタクシ には そうして あるいて いる イミ が まるで わからなかった くらい です。 ワタクシ は ジョウダン ハンブン K に そう いいました。 すると K は アシ が ある から あるく の だ と こたえました。 そうして あつく なる と、 ウミ に はいって いこう と いって、 どこ でも かまわず シオ へ つかりました。 その アト を また つよい ヒ で てりつけられる の です から、 カラダ が だるくて ぐたぐた に なりました。

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 こんな ふう に して あるいて いる と、 アツサ と ヒロウ と で しぜん カラダ の チョウシ が くるって くる もの です。 もっとも ビョウキ とは ちがいます。 キュウ に ヒト の カラダ の ナカ へ、 ジブン の レイコン が ヤドガエ を した よう な キブン に なる の です。 ワタクシ は ヘイゼイ の とおり K と クチ を ききながら、 どこ か で ヘイゼイ の ココロモチ と はなれる よう に なりました。 カレ に たいする シタシミ も ニクシミ も、 リョチュウ カギリ と いう トクベツ な セイシツ を おびる ふう に なった の です。 つまり フタリ は アツサ の ため、 シオ の ため、 また ホコウ の ため、 ザイライ と ことなった あたらしい カンケイ に いる こと が できた の でしょう。 その とき の ワレワレ は あたかも ミチヅレ に なった ギョウショウ の よう な もの でした。 いくら ハナシ を して も イツモ と ちがって、 アタマ を つかう こみいった モンダイ には ふれません でした。
 ワレワレ は この チョウシ で とうとう チョウシ まで いった の です が、 ドウチュウ たった ヒトツ の レイガイ が あった の を いまに わすれる こと が できない の です。 まだ ボウシュウ を はなれない マエ、 フタリ は コミナト と いう ところ で、 タイノウラ を ケンブツ しました。 もう ネンスウ も よほど たって います し、 それに ワタクシ には それほど キョウミ の ない こと です から、 はんぜん とは おぼえて いません が、 なんでも そこ は ニチレン の うまれた ムラ だ とか いう ハナシ でした。 ニチレン の うまれた ヒ に、 タイ が 2 ビ イソ に うちあげられて いた とか いう イイツタエ に なって いる の です。 それ イライ ムラ の リョウシ が タイ を とる こと を エンリョ して イマ に いたった の だ から、 ウラ には タイ が たくさん いる の です。 ワレワレ は コブネ を やとって、 その タイ を わざわざ み に でかけた の です。
 その とき ワタクシ は ただ イチズ に ナミ を みて いました。 そうして その ナミ の ナカ に うごく すこし むらさきがかった タイ の イロ を、 おもしろい ゲンショウ の ヒトツ と して あかず ながめました。 しかし K は ワタクシ ほど それ に キョウミ を もちえなかった もの と みえます。 カレ は タイ より も かえって ニチレン の ほう を アタマ の ナカ で ソウゾウ して いた らしい の です。 ちょうど そこ に タンジョウジ と いう テラ が ありました。 ニチレン の うまれた ムラ だ から タンジョウジ と でも ナ を つけた もの でしょう、 リッパ な ガラン でした。 K は その テラ に いって ジュウジ に あって みる と いいだしました。 ジツ を いう と、 ワレワレ は ずいぶん ヘン な ナリ を して いた の です。 ことに K は カゼ の ため に ボウシ を ウミ に ふきとばされた ケッカ、 スゲガサ を かって かぶって いました。 キモノ は もとより ソウホウ とも あかじみた うえ に アセ で くさく なって いました。 ワタクシ は ボウサン など に あう の は よそう と いいました。 K は ゴウジョウ だ から ききません。 いや なら ワタクシ だけ ソト に まって いろ と いう の です。 ワタクシ は シカタ が ない から イッショ に ゲンカン に かかりました が、 ココロ の ウチ では きっと ことわられる に ちがいない と おもって いました。 ところが ボウサン と いう もの は あんがい テイネイ な もの で、 ひろい リッパ な ザシキ へ ワタクシタチ を とおして、 すぐ あって くれました。 その ジブン の ワタクシ は K と だいぶ カンガエ が ちがって いました から、 ボウサン と K の ダンワ に それほど ミミ を かたむける キ も おこりません でした が、 K は しきり に ニチレン の こと を きいて いた よう です。 ニチレン は ソウ ニチレン と いわれる くらい で、 ソウショ が たいへん ジョウズ で あった と ボウサン が いった とき、 ジ の まずい K は、 ナン だ くだらない と いう カオ を した の を ワタクシ は まだ おぼえて います。 K は そんな こと より も、 もっと ふかい イミ の ニチレン が しりたかった の でしょう。 ボウサン が その テン で K を マンゾク させた か どう か は ギモン です が、 カレ は テラ の ケイダイ を でる と、 しきり に ワタクシ に むかって ニチレン の こと を ウンヌン しだしました。 ワタクシ は あつくて くたびれて、 それ どころ では ありません でした から、 ただ クチ の サキ で イイカゲン な アイサツ を して いました。 それ も メンドウ に なって シマイ には まったく だまって しまった の です。
 たしか その あくる バン の こと だ と おもいます が、 フタリ は ヤド へ ついて メシ を くって、 もう ねよう と いう すこし マエ に なって から、 キュウ に むずかしい モンダイ を ろんじあいだしました。 K は キノウ ジブン の ほう から はなしかけた ニチレン の こと に ついて、 ワタクシ が とりあわなかった の を、 こころよく おもって いなかった の です。 セイシンテキ に コウジョウシン が ない モノ は バカ だ と いって、 なんだか ワタクシ を さも ケイハクモノ の よう に やりこめる の です。 ところが ワタクシ の ムネ には オジョウサン の こと が わだかまって います から、 カレ の ブベツ に ちかい コトバ を ただ わらって うけとる わけ に いきません。 ワタクシ は ワタクシ で ベンカイ を はじめた の です。

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 その とき ワタクシ は しきり に ニンゲン-らしい と いう コトバ を つかいました。 K は この ニンゲン-らしい と いう コトバ の ウチ に、 ワタクシ が ジブン の ジャクテン の スベテ を かくして いる と いう の です。 なるほど アト から かんがえれば、 K の いう とおり でした。 しかし ニンゲン-らしく ない イミ を K に ナットク させる ため に その コトバ を つかいだした ワタクシ には、 シュッタツテン が すでに ハンコウテキ でした から、 それ を ハンセイ する よう な ヨユウ は ありません。 ワタクシ は なお の こと ジセツ を シュチョウ しました。 すると K が カレ の どこ を つらまえて ニンゲン-らしく ない と いう の か と ワタクシ に きく の です。 ワタクシ は カレ に つげました。 ――キミ は ニンゲン-らしい の だ。 あるいは ニンゲン-らしすぎる かも しれない の だ。 けれども クチ の サキ だけ では ニンゲン-らしく ない よう な こと を いう の だ。 また ニンゲン-らしく ない よう に ふるまおう と する の だ。
 ワタクシ が こう いった とき、 カレ は ただ ジブン の シュウヨウ が たりない から、 ヒト には そう みえる かも しれない と こたえた だけ で、 いっこう ワタクシ を ハンバク しよう と しません でした。 ワタクシ は ハリアイ が ぬけた と いう より も、 かえって キノドク に なりました。 ワタクシ は すぐ ギロン を そこ で きりあげました。 カレ の チョウシ も だんだん しずんで きました。 もし ワタクシ が カレ の しって いる とおり ムカシ の ヒト を しる ならば、 そんな コウゲキ は しない だろう と いって ちょうぜん と して いました。 K の クチ に した ムカシ の ヒト とは、 むろん エイユウ でも なければ ゴウケツ でも ない の です。 レイ の ため に ニク を しいたげたり、 ミチ の ため に タイ を むちうったり した いわゆる ナンギョウ クギョウ の ヒト を さす の です。 K は ワタクシ に、 カレ が どの くらい その ため に くるしんで いる か わからない の が、 いかにも ザンネン だ と メイゲン しました。
 K と ワタクシ とは それぎり ねて しまいました。 そうして その あくる ヒ から また フツウ の ギョウショウ の タイド に かえって、 うんうん アセ を ながしながら あるきだした の です。 しかし ワタクシ は みちみち その バン の こと を ひょいひょい と おもいだしました。 ワタクシ には コノウエ も ない いい キカイ が あたえられた のに、 しらない フリ を して なぜ それ を やりすごした の だろう と いう カイコン の ネン が もえた の です。 ワタクシ は ニンゲン-らしい と いう チュウショウテキ な コトバ を もちいる カワリ に、 もっと チョクセツ で カンタン な ハナシ を K に うちあけて しまえば よかった と おもいだした の です。 ジツ を いう と、 ワタクシ が そんな コトバ を ソウゾウ した の も、 オジョウサン に たいする ワタクシ の カンジョウ が ドダイ に なって いた の です から、 ジジツ を ジョウリュウ して こしらえた リロン など を K の ミミ に ふきこむ より も、 モト の カタチ ソノママ を カレ の メノマエ に ロシュツ した ほう が、 ワタクシ には たしか に リエキ だった でしょう。 ワタクシ に それ が できなかった の は、 ガクモン の コウサイ が キチョウ を コウセイ して いる フタリ の シタシミ に、 おのずから イッシュ の ダセイ が あった ため、 おもいきって それ を つきやぶる だけ の ユウキ が ワタクシ に かけて いた の だ と いう こと を ここ に ジハク します。 きどりすぎた と いって も、 キョエイシン が たたった と いって も おなじ でしょう が、 ワタクシ の いう きどる とか キョエイ とか いう イミ は、 フツウ の とは すこし ちがいます。 それ が アナタ に つうじ さえ すれば、 ワタクシ は マンゾク なの です。
 ワレワレ は マックロ に なって トウキョウ へ かえりました。 かえった とき は ワタクシ の キブン が また かわって いました。 ニンゲン-らしい とか、 ニンゲン-らしく ない とか いう コリクツ は ほとんど アタマ の ナカ に のこって いません でした。 K にも シュウキョウカ-らしい ヨウス が まったく みえなく なりました。 おそらく カレ の ココロ の どこ にも レイ が どう の ニク が どう の と いう モンダイ は、 その とき やどって いなかった でしょう。 フタリ は イジンシュ の よう な カオ を して、 いそがしそう に みえる トウキョウ を ぐるぐる ながめました。 それから リョウゴク へ きて、 あつい のに シャモ を くいました。 K は その イキオイ で コイシカワ まで あるいて かえろう と いう の です。 タイリョク から いえば K より も ワタクシ の ほう が つよい の です から、 ワタクシ は すぐ おうじました。
 ウチ へ ついた とき、 オクサン は フタリ の スガタ を みて おどろきました。 フタリ は ただ イロ が くろく なった ばかり で なく、 むやみ に あるいて いた うち に たいへん やせて しまった の です。 オクサン は それでも ジョウブ そう に なった と いって ほめて くれる の です。 オジョウサン は オクサン の ムジュン が おかしい と いって また わらいだしました。 リョコウ マエ ときどき ハラ の たった ワタクシ も、 その とき だけ は ユカイ な ココロモチ が しました。 バアイ が バアイ なの と、 ヒサシブリ に きいた せい でしょう。

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 それ のみ ならず ワタクシ は オジョウサン の タイド の すこし マエ と かわって いる の に キ が つきました。 ヒサシブリ で タビ から かえった ワタクシタチ が ヘイゼイ の とおり おちつく まで には、 バンジ に ついて オンナ の テ が ヒツヨウ だった の です が、 その セワ を して くれる オクサン は とにかく、 オジョウサン が すべて ワタクシ の ほう を サキ に して、 K を アトマワシ に する よう に みえた の です。 それ を ロコツ に やられて は、 ワタクシ も メイワク した かも しれません。 バアイ に よって は かえって フカイ の ネン さえ おこしかねなかったろう と おもう の です が、 オジョウサン の ショサ は その テン で はなはだ ヨウリョウ を えて いた から、 ワタクシ は うれしかった の です。 つまり オジョウサン は ワタクシ だけ に わかる よう に、 モチマエ の シンセツ を ヨブン に ワタクシ の ほう へ わりあてて くれた の です。 だから K は べつに いや な カオ も せず に ヘイキ で いました。 ワタクシ は ココロ の ウチ で ひそか に カレ に たいする ガイカ を そうしました。
 やがて ナツ も すぎて 9 ガツ の ナカゴロ から ワレワレ は また ガッコウ の カギョウ に シュッセキ しなければ ならない こと に なりました。 K と ワタクシ とは テンデン の ジカン の ツゴウ で、 デイリ の コクゲン に また チソク が できて きました。 ワタクシ が K より おくれて かえる とき は 1 シュウ に 3 ド ほど ありました が、 いつ かえって も オジョウサン の カゲ を K の ヘヤ に みとめる こと は ない よう に なりました。 K は レイ の メ を ワタクシ の ほう に むけて、 「イマ かえった の か」 を キソク の ごとく くりかえしました。 ワタクシ の エシャク も ほとんど キカイ の ごとく カンタン で かつ ムイミ でした。
 たしか 10 ガツ の ナカゴロ と おもいます。 ワタクシ は ネボウ を した ケッカ、 ニホンフク の まま いそいで ガッコウ へ でた こと が あります。 ハキモノ も アミアゲ など を むすんで いる ジカン が おしい ので、 ゾウリ を つっかけた なり とびだした の です。 その ヒ は ジカンワリ から いう と、 K より も ワタクシ の ほう が サキ へ かえる はず に なって いました。 ワタクシ は もどって くる と、 その つもり で ゲンカン の コウシ を がらり と あけた の です。 すると いない と おもって いた K の コエ が ひょいと きこえました。 ドウジ に オジョウサン の ワライゴエ が ワタクシ の ミミ に ひびきました。 ワタクシ は イツモ の よう に テカズ の かかる クツ を はいて いない から、 すぐ ゲンカン に あがって シキリ の フスマ を あけました。 ワタクシ は レイ の とおり ツクエ の マエ に すわって いる K を みました。 しかし オジョウサン は もう そこ には いなかった の です。 ワタクシ は あたかも K の ヘヤ から のがれでる よう に さる その ウシロスガタ を ちらり と みとめた だけ でした。 ワタクシ は K に どうして はやく かえった の か と といました。 K は ココロモチ が わるい から やすんだ の だ と こたえました。 ワタクシ が ジブン の ヘヤ に はいって そのまま すわって いる と、 まもなく オジョウサン が チャ を もって きて くれました。 その とき オジョウサン は はじめて おかえり と いって ワタクシ に アイサツ を しました。 ワタクシ は わらいながら サッキ は なぜ にげた ん です と きける よう な さばけた オトコ では ありません。 それでいて ハラ の ナカ では なんだか その こと が キ に かかる よう な ニンゲン だった の です。 オジョウサン は すぐ ザ を たって エンガワヅタイ に ムコウ へ いって しまいました。 しかし K の ヘヤ の マエ に たちどまって、 フタコト ミコト ウチ と ソト と で ハナシ を して いました。 それ は サッキ の ツヅキ らしかった の です が、 マエ を きかない ワタクシ には まるで わかりません でした。
 そのうち オジョウサン の タイド が だんだん ヘイキ に なって きました。 K と ワタクシ が イッショ に ウチ に いる とき でも、 よく K の ヘヤ の エンガワ へ きて カレ の ナ を よびました。 そうして そこ へ はいって、 ゆっくり して いました。 むろん ユウビン を もって くる こと も ある し、 センタクモノ を おいて ゆく こと も ある の です から、 その くらい の コウツウ は おなじ ウチ に いる フタリ の カンケイジョウ、 トウゼン と みなければ ならない の でしょう が、 ぜひ オジョウサン を センユウ したい と いう キョウレツ な イチネン に うごかされて いる ワタクシ には、 どうしても それ が トウゼン イジョウ に みえた の です。 ある とき は オジョウサン が わざわざ ワタクシ の ヘヤ へ くる の を カイヒ して、 K の ほう ばかり へ ゆく よう に おもわれる こと さえ あった くらい です。 それなら なぜ K に ウチ を でて もらわない の か と アナタ は きく でしょう。 しかし そう すれば ワタクシ が K を ムリ に ひっぱって きた シュイ が たたなく なる だけ です。 ワタクシ には それ が できない の です。
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