★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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裏葬儀屋(35)

2009年11月06日 | 短編小説「裏葬儀屋」
「奥様と理穂さんは、今夜は通夜ということで、旅館には戻れませんので、やはり3階の部屋に泊まってください。明日になったら柴田さんの遺体と火葬場に行っていただき、柴田さんを火葬しお骨を持ってご自宅に帰っていただきます」
 恵子と理穂も大きくうなずき、お互いに見つめあった。
「そのあとは、奥様は山田社長と電話等で連絡を取り合い葬儀等をひととおり済ませ、保険金を受け取り会社の建て直しを行ってください。多分一週間もすれば、山田社長も帰れるかと思いますが、死んだことになっていますので表にはでれません。決して知り合いには会わないようにしてください」
 今度は、山田社長と恵子が見詰め合ってうなずいていた。
「本当の正念場は、保険金を受け取ってからです。山田社長が本人として人前に出れないのは何かと不都合がありますが、ご家族一致団結してがんばってください」
 山田社長は、妻と娘を見つめ「よし、がんばろうな」と言って、二人の手をとった。
 浦河は、柴田の遺体に目をやり、(この人達こんなに喜んでいるよ。柴田さん、ありがとう)と小声で言った。


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