★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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裏葬儀屋(37)

2009年11月08日 | 短編小説「裏葬儀屋」
 やがて、新幹線は二人が降りる駅に近づいてきた。二人は、荷物棚から荷物を降ろしたり、下車の準備を始めた。さっきまで口を開けて寝ていた同じシート列のおばさんも、同じ駅で降りるらしく、立ち上がって荷物の整理をしている。
 その時、列車にブレーキがかかりおばさんはバランスを崩し理穂の方に寄りかかってきた。
「あら、ごめんなさい」とおばさんは理穂に向かって言った後、理穂の耳元でささやくように
(村での出来事はもっと小さな声でね)
と話しかけた。
 ぎょっとした理穂と恵子は化け物でも見るかのように目を見開き、そのおばさんの顔をまじまじと見た。
 その太ったおばさんは、二人の驚いた顔を楽しむかのようにニッと笑って再び自分のシートに戻って下車支度を続けた。
 その横顔を見ていた恵子は、「あっ」と小さな声を上げささやくように理穂に言った。
(たしかあのおばさん、行きの新幹線でも近くに座っていた人よ。ということは・・)
 理穂は、母の顔を見てつぶやいた。
(あの人も浦河さんの仲間で、もしかして行く時から監視されていたっていうこと?)
 二人は、葬儀屋と名乗った浦河の会社の底知れなさに不気味さを感じていた。


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