★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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裏葬儀屋(32)

2009年11月02日 | 短編小説「裏葬儀屋」
 10分後、山田社長は遺体安置所で無事息を吹き返した。
「う・う・・ふおぉぉぉ・・・、ど・どこだ、ここは・・・」
「あなた、大丈夫ですか?」「お父さん大丈夫?」
 妻と娘は、今度は演技ではなく心の底から本当に心配している。やはり家族とは良いものだ。
「ああ、お前たち、俺は生き返ったのか。計画は順調にいっているのか」
 浦河は、山田社長の様子を見ながら言った。
「無事生還されたようですね。気分はいかがですか。しばらくの間、頭痛がしたり節々が痛かったりしますが、1・2日で治りますので気にしないでください」
 浦河はそう言うと、部屋の奥に歩いていき、突き当りの壁面にある小さな扉を開け、一台のキャスターベッドを引っ張り出した。
 そのベッドには、死体が一体乗っていた。
「山田さん、今からあなたは『柴田五郎』になります。そして、この方が『山田正一』つまり山田さんあなたになりかわって、これから火葬場で焼かれ骨になります。合掌願います」
 4人は、新たに運ばれてきた遺体に対し、しばらくの間手を合わせた。


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