★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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彗星の時(28)

2011年12月07日 | 短編小説「彗星の時」
 間近で見ると、走鳥は大きい。体高は2メートルを軽く超え、黒光りする胴体はまるで黒馬のようだ。だが、よく見ればその輝きは毛皮ではなく羽だと判る。その胴体を支えている2本の足はまるで丸太のようだが、足先は確かに鳥の足の形状をしていた。
「走鳥には乗ったことはなかでしょうが、馬はありやすか?」
 ビーンがたずねると、ヤーコンが言った。
「私とケイン様は乗馬の経験はあるが、シャイン殿はどうかな」
シャインはちょっと首を傾げたが、そのまま横に振った。それを見たビーンは特に困る風でもなく言った。
「基本的に馬と同じような操り方だけんど、判らなくても別にかまわんよ。走鳥は馬と違って群れで行動するだで、群れのボスに付いて来るだよ。オラがボスに乗ってジアスまで案内するだで、あんたらは他の3羽に乗っていりゃあ何もせんと自然に運ばれるだぁ。まずはそっちのお子様から乗るだよ。手伝ってあげっから」
 ビーンはそう言うと、ケインに近づき手近の走鳥に乗る手助けをはじめた。走鳥の背には羽の動きに邪魔にならないような場所に小型の鞍が乗せてあり、慣れないとかなり乗りづらい。それでも何とか三人を鞍上に押し上げたビーンは、最後に一番大きなボス鳥にヒョイとまたがり「では、いきますぞぃ、マスクをしっかりと被ってくだされ」と言うと、鐙に乗せた両足でボス鳥の胴を蹴った。


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