鴨着く島

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沖縄県知事に玉城デニー氏が当選

2018-10-02 10:00:43 | 日本の時事風景

沖縄県知事選投票日は台風24号がようやく沖縄から抜け出た日で、投票率低下の心配があったが、期日前投票が相当な高率だったため前回の知事選と同率くらいにはなったようだ。

玉城氏は自民・公明の推す佐真喜氏より7万票も多い38万票余りを獲得して見事に当選を果たした。自民・公明という現政権挙げての大量動員があった上でのこの差は、玉城氏側の圧勝と言ってよい。

玉城氏を最初は歌手のキロロのボーカル担当・玉城千春と同じと思い「たましろ」と読んでいたのだが、「たまき」だったのは意外だった。どっちの「城」の読みが正解か正当かは知らないが、もう一つ不思議なのがキロロのピアノ担当・金城綾乃の方は「きんじょう」と「城」を「じょう」と読んでいることだ。

同じ「城」を「き」「しろ」「じょう」と三通りに読んでいるのは、さすがに困る。病院の受付の人なんかはどう対処しているのだろう。「玉城」をひとりは「たまきさん」と呼び、もうひとりには「たましろさん」と呼ぶのに何か区別の仕方があるのだろうか。

沖縄では「城」を使う姓が比較的多い気がする。「大城(おおしろ)」「宮城(みやぎ)」「南城(なんじょう)」などだが、「城」はすべて読みが違うのは他県人からすると頭が痛い。慣れるしかないのか。

まあ、今回はそんなことはどうでもよい。とにかく癌のために任期半ばで倒れた前知事・翁長氏の後継争いが焦点で、玉城氏は故翁長氏も認める正統な後継者であり、佐真喜氏は自民党現政権の推す候補者だった。

政策上の焦点は、辺野古の米軍基地新設を認めるかどうかだったが、玉城氏は翁長氏同様認めない立場、佐真喜氏は自民党現政府同様認める立場(と言っても佐真喜陣営は選挙戦でそのことを明言しなかった)だが、選挙結果に現れた民意は辺野古米軍基地建設反対ということである。

安倍政権はこの結果に動ずることなく例のアメリカへの過剰の忖度により、また、普天間基地移設のかっての自民党政権と米軍との間の確約により粛々と建設を進めるに違いないが、そもそも沖縄への米軍の駐留を許しているのは「日米安保」(及び日米地位協定)が結ばれているからである。

今、「米軍の駐留を許しているのは」と言ったが、自民党政権からすれば「(日本の安全保障上)米軍の駐留をお願いしている」というのが正確で、これに対してトランプ大統領は「一方的にアメリカが日本の安全を守るのは、片務的すぎる。逆にアメリカが攻撃されても日本は助けようとしない。おかしいではないか」と歴代の大統領にはなかった一歩踏み込んだ発言を繰り返してきた。

それはその通りで二国間軍事同盟ならそうでなければならない。つまりお互いに軍事力を行使して助け合いましょう、というのが筋なのだ。ところが日米安保に限っては成立の当初から一般的な相互防衛条約とは違っていた。

アメリカとしては国連憲章の制定当事者でもあり、戦争防止や軍事的衝突回避のために国連(安保理)が仲裁に入るのが憲章上の決まりである以上、二国間の相互防衛条約は暫定的でなければならず、双方の国内事情が安定すれば(基本的には国連に加盟し、民主主義が浸透して内戦などの危険が無くなれば)廃棄した上で、あとは国連に委ねなければならないのである。

ところが日本は国連に正式に加盟したのと同時に「日米安保」を結んだ。その理由は吉田首相によれば「荒廃した日本に再軍備にかける金などなく、そんな金があった経済復興に回す。だから独立国としては恥ずかしながら軍事的な安全は米軍に頼るしかない」と、腹をくくったわけである。

その後9年目(足掛けでは10年)、安倍首相の母方の祖父である岸首相が安保改定してまた10年延長した。この時のことを安倍首相はよく覚えているそうで「私の祖父は安保を10年限りにすると、期限付きで再契約したのです。国連加盟以前の米軍占領と何ら変わりなかった日米安保をかなり同等にしたのですよ」と誇らしげだ(『美しい日本』同氏著)。

しかし、それとてその5年前の1955年(昭和30年)に保守合同した際の最大の目的だった「自主憲法制定」とそれを担保する「自主軍備・日米安保廃棄」は1970年にも発動されず、結果としてこの63年間一度もなかったことを振り返れば、「目糞が鼻糞に誇る」程度のものだ。

要はもう「日米安保」を廃止するのが筋で、その上で「自主軍備」(国防軍、ただし専守防衛)を進め、同時にいかなる国とも相互防衛条約なるものを結ばないためにも、「永世中立国」を宣言すればよい。

永世中立国を宣言したからといってかってのスイスのように「国民皆兵」「国連非加盟」になる必要はなく、現有の自衛隊を国防軍として改組し、選挙権を得た18歳から2年間くらいの軍事を含むボランティア活動を義務付ける程度でよい。

中国にしてもロシアにしても、日本が日米安保を廃棄したからといって「さあ米軍がいなくなった、やっつけろ」などと攻めてくることはない。もしそう思う人がいたらその人は余程の「アメリカ(軍)依存症」罹っている人だ。こういう類の人はアメリカへ亡命(帰化)したらいいだろう。安全だぜ。

今の安倍首相は「日米同盟はこれまでになく堅固であり、ますますそうしたい」などと思っている人だから、全くその見込みはないが、沖縄が「永世中立県」なる宣言をすることは可能だろう。沖縄に行った時に「万国津梁」というフレーズをよく見かけた。「世界の架け橋」という意味だが、沖縄には特有の外交のしたたかさとしなやかさがある。戦災に晒されて多くの県民を失うという筆舌しがたい苦しい過去もあった。絶対平和を願う「永世中立」にはうってつけの県ではないか(ただ、米軍撤退後の米軍基地の一部が自衛隊の基地になるのはやむをえまい)。