鴨着く島

大隅の風土と歴史を紹介していきます

台風19号の爪痕

2019-10-13 22:08:50 | 災害
台風19号がほぼ予想通りのコースをとって伊豆半島から神奈川・東京を直撃し、埼玉・茨城を経て太平洋に抜けた。

想定外だったのは台風の進路からは大きく外れている長野県での被害だ。軽井沢などから流れ出す信濃川の上流・千曲川が長野市あたりで堤防が決壊して流域を水浸しにした。

他にも関東や東北の多くの河川で氾濫が見られた。台風の進路のはるか先の宮城県などでも氾濫する川があったのは、この19号台風がかってない巨大な「雨台風」だったことを示している。

ひと月余り前に主に千葉県を襲った台風15号が、多くの住宅の屋根を吹き飛ばしたのとは対照的だ。

今のところ大雨特別警報の出た1都11県での被害は死者・行方不明者をあわせて50名位らしい。この数字は特別警報の出た箇所がかなりの広範囲だったにしては少なくて済んだと思われる。

というのも、今からもう26年前になるが、平成5年(1993年)の7月から9月にかけて鹿児島地方を襲った「8・6水害」による死者が鹿児島一県だけで120名を超えているからである。

「8・6水害」は梅雨の長雨が8月に入って豪雨に変わって起きた8月1日の「8・1水害」と8月6日の
「8・6水害」、それに9月3日に襲来した台風13号による死者の合計で、当時初めて時間雨量100ミリを超えたことでも強烈に記憶に残る災害だった。

豪雨といえば去年7月初旬の「西日本豪雨」だが、この時でさえ死者数では「8・6水害」を超えていない。いかに鹿児島が豪雨と台風にあえいでいたかを如実に示す数字である。

事実、戦中・戦後の巨大台風で上陸時のヘクトパスカルのランキングを調べると、最少は室戸台風の911ヘクトパスカル、次が枕崎台風で916ヘクトパスカル、以下10の巨大台風がランキングに載るが、そのうち鹿児島に上陸したのは何と半数の6個(ウィキペディアによる)。

台風銀座とはよく言ったものだ。

鹿児島ではことわざで「人がけ死まんと、ナゲシ(長雨=梅雨)は上がらん」(人が死ぬような末期の豪雨があって初めて梅雨が明ける」というのがあるが、もう一つ加えれば「台風が来ないと秋が来ない」だろう。

9月(二百十日)以降に普通にやってくる台風は鹿児島の東側(黒潮の流れ)を通過することが多く、北寄りの風を運んでくるので、台風一過はひんやりとして気持ちがいい。

忌み嫌われる台風もそういう前向きの目で見れば想定内かもしれない。

ところが今度の台風にしろ15号台風にしろ、どちらも「想定外」だった。被害に遭った人がテレビなどでインタビュうーを受けると異口同音に「こんなことは〇〇年住んでいて初めてだった」と言っているが、まさにその通りの想定外の事態だった。

平成天皇(上皇様)の退位にあたってのお言葉の中で、「戦争には無縁であったこと」を喜んでおられたが、その一方で「種々の災害が多かった」ことを挙げられた。令和になっても災害とは縁が切れそうになく、ここは天災大国日本ーーと腹を括って対処しなければなるまい。