鴨着く島

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2018広島平和記念式典

2018-08-07 09:14:18 | 日本の時事風景

 73年前の8月6日月曜日午前8時15分、ウラン型原子爆弾「リトルボーイ」が広島の上空で炸裂した。

 数万度の熱戦と爆風が行きかう人々を直撃し、ほぼ一瞬にして8万、24時間以内に合計12~4万の人命が失われた。

 

さながらの地獄絵がそこに現出した。

 「日本がすぐにポツダム宣言を受諾しなかったからこんな目にあった」「日本の軍国主義に対する鉄拳だったのだ」「そもそも勝てるわけのない大国アメリカ相手に戦争なんかするからこうなった」

 戦後はこのように原爆を落とされたのはすべて日本側の落ち度であったかのように言われた。

 アメリカは悪くはないのか? という疑問がずーっと後回しにされたのは、まず被害の程度が想像を絶する規模であったことへの心の整合性を得るための猶予期間だったこともあるが、早い話が占領期のアメリカ側の日本に対する口封じ(検閲)だったのだ。

 アメリカは口を開けば「原爆を落としたのは、アメリカが日本本土への軍事的上陸を敢行した場合、双方に途方もない犠牲者が出るであろうことを回避するために、早く終戦に持ち込むための作戦であった」(から、原爆を投下したのは間違っていない)と言う。

 嘘もいい加減にしろ。まず、ソ連との密約「ヤルタ協定」によってソ連軍参戦を容認していたのだが、もともとソ連軍がそこまでは到底できないだろうと踏んでいた。密約に従ってソ連が日本と結んでいた不可侵条約を破れば日本も戦争遂行をあきらめるだろうから、実質的にソ連軍の出番はなくなるーーとの読みがあった。

 ところが意外にも早くソ連軍が満州方面へ集結してきたので、ソ連軍が満州を手中に収めたあと、その勢いで日本本土まで上陸されたらたまらないと焦ったアメリカが「それならそうされないうちに最終兵器でアメリカの軍事力を誇示し、日本を降伏させ、ソ連の野望を食い止めなければならぬ」と原爆を2発も落としたのだ。

 もう一つの大きなアメリカの悪業は戦時国際法によって一般人(民間人=非戦闘員)への攻撃は許されていないにもかかわらず、そんなことは屁の河童で、沖縄でもそうだったが、非戦闘員への殺戮が行われたことである。

 当時のアメリカ人の多くは次のような戦争スローガンを鵜呑みにしていた。

 「良い日本人は、死んだ日本人である」

 これは「日本人なら誰を殺しても構わない」ということで、起源は

 「良いインディアンは、死んだインディアンである」

 とのスローガンで、インディアンを追い詰めていった保安官ワイアットアープの時代にまでさかのぼる。

 これが原爆投下の彼らの「基本理念」だった。日本人なら誰を殺してもよかったのだ。

 ただ、日本人でもクリスチャンは人間扱いされたらしい。

 2発の原爆のうち二回目のプルトニウム型「ファットマン」は長崎に落とされたのだが、ちょうど浦上天主堂では多数の信者たちが教会に集ってミサの最中だった。そこに壊滅的被害を与えてしまったのをのちに気づいたアメリカ側は、せめて天主堂の再建をさせてくれないか、と長崎に申し出たのだが、断られた。

 長崎にしてみれば、クリスチャンも仏教徒も神道主義者も同じ人間であるのにクリスチャンだけを特別に人間扱いにするわけにはいかなかったのだろう。当たり前のことである。

 その後も浦上天主堂は広島の原爆ドームのような象徴的な姿のままだったが、20年位前だったか老朽化を理由に再建された。その時にアメリカ側から寄付でもあったのかどうかは不明だ。

 たぶんなかっただろう。もしあれば、広島まで来たオバマ大統領が同様の被害を受けた長崎まで来ないわけがない。

 アメリカにとって同じクリスチャンを多数殺害した長崎は「鬼門」なのである。

 日本人は、戦後アメリカから物質的な援助はもとより、「自由」の重要性を大いに学ばせてもらったと感謝する人も多いが、これも眉唾な話で、今のエピソードでもわかるように、基本的には「クリスチャン・白人」以外の人間は貶められてきた。黒人が最もよい例だ。ベトナム戦争への従軍を経て戦後25年目くらいにしてやっと黒人にも白人同様の「権利」が与えられたに過ぎない。

 今回の安倍総理のあいさつには被爆者や被爆2世の人もその素気のなさに憤慨していたようだ。何しろ国連決議である「核兵器禁止条約」の採決の場に参加していないからもちろん批准もなく、言及することもなかった。

 あまつさえ「核兵器保有国と非保有国との間に立ち、主導的な役割を果たします」と言ったときは呆れてしまった。だったらせめて核兵器禁止条約に署名して唯一の被ばく国の矜持を示したらどうなんだ。

 そうできないのは「アメリカの核の下に保護されているから」なのだろう。その根拠は「日米安保」である。これがなくなったら、「北朝鮮がミサイルを打ってくる」「中国が尖閣諸島を皮切りに南西諸島を手中に収める。そして沖縄も・・・」とアメリカ依存症の連中の常套文句が飛んでくる。

 こういった連中はこれまで書いたりそう言ってきた手前、引くに引けないのだ。たぶんトランプの大統領就任はあり得ないと言ってきた連中でもある。情けない話だ。トランプよりよほど「アメリカ第一主義」に染まってしまっている日本人。憐れむべし。