俳句日記/高橋正子

俳句雑誌「花冠」代表

3月16日(土)

2013-03-16 07:05:32 | Weblog
 伊豆
★わさび田の田毎に春水こぼれ落つ  正子
わさび田のそれぞれを満たし、豊かに勢いづく春の水音が快く聞こえてきます。清らかな水を湛えたわさび田が、これからのわさびの生育に向けて明るく輝き、活力にあふれています。(藤田洋子)

○今日の俳句
桃の花馴染みの声の店先に/藤田洋子
桃の花が店に活けてある。店先に馴染みの声が聞こえて、「あら」と思う。桃の花には、気取らない、明るい雰囲気があるので、「馴染みの声の店先に」言ってみるのだ。日常の一こま。(高橋正子)

○辛夷(こぶし)

[辛夷/横浜都筑区緑道ふじやとの道]

★風搏つや辛夷もろとも雜木山/石田波郷
★晴ればれと亡きひとはいま辛夷の芽/友岡子郷
★風の日の記憶ばかりの花辛夷/千代田葛彦
★烈風の辛夷の白を旗じるし/殿村莵絲子
★夕辛夷ドガの少女は絵に戻る/河村信子
★朝のはじめ辛夷の空をみていたり/酒井弘司
★ライオンの柵の中なる花辛夷/小西鷹王
★花こぶし汽笛はムンクの叫びかな/大木あまり

★風に吹かれててんでんばらばら辛夷咲く/高橋信之
★青空の一画を占め辛夷の白/高橋信之
★花辛夷風のあらしに揉まれつつ/高橋正子
★辛夷の花枝ごと揺れて揺るる空/高橋正子

○辛夷の花が咲き始めた。もう、かなり咲いている。近くでは、高田町の丘の畑に立つ大きな辛夷の木が素晴らしい。その丘をバスが走り、バスの窓からその辛夷の木が眺められる。広く、霞に濁る空に、白い辛夷の花が小説の中の世界のように咲いている。
小説や詩を読めば、「辛夷の花」がよく出てくる。しかし、私が生まれた瀬戸内でも、長く住んだ四国でも辛夷の花を見たことはなかった。あるとすれば、松山で最後に住んだ住まいの近くの総合公園にあったぐらいだ。もともとあったのか、植樹されたのかは知らないが。ところが、横浜に引っ越して、白木蓮を見ることは、ごくごく稀になった。辛夷、辛夷と庭にも丘にも、咲いている。私には、堀辰雄のイメージに重なる花だが、夢に見た辛夷の花を、こうも身近に見られるとは。

 コブシ(辛夷、学名:Magnolia kobus)はモクレン科モクレン属の落葉広葉樹の高木。早春に他の木々に先駆けて白い花を梢いっぱいに咲かせる。別名「田打ち桜」。

 白木蓮とこぶしはこの2、3年(2003年~2005年)、デジカメで写真を撮るようになってからその違いに興味を持つようにになリました。はじめは白木蓮とこぶしの区別さえできなかったのですが、観察するようになってから段々にそれぞれの特徴がわかるようになり、そしてその違いを見つけることが面白くなりました。専門家ではないので、植物学的にはおかしなところがあるやもしれませんが、ご容赦ください。またもしアドヴァイス頂けたら嬉しいです。
 個人的な印象を言えば、白木蓮の花は上向きで天に向かって咲き、大きく、上品で優雅で孤高的な感じがします。一方こぶしは横向きに花が咲き、見る人の方に顔を向けてくれているようで、親しみやすく思えます。どちらが好きとか美しいとかいうことは言えないのでは・・・。どちらも冬の終わり(或いは早春)に、まず白木蓮そして次にこぶしが白い花を咲かせて、もうすぐそこに春が来ていることを知らせてくれます。でもその白い花のバックとなる空はまだ冬の真っ青な空で、花の白と空の青がとても美しいコントラストとなって忘れがたいものです。白木蓮とこぶしが咲き終わり、しばらくすると桜が咲きます。その咲く順番がまた絶妙です。桜の花のバックの空はもう春の空そのもので霞がかっていて、真冬の青い空とは違い暖かな印象を与えます。([ゆたかの部屋」より)


◇生活する花たち「シナマンサク・マンサク・ハヤザキマンサク」(東大・小石川植物園)
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3月15日(金)

2013-03-15 17:48:13 | Weblog
★花丈の揃い真白なシクラメン   正子
純白のシクラメンが咲きそろいました。鉢の中はみな丈がそろっています。丹精に育てられた花なのでしょう。(祝恵子)

○今日の俳句
初摘みの土筆を持ちて病室へ/祝恵子
入院していれば、季節のもの、戸外のものがうれしい。初摘みの土筆に春が来たことが共に喜べることであろう。(高橋正子)

○山茱萸(さんしゅゆ)

[山茱萸/横浜・四季の森公園]

★山茱萸の黄や街古く人親し/大野林火
★さんしゅゆの花のこまかさ相ふれず/長谷川素逝
★山茱萸にけぶるや雨も黄となんぬ/水原秋桜子
★山茱萸やまばたくたびに花ふえて/森澄雄
★池の辺に山茱萸の色きらめけり/信幸
★ねんねこの児にさんしゅゆの花を見す/高橋正子


○「庭のさんしゅゆの木に・・」という民謡があるが、山茱萸という言葉を知ったのは、この歌詞によってである。一体どんな木なのか、それに花がつくのか、皆目知らないままでいた。それが、早春肌寒い風のなかに、鮮烈な黄色い花を咲かせるのを知ったのは、庭師さんが我が家の庭隅に山茱萸を植えてくれてから。花展では、大きな枝を惜しげなく切った大作の花を見ることがある。やはり、外の肌寒い空気に置いてみるのが一番いい。子どもが小さいときには、ねんねこでおんぶしていた。早春は、光があふれてはいるが、風が寒い。ねんねこの子は、いろんなものを見たがって、あちこちおんぶして歩いた。さんしゅゆの花の黄色は子どもの目にも、鮮烈だったようだ。ねんねこでおんぶして歩いたのは、造成中の団地とそのあたり。一山を削り、雛段状の造成地を造る。毎日、図鑑に載っているような珍しい車が作業した。鶯が鳴くのを聞きながら、ねんねこの子は、それを飽きることなく、2時間はゆうに見ていた。私は子をおんぶして、2時間突っ立っていたわけなのだが。山茱萸の花が咲く季節になると、そのことを思い出す。

山茱萸(サンシュユ、学名:Cornus officinalis Sieb. et Zucc.)は、ミズキ目ミズキ科の落葉小高木。ハルコガネバナ、アキサンゴ、ヤマグミとも呼ばれる。季語は春。中国及び朝鮮半島の原産地に分布する。江戸時代享保年間に朝鮮経由で漢種の種子が日本に持ち込まれ、薬用植物として栽培されるようになった。日本では観賞用として庭木などにも利用されている。日当たりの良い肥沃地などに生育する。高さ3-15 mになる落葉小高木。樹皮は薄茶色で、葉は互生し長さ4-10 cmほどの楕円形で両面に毛がある。3月から5月にかけ、若葉に先立って花弁が4枚ある鮮黄色の小花を木一面に集めてつける。花弁は4個で反り返り、雄しべは4個。夏には葉がイラガやカナブンの食害を受ける。晩秋に付ける紅色楕円形の実は渋くて生食には向かない。内部にある種子を取り除き乾燥させた果肉(正確には偽果)は生薬に利用され、山茱萸(やまぐみ)という生薬として日本薬局方に収録されており、強精薬、止血、解熱作用がある。果肉は長さ1.4 cm程の楕円形。牛車腎気丸、八味地黄丸等の漢方方剤にも使われる。山茱萸の音読みが、和名の由来である。早春、葉がつく前に木一面に黄色の花をつけることから、「ハルコガネバナ」とも呼ばれる。秋のグミのような赤い実を珊瑚に例えて、「アキサンゴ」とも呼ばれる。

○句美子の句集『手袋の色』の表紙の見本ができた。句美子の俳句のイメージをよく捉えたデザインのアイディアに感心した。大いに気に入って家族3人で喜んだ。

◇生活する花たち「福寿草・節分草・榛の花」(東京白金台・自然教育園)
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3月14日(木)

2013-03-14 17:46:23 | Weblog
★真っすぐな日の差すところ蕗のとう   正子
日差しを殆ど遮られない,真っ直ぐな日当たりの良い野に瑞々しくまた、青々とした顔を出していたのでしょうか。蕗のとうは確かに日当たりの良い場所を好みますが、その日差しの当っている蕗のとうを見られ、いよいよ春めいて来た野を実感された喜びが感じられます。 (佃 康水)

○今日の俳句
包み紙少し濡れいて蕗の薹/佃 康水
蕗の薹を包んでいる紙がうっすらと濡れている。朝早く採られた蕗の薹だろうか。蕗の薹の息吹であろうか。しっとりとした命の、春みずみずしさがある。(高橋正子)

○オキザリス(カタバミ科カタバミ属)

[オキザリス/横浜日吉本町(2013年3月10日)]_[かたばみ/横浜日吉本町(2011年5月13日)]

★オキザリス雨の茶房に人在らず/中谷朔風
★オキザリス野生育ちの強きこと/豊岡重翁

★石垣の裾に朝日のオキザリス/高橋正子
★雨降りのオキザリスなりみな蕾/高橋正子
★掘り起こされ芋きらめかすオギザリス/高橋正子

 オキザリス(学名:Oxalis corymbosa(紫カタバミ)、Oxalis articulata(芋カタバミ))は、カタバミ科カタバミ属。世界中に800種類以上が分布する植物です。日本にもクローバーとよく間違われるカタバミ〔O.corniculata〕をはじめ、5種ほどが自生しています。花を咲かせて枯れてしまう一年草と、毎年花を咲かせる多年草があります。 球根を作るものや、低木になる種も知られています。世界中の色々な地域に分布しているだけに、地域によって様々な形態や性質をとり、開花期、草姿、花色、大きさなどは様々です。オキザリスだけで一年を途切れさせずに季節ごとに花を楽しむことができそうな気がします。花は筒状で、先端が数枚の花びらに分かれています。花は温度や光に敏感で、つぼみは日が射しているときは開きますが、天気の悪い日や夜は閉じています。また、日が当たっても温度の低いときは開きません。オキザリスの名前はギリシア語で「酸性」を意味するオクシス(oxys)に由来し、葉や茎にシュウ酸を含み酸っぱいところにちなみます。カタバミの葉っぱで10円玉をこすると黒ずみがとれてぴかぴかになるのは、このシュウ酸のせいです。園芸では地中に球根を作る種が主に栽培されており、球根植物として扱われることが多いです。特に南アフリカ原産種が多いです。栽培上は「春植え」と「夏・秋植え」に分けることもあります。
 よく見かけるのは「紫カタバミ」と「芋カタバミ」だが、両者区別しにくい。両者ともピンク色の花びらで、紫カタバミは、花びらの中央がうすいピンク、芋カタバミは、花びらの中央が濃いピンク。花言葉は「喜び、母親の優しさ」。似ている花は、現の証拠、酢漿草(かたばみ)。似ている葉は、白詰草(クローバー)。


◇生活する花たち「桃の花蕾・藪椿・梅」(横浜日吉本町)
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3月13日(水)

2013-03-13 17:45:29 | Weblog
★春砂をゆきし足跡は浅し   正子
砂浜をお歩きになったのでしょうね。まだ春のこととて、渚からやや離れたところをお歩きになったのかもしれません。流れこぼれる砂に、以前歩いた人の足跡は浅く残っているばかりです。そんな情景に春の覚束なさを感じ取ることができます。(小西 宏)

○今日の俳句
児の遊ぶ日差しに芝の青芽ぐむ/小西 宏
「青芽ぐむ」が、児の可愛らしさとよくマッチして芽ぐむ季節が楽しくなっている。(高橋正子)

○土佐水木(とさみずき)

[土佐水木/横浜日吉本町]

★土佐みづき山茱萸も咲きて黄をきそふ/水原秋桜子
★峡空の一角濡るる土佐みづき/上田五千石
★重い口開きたるかな土佐水木/遊歩
★大海の荒波見やる土佐水木/かるがも
★花揺らぎ潮の香りや土佐水木/かるがも
★料峭の空気の色に土佐水木/高橋正子

土佐水木(とさみずき、学名:Corylopsis spicata)は、マンサク科トサミズキ属。落葉低木。四国の山中に自生、また庭木とされている高さ2mほどである。高知(土佐)の蛇紋岩地に野生のものが多く見られるため、この名前がついている。また、葉の形がミズキ科の樹木と似てところからミズキといわれている。3-4月に葉に先立って短枝に明るい黄色の花を咲かせ、花穂は長く伸びて7輪前後の花をつける。レンギョウやマンサクと同様、江戸時代から庭木や盆栽、切り花として親しまれている。葉はまるっこい卵円形で、裏面は粉をふったように白っぽく毛がある。実は緑色で、熟すと中から黒い種子が出る。また海外へは19世紀、シーボルトにより紹介された。病害ではうどんこ病、虫害ではカイガラムシ類、テッポウムシなどによる被害がある。日向水木と比べて、一房の花の数が多くて花も大きい。土佐水木の仲間に支那水木がある。


◇生活する花たち「紅梅・赤花満作・山茱萸(さんしゅゆ)」(横浜・四季の森公園)

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3月12日(火)

2013-03-12 17:43:49 | Weblog
 長男元結婚
★風なくてふたりの婚は弥生かな  正子
改めて、ご長男元様ご結婚おめでとうございます。おふたりの結婚式は、風のない穏やかな弥生三月に行なわれました。木々の芽吹く春に、ご結婚された息子さんご夫婦へ、お幸せにと温かく見つめられているご両親のお姿が伝わってまいります。「弥生」のことばの響きがとても柔らかく、温かく感じました。(藤田裕子)

○今日の俳句
まんまるい蕾もろとも花菜漬け/藤田裕子
まんまるい、黄色も少し見える蕾もろとも漬物に付け込むには、心意気がいる。日常生活が身の丈で表現された句。(高橋正子)

○3月ネット句会入賞発表/2013年3月11日
高橋信之・高橋正子選
【金賞】
★菜の花や煌めく海へ揺れ止まず/佃 康水
「煌めく海」と「揺れ止まず」は、納得する動的な関係。黄色い菜の花を揺する風は、海にも吹いて海を煌めかす。海と菜の花の色彩が鮮やかで、煌めきのある生き生きとした句である。(高橋正子)
▼その他の入賞作品:
http://blog.goo.ne.jp/kakan02d

○李(すもも)

[李/横浜日吉本町(左/花蕾:2013年3月12日・右/花:2010年3月18日)]

★雲裏の日のまぶしさよ花すもも/木下夕爾
★花すもも閑かに開く過疎の邑/逸考
★すもも食む午前の汗を流しをり/野沢節子
★すもも赤し妻の座去りし日の空に/荒川三枝
★李喰む心明るき方へ向き/平田節子

スモモ(酢桃、李、学名:Prunus salicina)はバラ科サクラ属の落葉小高木。また、その果実のこと。中国原産。花期は初春で白い花が咲く。花芽分化は7 - 8月頃。果実はスモモ系は6月下旬から8月中旬、プルーンの系統は9月頃収穫できる。果実は紅や黄色、果肉は淡黄色や紅色など品種によって異なる。代表的な品種としては「大石早生」、「ソルダム」、「サンタローザ」、「メスレー」、「太陽」など。比較的新しい品種では「紫峰」、「月光」、「貴陽」、「秋姫」、「いくみ」などがあり、これらの品種は従来種より糖度が高く、生食用に品種改良されている。葉が紅色のハリウッドは受粉樹に向く。スモモは自分の花粉では結実しにくい自家不和合性なのでほとんどの品種で受粉樹が必要である。日本での主産地は山梨県など。


◇生活する花たち「シナマンサク・マンサク・ハヤザキマンサク」(東大・小石川植物園)

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3月11日(月)

2013-03-11 21:05:08 | Weblog
★蕎麦に摺る山葵のみどり春浅し   正子
一人ずつ、薬味に生の山葵を出す、老舗のお蕎麦屋さんを思いました。春の山葵は、花も茎も全てが美味しいとか。卓の蕎麦を楽しみに、瑞々しい山葵を擦れば、つんと香るみどり色。浅春の希望に満ちた、貴い瞬間です。(川名ますみ)

○今日の俳句
水温む男の汲みしバケツあり/川名ますみ
男が汲んだバケツは、頼もしい男の腕でなみなみと汲んだ水がはいっているバケツ。この水を見ていると、やわらかで、光がまじり、「水温む」を実感させてくれる。あかるい心境が詠まれて、読み手にも明るさが与えられる。(高橋正子)

○土筆

[土筆/横浜日吉本町]            [土筆/横浜・四季の森公園]

★土筆煮て飯くふ夜の台所/正岡子規
★土筆摘む野は照りながら山の雨/嶋田青峰
★土筆野やよろこぶ母につみあます/長谷川かな女
★子のたちしあとの淋しさ土筆摘む/杉田久女
★土筆伸ぶ白毫寺道は遠いれど/水原秋桜子
★白紙に土筆の花粉うすみどり/後藤夜半
★土ふかき音もたつなる 土筆摘む/皆吉爽雨
★まま事の飯もおさいも土筆かな/星野立子
★土筆なつかし一銭玉の生きゐし日/加藤楸邨
★山姥の目敏く土筆見つけたり/沢木欣一
★土筆摘む強腰にしてひとりもの/青柳志解樹

 ツクシは、正しくは「杉菜(すぎな)」の胞子茎(ほうしけい)というもので、「付子」とも書く。
 スギナ(杉菜、学名:Equisetum arvense)は シダ植物門トクサ綱トクサ目トクサ科トクサ属の植物の一種。日本のトクサ類では最も小柄である。浅い地下に地下茎を伸ばしてよく繁茂する。生育には湿気の多い土壌が適しているが、畑地にも生え、難防除雑草である。
 春にツクシ(土筆)と呼ばれる胞子茎(または胞子穂、胞子体)を出し、胞子を放出する。薄茶色で、「袴(はかま)」と呼ばれる茶色で輪状の葉が茎を取り巻いている。丈は10-15cm程度。
 ツクシ成長後に、それとは全く外見の異なる栄養茎を伸ばす。栄養茎は茎と葉からなり、光合成を行う。鮮やかな緑色で丈は10-40cm程度。主軸の節ごとに関節のある緑色の棒状の葉を輪生させる。上の節ほどその葉が短いのが、全体を見るとスギの樹形に似て見える。なお、ツクシの穂を放置すると、緑色を帯びたほこりの様なものがたくさん出て来る。これが胞子である。顕微鏡下で見ると、胞子は球形で、2本の紐(4本に見えるが実際は2本)が1ヵ所から四方に伸びている。これを弾糸という。この弾糸は湿ると胞子に巻き付き、乾燥すると伸びる。この動きによって胞子の散布に預かる。顕微鏡下で観察しながら、そっと息を吹きかけると、瞬時にその形が変化するのをみることが出来る。また、「ツクシ」は春の季語である。


◇生活する花たち「福寿草・節分草・榛の花」(東京白金台・自然教育園)
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3月10日(日)

2013-03-10 22:12:15 | Weblog
★芽柳のるると色燃ゆ向こう岸   正子
「るると色燃ゆ」に柳の芽吹きのみずみずしい色が目に見えるようです。対岸をほんのりと彩るように芽吹く柳、春のやさしい表情に心弾みます。 (多田有花)

○今日の俳句
春の雪正午の鐘の音をつつむ/多田有花
春の雪はやわらかいものであるが、それが「物」を包むのではなく、「(鐘の)音」を包むところに、この句のユニークさがある。春の雪の降るなかでは、正午の鐘の音も詩情をもって聞き届けられる。(高橋正子)

○早咲き桜

[早咲き桜/横浜日吉本町(2013年3月9日)]

○3月ネット句会開催。今月から、行事に合わせた句会ではなく、第2日曜日開催の月例ネット句会とする。
○午前中、5丁目に花の写真を撮りにゆく。一挙に春の花が開いた。辛夷、早咲き桜、馬酔木、さんしゅゆ、花にら、ミモザ、木瓜、やぶ椿、菫など。昨日の気温は初夏なみという。午後3時ごろ買い物に出たが、黄砂で向こうの信号から先が見えないほど。春の嵐が吹きまくる。


◇生活する花たち「桃の花蕾・藪椿・梅」(横浜日吉本町)
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3月9日(土)

2013-03-09 22:09:06 | Weblog
★受験子の髪ふっくらと切り揃う   正子
受験子に寄せる、慈しみある母のお気持ちがしみじみと伝わってまいります。中七下五にそのことを感じます。 (小川和子)

○今日の俳句
切りてなお椿一枝にあるちから/小川和子
椿の枝を一枝切る。もちろん花をつけてである。切り取った枝であるのに、却って椿の花が生き生きとしてくる。「枝のちから」がそうさせる。(高橋正子)

○沈丁花

[沈丁花/横浜日吉本町]

★沈丁の四五花はじけてひらきけり/中村草田男
★沈丁やをんなにはある憂鬱日/三橋鷹女
★にはとりの置去り卵沈丁花/皆川盤水
★沈丁の風にころがる鉋屑/高橋将夫
★風下のベンチまた空く沈丁花/木暮陶句郎
★ポストヘの道沈丁の香にも寄り/藤田宏
★沈丁や気おくれしつつ案内乞ふ/星野立子

 日本に栽培されているものは中国原産の常緑灌木で、高さい・5メートルに達し、生垣や庭先に植えられたものが多い。花は内面部が白く、外面が紫がかった桃色で、香気が強い。早春まだうそ寒い頃、または淡雪の下、夜気にこの花が匂うのは印象深い。
赤紫色の蕾が弾けると、内側の白い部分が表れて好対照をなす。うそ寒いころの、その香気が好きなために植えられる花であるかもしれない。砥部の庭にも門脇に一本あった。冷たい空気とともに吸うその香りは、肺深く入りこんで、今年も卒業や旅立ちの季節が来たなと思う。田舎の家の庭先にもよく植えられて、子供の間でも沈丁花が咲いたと話題になった。「じんちょうげ」というあの花くらいの重さの音が今も耳に残っている。

★沈丁の香の澄む中に新聞取る/高橋正子
★雪解けの雪が氷れる沈丁花/高橋正子

 ジンチョウゲ(沈丁花)とは、ジンチョウゲ科ジンチョウゲ属の常緑低木。チンチョウゲとも言われる。漢名:瑞香、別名:輪丁花。 原産地は中国南部で、日本では室町時代頃にはすでに栽培されていたとされる。日本にある木は、ほとんどが雄株で雌株はほとんど見られない。挿し木で増やす。赤く丸い果実をつけるが、有毒である。花の煎じ汁は、歯痛・口内炎などの民間薬として使われる。
 2月末ないし3月に花を咲かせることから、春の季語としてよく歌われる。つぼみは濃紅色であるが、開いた花は淡紅色でおしべは黄色、強い芳香を放つ。枝の先に20ほどの小さな花が手毬状に固まってつく。花を囲むように葉が放射状につく。葉は月桂樹の葉に似ている。
 沈丁花という名前は、香木の沈香のような良い匂いがあり、丁子(ちょうじ、クローブ)のような花をつける木、という意味でつけられた。2月23日の誕生花。学名の「Daphne odora」の「Daphne」はギリシア神話の女神ダフネにちなむ。「odora」は芳香があることを意味する。花言葉は「栄光」「不死」「不滅」「歓楽」「永遠」。


◇生活する花たち「紅梅・赤花満作・山茱萸(さんしゅゆ)」(横浜・四季の森公園)
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3月8日(金)

2013-03-08 22:00:53 | Weblog
★海に向き伊豆の椿の紅きなり   正子
伊豆半島は海に向かって開いています。その伊豆に咲く紅き椿は海の広がりと相俟ってきれいなことでしょう。 (高橋秀之)

○今日の俳句
水鳥の羽ばたきの音春空へ/高橋秀之
冬の間も生きいきと暮らしていた水鳥が、北へ帰る日も近いのか、羽を広げ羽ばたきの音をさせる。春空へ向けて力強い羽ばたきである。(高橋正子)

○グランサム椿

[グランサム椿/東大・小石川植物園]
 
  小石川植物園二句
★香港の気風にみちて白椿/高橋正子
★了りつつ蕊の黄ゆたかな白椿/高橋正子

グランサム椿(グランサムツバキ、学名:Camellia granthamiana)はツバキ科ツバキ属の常緑小高木である。原産地は香港の九竜半島である。中国名を「大苞白山茶」という。日本へは昭和時代の中期に渡来した。樹高は3~8メートルくらいである。枝を疎らにつける。葉は楕円形で、互い違いに生える(互生)。葉の縁にはぎざぎざ(鋸歯)がある。葉の質は厚くて光沢があり、葉脈の部分がへこむ。開花時期は11~2月である。花の色は白く、花径が10~15センチくらいあり大輪である。茶(チャ)の花と似た感じで、黄色い雄しべは500本以上ある。花柱(雌しべ)の先は5つに裂ける。花びら(花弁)は7~10枚くらいで、咲き進むと花びらの先は反り返る。1955年に香港で見され、名は当時の香港総督アレキサンダー・グランサム (Alexander Grantham) 総督に由来。

○先月、2月14日の小石川植物園。いろんな万作が咲きみちていた。榛の花も咲いていた。万作の花を見ながら歩くと、榛の木へ至る道すがら、黄色い蕊の大きな白い花が目に入った。深緑の葉が、葉脈の筋が白い花をより魅力的にしている。なんの花だろう。ヨーロッパの花に違いない。近づくと「グランサム椿」と名札がある。決して椿の花の印象ではない。椿のように花が半開きではないのだから。おおらかに堂々と。威風堂々と。2月なのに、もう終わりかけている。そのはずで、花期は11月から2月とのことだから。この日、忽然と目の前に現れたグランサム椿の花に魅了され、一瞬は、「一体私はどこにいるんだろう。」とさえ思った。発見されたのは1955年でまだ新しい。

○昨日、確定申告用の書式を国税庁のホームページからダウンロードして確定申告書を書き上げた。今年は、なんなく書けて、今日郵送した。この書式がダウンロードできるようになって、随分楽になった。所得税の確定申告に必要な書類は何と何であるか、初めに知って、書類ごとに分けて保管していればよいのだが、このことに気付いたのは、電子申告ができるようになってから。それまでは、やたらと神経を使って申告書を書いていた。

○日経のおとなの「OFF」4月号鉄道特集を買ってきてもらった。0系新幹線がひよこのように、かわいらしく、懐かしいこと。東海道新幹線が時速200キロで走ったのは、東京オリンピックの年だったか。あれから40数年、50年近い。

◇生活する花たち「シナマンサク・マンサク・ハヤザキマンサク」(東大・小石川植物園)
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3月7日(木)

2013-03-07 04:36:00 | Weblog
★春の雪解けし水田に水光る   正子
私は山国の棚田を想像した。待ちに待った春の到来だが春の雪が積もった。それでも真冬とは違い解けるのも早い。雪解け水が棚田に広がる。春の光がその水田に跳ね返りきらきらとまばゆく輝く。心躍る春の明るい風景である。 (古田敬二)

○今日の俳句
菜花摘む昼餉のパスタに足るほどに/古田 敬二
一人か二人の昼餉であろう。少しあれば足りる菜花である。茹でられて色鮮やかな菜花は春の彩りとして楽しめる。「足るほど」の慎ましさがいい。(高橋正子)

○白藪椿

[白藪椿/東大・小石川植物園]

★白椿昨日の旅の遥かなる/中村汀女
★咲き出でて汝こそ真処女白椿/林翔
★白藪椿空の高さに花の白/高橋正子
★藪椿も白藪椿も大樹なり/高橋正子

白藪椿(シロヤブツバキ、学名:Camellia japonica form. leucantha)は、ツバキ科ツバキ属の常緑高木である。分類上は藪椿(ヤブツバキ)の型の1つとされている。本州から九州にかけて分布し、山地に生える。樹高は5~10メートルくらいである。樹皮は灰白色を帯びる。葉は細長い楕円形で、互い違いに生える(互生)。葉の先は尖り縁には細かいぎざぎざ(鋸歯)がある。葉の質は硬く、表面は濃い緑色で艶がある。開花時期は2~4月くらいである。花の色は白く、花弁は5枚である。平開はせずに半開きのものも多い。

○小石川植物園/2008年4月19日のオフ句会報より
 今回の吟行地は、文京区白山にある「小石川植物園(東京大学大学院理学系研究科附属植物園)」です。6万平米もの広大な土地に、桜の広場、薬草園、広葉樹の森、針葉樹の森、日本庭園などがあり、傾斜地、泉水地などの地形が自然のままに、活かされています。そして、学術的にも由緒ある植物や養生所時代の井戸などの遺構が残されており、日本最古の植物園としての趣も豊かです。
 前日は強い雨で、今朝もやや冷たく強い風が残っていましたが、園内は、葉桜のなかを散り抜ける残花、ちょうど満開の八重桜、タンポポやすみれなどなど、四月らしい華やかな色彩に溢れていました。散策にはたっぷり2時間はかかろうかという広さ。脇道に入ると山を行くような奥深さがあり、都会の真中にいるのを忘れてしまうほどです。思い思いに吟行を楽しんだのち、11時前には正門に集まり、七句投句をしていただきました。今回は、宇都宮の笠間淳子さんと、大阪からは高橋秀之さんがご参加くださいましたので、11名のにぎやかな句会となりました。ご体調のすぐれないところをご主人様とおいで下さった大給圭泉さんは、ご投句と写真撮影までをご参加くださいました。
 句会場は、信之先生が見つけて下さった茗荷谷駅前のイタリア料理店「ラ・クローチェ」で、カジュアルな雰囲気とおいしいお料理が魅力的なお店です。みのるさんのご発声で乾杯のあと、量り売りのワインを楽しみながら大いに盛り上がりました。お食事と会話の合間にそれぞれ選句をし、正子先生の選の発表がありました。その後、すぐ近くの「ジョナサン」に場所を移し、臼井愛代さんにより、それぞれの選が発表され、各句に先生やみなさんからのコメントが寄せられました。3時半ごろ散会。茗荷谷の駅よりそれぞれ家路につきました。
★どの藤も花咲きはじむ時が来る/信之
★たんぽぽの草の平らに散らばりぬ/正子

○小石川植物園/2008年5月5日の日記より
 全国こども俳句協会の設立総会が、江東区の芭蕉記念館で9時半より行われ、設立総会小石川植物園を吟行。藤の花は大方終わり。ハンカチの木の花(苞)が、散り始めていた。散るさまは、空からハンカチが振られて落ちてくるよう。一枚ひろってみると、やわらかな白い葉っぱのような苞である。そばにガク空木の白い花が満開。むんむんとした匂いを放つ。ジャーマンアイリスの豊満な花がよく咲いている。日本庭園は黄菖蒲が花時。ニワトコの花は終わり、青いちいさな実がついていた。
 植物園の入園券を売るお店で、山と渓谷社のはっぱの本を買う。お店と言っても品物はほとんどないので、袋にはいった人形焼を申し訳に買って、はっぱの本に添えて、秀之さんにお子さんへのお土産にしてもらった。
 追記:句会でニュートンの林檎の詠んだ句があり、話がそれに及ぶ。何故ニュートンの林檎の木が小石川植物園にあるのかと。答え「それは、植物園が東大のものだからですよ。元の木は枯れて、その子孫がこの植物園にあるわけですよ。買ったんだよ。」ちなみに、ハンカチの木は中国からの贈り物。
★ハンカチの花の降り来る立夏の空
★銀杏大樹青葉の青という力
★盛り上がる新緑空へまでゆかず

○小石川植物園/高橋正子の俳句日記より
先日2月14日に小石川植物園に行った。園内を巡り、売店で柚子茶を飲んでもう帰ろうかと思ったところ植物園で作業をしている男性に出会って立ち話を少々した。一旦別れ、歩いているとまた出会って「下にユキワリイチゲの蕾がちょうど出たところだよ。神社の下の小さい池がある辺り。」と東北訛りで教えてくれた。神社は太郎神社、小さな沼池は榛の木が生えているところと見当がついた。危うく見逃すところだったが、言われた所に行くと、榛の木の生えている少し上に名札が立ててあるのに気付いた。近づくと、紫がかった三つ葉の葉に似た叢に小さな白い蕾が見える。名札がなければ、発見は難しいところだった。一輪だけが咲きかけていた。白い小さな蕾が葉に浮くように、どれも向こうを向くか横向きであった。沼に足を滑らせないように気をつけて、写真を撮った。
★雪割一華へ浅春の陽が燦々と/高橋信之
★榛の木の根方一華の蕾みたり/高橋正子

▼小石川植物園
http://www.bg.s.u-tokyo.ac.jp/koishikawa/


◇生活する花たち「福寿草・節分草・榛の花」(東京白金台・自然教育園)
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3月6日(水)

2013-03-06 03:25:02 | Weblog
★枯れしもの沈め春水透き通る   正子
春は降雨が多くなり、河川も水かさを増し、それが冬の間に枯葉を沈めたせせらぎを流れ、その上に明るい日差しが照ると、冬涸れの後だけに、豊かに勢いづく感じがすます。 (小口 泰與)

○今日の俳句
まんさくや浅間南面斑なり/小口 泰與
浅間山の南面は雪が解け始めたところもあるのだろう、斑になっている。その山を背景に春を先駆けるまんさくが咲いている。色彩的にも美しい早春の景色である。(高橋正子)

○椿

[椿/横浜日吉本町]

★赤門を入れば椿の林かな/正岡子規
★飯食へばまぶたに重き椿かな/夏目漱石
★十本に十色の椿わが狭庭/稲畑汀子
★咲き出でて汝こそ真処女白椿/林翔
★虚子の忌の風たをやかな椿山/皆川盤水
★侘助や波郷破顔の大写真/水原春郎
★またひとつ鉦に落ちけり藪椿/言水
★一日を陽を見ぬ谷戸の藪椿 鈴木卓
★藪椿かがやく電車停まるたび/小島みつ代
★城垣の石の番号藪椿/大塚禎子
★侘助や茶釜に湯気の立っており/多田有花
★慎ましき白き椿の初あらし/高橋信之

★侘助へ寺の障子の真白かり/高橋正子
★日表も葉影も侘助うす紅/高橋正子
★庭の樹の間に咲けり初あらし/高橋正子

 ツバキ(椿)は、ツバキ科ツバキ属の植物、学名Camellia japonicaであり、日本原産の常緑樹。野生種の標準和名はヤブツバキ。国内外でヤブツバキや近縁のユキツバキから作り出された数々の園芸品種、ワビスケ、中国・ベトナム産の原種や園芸品種などを総称的に「椿」と呼ぶが、同じツバキ属であってもサザンカを椿と呼ぶことはあまりない。照葉樹林の代表的な樹木。花期は冬から春にかけてにまたがり、早咲きのものは冬さなかに咲く。「花椿」は春の季語であるが、「寒椿」「冬椿」は冬の季語。海柘榴とも表記する。花が美しく利用価値も高いので万葉集の頃からよく知られたが、特に近世に茶花として好まれ多くの園芸品種が作られた。美術や音楽の作品にもしばしば取り上げられている。
 日本のツバキはヤブツバキ、ユキツバキ、ワビスケ。
ヤブツバキ(原種)は、南西諸島から青森県夏泊半島まで分布している。これはツバキ属の自生地の北限である。西日本にはほぼ全域に分布しているが、東日本では温暖な地域に自生している。
 ユキツバキ(雪椿)は、花糸が黄色 ユキツバキの学名はCamellia rusticana (シノニム:Camellia japonica var. decumbens/Camellia japonica subsp. rusticana)。上記のヤブツバキとは別種、またはヤブツバキの豪雪地帯適応型変種、あるいは亜種という見解があり、ヤブツバキに比べ、枝がしなやか、花弁が水平に開く、等の特徴がある。花の変異が多く八重咲きの品種改良に大きく貢献した。別名サルイワツバキ。ヤブツバキとの交雑系統を「ユキバタツバキ」と呼ぶ。
 ワビスケ(侘助)は、中国産種に由来すると推測される「太郎冠者(たろうかじゃ)」という品種から派生したもの。「太郎冠者」(およびワビスケの複数の品種)では子房に毛があり、これは中国産種から受け継いだ形質と推測される。一般のツバキに比べて花は小型で、猪口咲きになるものが多い。葯が退化変形して花粉を生ぜず、また結実しにくい。なおヤブツバキの系統にも葯が退化変形して花粉を付けないものがあるが、これらは侘芯(わびしん)ツバキとしてワビスケとは区別される。 花色は紅色~濃桃色~淡桃色(およびそれらにウイルス性の白斑が入ったもの)が主であり、ほかの日本のツバキには見られないやや紫がかった色調を呈するものも多い。少数ながら白花や絞り、紅地に白覆輪の品種(湊晨侘助)などもある。 名前の由来としては諸説あり、豊臣秀吉朝鮮出兵の折、持ち帰ってきた人物の名であるとした説。茶人・千利休の下僕で、この花を育てた人の名とする説。「侘数奇(わびすき)」に由来するという説。茶人・笠原侘助が好んだことに由来する説などがある。


◇生活する花たち「桃の花蕾・藪椿・梅」(横浜日吉本町)
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3月5日(火)

2013-03-05 14:25:43 | Weblog
★身を固く春雪吹くを帰り来る   正子
一度暖かくなってから寒の戻りによる、春の雪は殊更寒く感じます。ましてや吹雪ともなれば、尚更です。戻り寒の身に沁みる情景が「身を固く」との措辞により、巧みに表現され大変共感致します。(桑本栄太郎)

○今日の俳句
春潮や水面輝きふくらみぬ/桑本 栄太郎
瀬戸内海の春潮は、水面がゆったりと膨らんで寄せてくる感じがするのは事実。このやわらかな膨らみに日の輝きが加わると「春潮」も実にゆたかな潮となる。(高橋正子)

○ノースポール

[ノースポール/横浜日吉本町]

★ノースポールの真白き花に四月来ぬ/高橋正子

 ノースポール(North Pole、学名:Leucsnthrmum paludosum Syn. Chrysanthemum paludosum)は、キク科 フランスギク属の半耐寒性多年草である。しかし、高温多湿に極端に弱いため、国内では一年草として扱われている。「ノースポール」はサカタのタネの商品名であるが、種苗登録などはされていないため、一般名として定着している。旧学名またはシノニムの「クリサンセマム・パルドーサム」と表記されることもある。12月から翌6月にかけ、白い花を咲かせる。名の由来は、花付がよく株全体を真っ白に覆うように見えるところが北極を連想させることによる。
 原産地はアフリカのアルジェリア周辺ないしはヨーロッパ。地中海沿岸に広く分布している。日本へは1960年代に入って輸入された。 草丈は15cm-25cmほど。まだ寒い12月ごろから初夏までの長期間、マーガレットによく似た白い花を付け、矮性でよく分枝し、芯の管状花は黄色。今日では冬のガーデニングにはなくてはならない存在にまでなった。
比較的強健で、こぼれ種でもよく増え、雑草混じりの場所などでもよく育つ。しかし、市販品のタネから育てるときは、タネの数が少ないので、浅鉢にまき、覆土しないか、タネが隠れる程度に覆土して、鉢底から吸水させる方がよい。蒔き時は東京付近で9月中旬から10月上旬、日のよく当たる場所を好み、乾き気味に管理する。過湿は根腐れの原因となる。日本では6月頃までよく咲くが、暑くなると急速に枯れてしまう。
 パンジーやヴィオラなどとともに、春先から初夏までの庭を彩る主役をつとめる。とくに、性質のよく似た植物で黄花のクリサンセマム・ムルチコーレと一緒に植えると、コントラストが美しい。(Wikipedia より)

○「金蔵寺の裏山に咲きかけていたのだが、ヒアシンスだろうが、それにしては咲くのがちょっと早いが、この写真を見てくれ。」を信之先生に言われた。炊事の途中なので話だけ聞いて、「それはヒアシンスです。裏山の階段の始まるところでしょう。」と自信をもって答えた。濡れた手を拭いて写真を見ると、確かに開きかけたヒアシンス。四国から横浜に引っ越して6年半。普段歩いているところの植物は、ほぼ頭に入った。このヒアシンスある場所も覚えている。そのほかにも、ゆきのしたのある場所、木苺のある場所、ミモザのある家、辛夷の大きな木がある家なども頭に入っている。引っ越した当初は、こういった植物が記憶に、あるいは心にないので、毎日の暮らしが心もとない感じであった。子ども時代に野山や近所を駆けまわって遊んだときも、花や木の実のあるところをいつの間にか覚えていた。故郷の景色はそのようにして形成された。6年半の間にようやく今住むところの景色が心に形成されようとしている。近所を随分歩き回ったので。


◇生活する花たち「紅梅・赤花満作・山茱萸(さんしゅゆ)」(横浜・四季の森公園)

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3月4日(月)

2013-03-04 14:28:03 | Weblog

★花菜の束一つが開き売られたり   正子
売られている花菜はふっくらとした蕾なのでしょう。その中の一つは開いている、さ緑の豊かな葉の中に淡い黄の菜の花の蕾と花、いろいろな花の中でも一番に自然の春を感じられたことと思います。(黒谷光子)

○今日の俳句
春の川村の真中を光りつつ/黒谷 光子
のどかなで平和な村。村の真ん中を緩やかに光りながら流れる春の川は、皆の生活の中に愛される川。「村の真中」であるのがいい。(高橋正子)

○木瓜の花

[木瓜の花蕾/横浜日吉本町(2013年2月13日)]_[木瓜の花/横浜日吉本町(2011年3月27日)]

★初旅や木瓜もうれしき物の数 子規
★黄いろなる真赤なるこの木瓜の雨 虚子
★岨道を牛の高荷や木瓜の花 鬼城
★一と叢の木瓜さきいでし葎かな 蛇笏
★花ふゝむ木瓜にひかりて雨ほそし 悌二郎
★日のぬくみ吸うて真つ赤に木瓜の花 淡路女
★木瓜の朱いづこにかあり書を読む 青邨
★浮雲の影あまた過ぎ木瓜ひらく 秋櫻子
★つれづれに夕餉待たるる木瓜の花 草城
★木瓜紅く田舎の午後のつづくなる 多佳子
★木瓜咲くや漱石拙を守るべく/夏目漱石
★草木瓜に日はあたたかし道の縁/高橋正子

 中国原産の落葉低木。日本には江戸中期に渡来したといわれる。平安時代の説も。四月ごろ葉に先だって花を開く。深紅色のものを緋木瓜、白色のものを白木瓜、紅白雑色のものを更紗木瓜という。実は薬用。実が瓜に似ており、木になる瓜で「木瓜(もけ)」とよばれたものが「ぼけ」に転訛(てんか)したとも、「木瓜(ぼっくわ)」から「ぼけ」に転訛したも言われる。
 木瓜は、棘がある。四国砥部の我が家の門扉近くには緋木瓜が植わっていた。その隣に蝋梅、その隣に白山吹、白椿と並んでアプローチを飾っていた。日当たりがよかったので、正月ころからぼつぼつ咲き始めた。子供のころは、紅白がまだらになった更紗木瓜と緋色より薄い紅色の木瓜をよく見た。更紗木瓜については、なんでこのような色具合にといつも思っていたが、そういう咲き方するもののようだ。今はどうか知らないが、春先の花展で、さんしゅゆ、万作の花と並んでよく使われた。秋にひょっこり花梨を少し小さくした、枝に似あわず大きな実がついていることがあった。花梨もバラ科なので樹高は違うが木瓜と似たところがある。

○きのうは雛祭だが、わが家は四国から引っ越して来てからもずっと月遅れで雛を飾っている。本当に桃の花が咲くときに雛を飾る予定。でも、夕餉はちらしずしと菜の花のお吸い物。夕飯を済ませてから、日吉の東急や商店街に買い物に。花冠発送用の封筒、ロルバーンの手帖を文具店で、東急の中の美容室で髪を切る。美容室の待ち時間に「入門 近代日本の思想史」(田恂子著)を立ち読み。解りやすくて面白いので、買うことにした。文庫本ながら1400円。高いがしかたあるまい。このごろは、この手の本は女性の書いたものが、丁寧でわかりやすい。髪を買った後、林フルーツで雛祭のフルーツケーキを買う。8時近いので割引となって4個で1145円。

◇生活する花たち「シナマンサク・マンサク・ハヤザキマンサク」(東大・小石川植物園)

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3月3日(日)/雛祭

2013-03-03 06:22:14 | Weblog
★雛菓子の届きてからのうららかさ   正子
春まだ寒い時季の雛祭りを前に、一箱の雛菓子が届けられた。彩とりどりの雛あられを小さな高杯に盛るのも愉しい。菱餅も飾ろうか。たちまちうきうきと気分が華やいできます。 (河野啓一)

○今日の俳句
一枝の桃を活けたりひな祭り/河野啓一
一枝の桃の花で、ひな祭りがずいぶん円かになる。あかるく、あたたかく、かわいらしい桃の花は、やはり、雛の節句に相応しい。(高橋正子)

○桃の花

[桃の花/横浜日吉本町]

★故郷に桃咲く家や知らぬ人/正岡子規
★百姓の娘うつくし桃の花/正岡子規
★桃咲くや古き都の子守唄/正岡子規
★雛の影桃の影壁に重なりぬ/正岡子規

★両の手に桃とさくらや草の餅/松尾芭蕉
★葛飾や桃の籬も水田べり/水原秋桜子
★風吹かず桃と蒸されて桃は八重/細見綾子
★桃咲いて五右衛門風呂の湯気濛々/川崎展宏
★金貸してすこし日の経つ桃の花/長谷川双魚

 モモ(桃、学名は Amygdalus persica L.で[1][2]、Prunus persica (L.) Batsch はシノニムとなっている[3]。)はバラ科モモ属の落葉小高木。また、その果実のこと。春には五弁または多重弁の花を咲かせ、夏には水分が多く甘い球形の果実を実らせる。中国原産。食用・観賞用として世界各地で栽培されている。
 3月下旬から4月上旬頃に薄桃色の花をつける。「桃の花」は春の季語。桃が咲き始める時期は七十二候において、中国では桃始華、日本は桃始笑と呼ばれ、それぞれ啓蟄(驚蟄)の初候、次候にあたる。淡い紅色であるものが多いが、白色から濃紅色まで様々な色のものがある。五弁または多重弁で、多くの雄しべを持つ。花柄は非常に短く、枝に直接着生しているように見える。観賞用の品種(花桃)は源平桃(げんぺいもも)・枝垂れ桃(しだれもも)など。庭木として、あるいは華道で切り花として用いられる。
 葉は花よりやや遅れて茂る。幅5cm、長さ15cm程度の細長い形で互生し、縁は粗い鋸歯状。湯に入れた桃葉湯は、あせもなど皮膚の炎症に効くとされる。ただし、乾燥していない葉は青酸化合物を含むので換気に十分注意しなければならない。
 7月 - 8月に実る。「桃の実」は秋の季語。球形で縦に割れているのが特徴的。果実は赤みがかった白色の薄い皮に包まれている。果肉は水分を多く含んで柔らかい。水分や糖分、カリウムなどを多く含んでいる。栽培中、病害虫に侵されやすい果物であるため、袋をかけて保護しなければならない手間の掛かる作物である。また、痛みやすく収穫後すぐに軟らかくなるため、賞味期間も短い。生食する他、ジュース(ネクター)や、シロップ漬けにした缶詰も良く見られる。

◇生活する花たち「福寿草・節分草・榛の花」(東京白金台・自然教育園)

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3月2日(土)

2013-03-02 06:24:39 | Weblog
★手渡されながら花桃散りいたり   正子
手渡されるそばから、はらはらと散る花桃。咲き満ちた花桃の一枝から散りこぼれる柔らかな花びらの美しさが思われます。手から手への温もりが伝わる、春の明るくあたたかな情景です。(藤田洋子)

○今日の俳句
桃の花馴染みの声の店先に/藤田洋子
桃の花が店に活けてある。店先に馴染みの声が聞こえて、「あら」と思う。桃の花には、気取らない、明るい雰囲気があるので、「馴染みの声の店先に」言ってみるのだ。日常の一こま。(高橋正子)

○ヒアシンス(風信子)

[ヒアシンスの花/横浜日吉本町]

★一筋の縄ひきてありヒヤシンス/高浜虚子
★敷く雪の中に春置くヒヤシンス/水原秋桜子
★銀河系のとある酒場のヒヤシンス/橋石
★誰もゐなくて満開の風信子/如月美樹

★ヒアシンス白水仙とあわせ活け/高橋正子
★ヒアシンスの香り水より立つごとし/高橋正子

ヒアシンスともいう。小アジア原産。草丈20センチほど。色は白・黄・桃色・紫紺・赤など。香りが高い。ヒヤシンスの名は、ギリシャ神話の美青年ヒュアキントスに由来する。彼は愛する医学の神アポロンと一緒に円盤投げに興じていた。その楽しそうな様子を見ていた西風の神ゼピュロスは、やきもちを焼いて、意地悪な風を起こした。その風によってアポロンが投げた円盤の軌道が変わり、ヒュアキントスの額を直撃してしまった。アポロンは医学の神の力をもって懸命に治療するが、その甲斐なくヒュアキントスは大量の血を流して死んでしまった。ヒヤシンスはこの時に流れた大量の血から生まれたとされる。
ヒヤシンスは花茎がまっすぐで意外と頼もしい。しかし優艶。こんなところからか、特に青い花を見ていると美青年が髣髴される。
ヒヤシンスを植えたところは踏まれないように縄を一筋張って置く。縄を張るなんていかにも昭和らしい。今日2月29日は朝から粉雪が舞い、2センチほど積もっている。春の雪が敷く花壇にヒヤシンスが咲けば、そこだけ「春」が置かれたようになる。虚子、秋桜子と対照的な句だが、ヒヤシンスの姿をよく表わしている。わが家では、年末水栽培のヒヤシンスを買い、早も咲いていたのだが、花の匂いを楽しんだ。水栽培で子どもたちでも楽しめる。

以上の文は、2月が29日あった最近の年の文。つまり、2012年。
今年も年が明けてヒアシンスの鉢植を近所の花屋で買って楽しんだ。薄い紫を選んだ。一鉢に三球ある。花は全部で六本咲いた。一球から二本ずつ花が咲いた。二本目が立ちあがるころ最初の花の茎が斜めに倒れるので切り取って花瓶やコップに挿した。ヒアシンスが一番似合ったのはキッチン。薄紫ばかりで単調なので散歩の途中、山裾の捨て球根から育った蕾の水仙を二本摘んで来て一緒に挿して置いたら、とても清楚なまっしろな水仙が開いた。それが、またヒアシンスと特別よく似合った。


◇生活する花たち「桃の花蕾・藪椿・梅」(横浜日吉本町)

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする