乃木坂46、「君の名は希望」。
この曲を作ったのは誰か?
この質問は簡単に答えられるように思える。
今年3月13日にリリースされたCDには、「作詞:秋元康、作曲:杉山勝彦、編曲:杉山勝彦・有木竜郎」と書かれている。
作曲家、杉山勝彦氏が曲を提供し、秋元康氏がそれに詞をつけて、この珠玉のナンバーが誕生した、
そう考えるのが普通である。
しかし、B.L.T.6月号(東京ニュース通信社)の「完全在宅主義」というコーナーに掲載された、Base Ball Bear 小出祐介氏と杉山勝彦氏の対談を読むと、話はそれほど単純なものでないことが分かってくる。
杉山氏が作曲した乃木坂46の二つの曲、「制服のマネキン」と「君の名は希望」に感銘を受けた小出氏が、
ついに秋元康さんが秘蔵っ子の杉山さんを投入してきたんじゃないか
と問いかけると、杉山氏は
秋元さんにはお会いしたことはないんですよ
と「秘蔵っ子」を否定している。そして、自分の曲作りについて、
歌詞を先に書いてメロを乗せる今のスタイルが出来ていって。曲を提出する時は、歌詞もフルサイズで入ったものを出します
と述べている。
実際、「君の名は希望」にも、最初に提出した仮歌入りデモバージョンが存在して、この対談の場で、小出氏は杉山氏が持参したそのデモ曲を聴いている。
さらに、杉山氏は、曲を書くときに、
どういうシンガーが、どういう世界観で、誰に向かって、どういうタイミングで、どういう瞬間を切り取って、どういう角度から見て、どの感情をっていうことまで含めて明確に世界観を作るんです。
として、
曲よりも言葉が先にある
と繰り返し強調している。
この対談ではっきりしたことは、杉山氏は自身を、作曲家である以上に、作詞家であると思っていて、「世界観」とそれを表現する「言葉」こそが、楽曲のもっとも重要な部分だと認識していることである。
では、現在31歳の杉山勝彦氏がどのような「世界観」と「言葉」を紡ぎだしてきたのか、少し振り返ってみたい。
杉山氏がJポップスの世界で大きな注目を集めたのは、2010年8月25日にリリースされた、中島美嘉の「一番綺麗な私を」という曲である。
作詞、作曲、編曲すべてを一人で手掛けたこの歌は、女性の恋人への切ない想いを綴った詞を、ゆったりとしたテンポのメロディに載せて、中島美嘉の美しい声で歌い上げたバラード系のヒット曲である。
また、翌月の9月22日にリリースされた倖田來未の「好きで、好きで、好きで。」では、彼女の恋人へのストレートな想いの詞に、曲を提供、編曲は別の人物が担当しているが、やはりバラード系の曲を作っている。
しかし、杉山氏は2年後、私立恵比寿中学のメジャーデビュー曲「仮契約のシンデレラ」で、がらっと作風を変える。
この曲は、2012年5月5日にCDリリースされ、杉山氏が作詞、作曲、編曲のすべてを一人で担当しているが、ユーモラスで、随所にセリフの入った歌詞を、軽快でアップテンポなメロディに乗せた曲で、前山田健一のももいろクローバー「行くぜっ!怪盗少女」を彷彿させる仕上がりになっている。
この曲は評判を呼び、その成功をきっかけに、杉山氏はアイドルソングの世界に入って行く。
「完全在宅主義」での発言から推測すると、特定の「世界観」を背景に作り出された歌詞付きの楽曲で、AKB48の「コンペ」に参加、
採用される機会が増え、AKB48のCDに彼の名前が登場することになる。
2012年6月20日発売、前田敦子の2ndシングル「君は僕だ」に収録された「右肩」は、作詞:秋元康、作曲:杉山勝彦、編曲:杉山勝彦・森祐太。ピアノの旋律が印象的なバラードで、「孤独な心とその救済」という、後に続いていく重要なテーマが、恋人への想いと合わせて、あまり重くないタッチで描かれている。
さらに、8月15日リリース、AKB48の2ndアルバム「1830m」に収録された三つの曲に杉山勝彦氏の名前が見て取れる。
板野友美と柏木由紀の「僕たちは 今 話し合うべきなんだ」、特別選抜メンバーによる「やさしさの地図」は、二曲とも作詞:秋元康、作曲・編曲:杉山勝彦である。
そして、もう一曲、チームBの「ノーカン」で、杉山氏は重要な出会いを果たす。
有木竜郎氏である。
「ノーカン」は、作詞:秋元康、作曲:杉山勝彦のアップテンポで軽快なポップスだが、編曲を杉山氏と有木氏が担当している。
実は、この制作陣、「君の名は希望」とまったく同じである。
そして、アルバムの二週間後、8月29日リリース、AKB48の27th「ギンガムチェック」のCDに、「夢の河」という曲が登場する。
後に、前田敦子が卒業の際に歌ったことで有名になる、この名曲は、やはり、作詞:秋元康、作曲:杉山勝彦、編曲:杉山勝彦・有木竜郎であるが、
鳥肌が立つほど、「君の名は希望」と雰囲気が似ている。
印象的なピアノソロで曲が始まり、そこに高音の美しい歌声をかぶせて行く。
歌詞も、「人間の孤独とその救済」というテーマを切なく表現したもので、
メロディもゆっくりした完全なバラードではなく、ややアップテンポなノリの良さを加味している。
「君の名は希望」のひな形が、ここで誕生したと言っても良いのではないだろうか。
中島美嘉「一番綺麗な私を」で、恋人を想う切ない歌詞が印象的な、バラードの名手としてスタートした杉山氏が、
私立恵比寿中学「仮契約のシンデレラ」では、ティーンの少女が躍動する歌詞とアップテンポなメロディに覚醒、
さらにAKB48の曲で、有木氏と出会い、新しいバラードの旋律を手に入れていく。
そして、杉山氏は、いよいよ乃木坂にやってくる。
2012年12月19日リリース、乃木坂46の4th「制服のマネキン」は、作詞:秋元康、作曲:杉山勝彦、編曲:百石元。
アップテンポなパンチのあるメロディを提供して、「仮契約のシンデレラ」に通じる面を見せている。
しかし、次の5枚目シングルでは再び、杉山勝彦と有木竜郎のコンビが呼ばれ、
ピアノソロの後、生田絵梨花の美しい歌声で始まるミディアムバラードの名曲「君の名は希望」が誕生する。
フジテレビ「MUSIC FAIR」でのピアノ伴奏だけによる「君の名は希望」は、秋元氏本人からのも含めて、高い評価を受けたが、
「夢の河」でも、随所にピアノの音色が効果的に使われていて、
こういう楽曲テイストは、肩書きの中に「ピアニスト」が入っている現在26歳の有木竜郎氏の影響と考えるのが妥当ではないだろうか。
現代のポップスでは、編曲がもっとも影響力があり、中心イメージを決めることすらあるとも言われるが、
杉山氏と有木氏の若い二人の編曲コンビが、「君の名は希望」の美しいメロディラインに辿り着き、それを完成させたことになる。
また、歌詞についても、「右肩」と「夢の河」で取り上げられ、深められてきた「人間の孤独な心象風景とその救済」というテーマが、「君の名は希望」で、より明確な形で提示され、完成された「世界観」の中で表現されている。
特筆すべきは、前二作において、手探りで迷いがあった「救済」の方向性に、「孤独」を乗り越えて、「誰かを愛する」勇気を持つこと、そこにこそ「未来」があり、「希望」があるのだということを、力強く宣言して、正面から道を示したことである。
「孤独」の苦しさや儚さではなく、それを克服する「強さ」を、初めて歌い上げたことである。
歌詞においても、メロディにおいても、杉山氏が積み上げて来たものが、ついに最高点に達して、眩しい輝きを放った瞬間である。
そして、Base Ball Bearの現在28歳の小出祐介氏が、感銘を受けて、杉山氏が「完全在宅主義」に呼ばれることになった。
杉山氏、有木氏、小出氏。
「君の名は希望」誕生の周辺には、こういった音楽界の若き才能たちが何人も登場する。
そのこと自体が、明日への「希望」であり、未来を目指す明るい雰囲気こそが、「君の名は希望」の世界を生み出したのだと、思いたくなる。
さて、最後に、ひとつ疑問が残る。
「君の名は希望」で歌われている「人間の孤独な心象風景とその救済」というテーマを考え出したのは、誰なんだろうか?
「右肩」と「夢の河」でも扱われているこのテーマは、すべて作詞:秋元康、作曲:杉山勝彦という形で出されている。
「完全在宅主義」において、杉山氏は、「世界観」を厳密に設定して「言葉」を作り、その後に、メロディを乗せていくと強調している。
仮歌入りの「君の名は希望」デモバージョンも存在していて、小出氏はそれを聴いている。
しかし、作詞は秋元氏であり、杉山氏の名前が入っていない以上、彼が最初に考えた「言葉」が、歌詞に入っている可能性はない。
日本音楽著作権協会(JASRAC)の理事でもある秋元氏が、その辺をいい加減にする筈はない。
すると、秋元氏は、杉山氏の歌詞を一度、完全に壊して、一から歌詞を作ったというのが、理論的な結論となる。
そうだとすると、秋元氏は、杉山氏の提供した最初の「世界観」は、どうしたのだろうか。
歌詞だけではなく、オリジナルの「世界観」まで壊して、メロディだけを使って、新しい「世界観」を生み出したのだろうか。
だが、歌詞の表現する「世界観」とメロディラインが、これほど一致している曲で、ベースとなったテーマや「世界観」を一切無視して、新しい「世界観」を作り出すことが可能だろうか?
しかも、「夢の河」でも、まったく同じ制作陣が、「人間の孤独とその救済」という同じテーマを扱っているので、秋元氏は、歌詞の破壊と新規創造を二回も行ったことになる。
杉山氏の歌詞がワンフレーズも残っていないとしても、もし彼の考えたテーマや「世界観」を採用しているのならば、作詞者の欄に彼の名前を入れるべきではないだろうか。
なぜなら、すでにあるテーマや「世界観」を土台にして、歌詞を書くのと、一から「世界観」を作って、歌詞を書くのとは、まったく意味が違う。作詞者の欄に一人の名前しかないのであれば、それは、後者のケースだけを意味するべきで、前者のケースを含むべきではないと思う。
「君の名は希望」において、秋元氏は、杉山氏の「世界観」の上に、歌詞だけを全面書き換えしたのか、
それとも、
そのオリジナルな「世界観」まで壊して、一から、自分の「世界観」を作って、全く新しい歌詞を書いたのか。
この疑問を解明する方法は、二つある。
一つは、小出氏が聴いた、仮歌入りの「君の名は希望」デモバージョンを、公開してもらうことである。
そうすれば、杉山氏のオリジナルな「世界観」と秋元氏の「世界観」を比べることが出来る。
しかし、これが実現する見込みは薄そうだ。
では、もう一つの方法、秋元氏本人に、「君の名は希望」の作詞について語ってもらうしかない。
評判の高い、これほどの名曲なのだから、曲への想いや制作秘話をファンに話すのは、むしろ自然なことである。
杉山勝彦という「希望」、乃木坂46という「希望」、
秋元氏が、そこにもう一つの「希望」を付け加えて、この美しい物語を完成して欲しい。
ファンがそう願うのは、決して欲張りなことではないと思うのだが、どうだろうか?
# 記事中の青字部分は、テレビ番組、公式サイト、書籍、歌の歌詞などに、掲載されたものを、そのまま抜粋引用したことを表しています
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乃木坂の風 15Jun13 ~ 「世界で一番 孤独なLover」のMVは傑作
乃木坂の風 13Jun13 ~ AKB48の曲には、なぜ「ヒット感」がないのか
乃木坂の風 08Jun13 ~ 白石麻衣は「ドラえもんのいないのび太」なのか
# アレチの素敵な乃木坂業務連絡 15May13 ~ 関連記事の目次 (2013/04/19 ~)
すべての乃木坂関連記事について、目次ページを作りましたので、よろしければどうぞご覧下さい。
// 見なきゃ損だと思う乃木坂メンバーのブログ
6月20日22:24付生田絵梨花のブログ
ポッ、ポニーテールが、うっ、美しいです、エリカ様。しかも、いくちゃんにまとわりつく永島聖羅りんが、可愛いっす。二人とも表情がシンクロして、とくに悪い笑みがゾクゾクして、楽しいです。
でもなんだか、全体的に現実離れしていて、「ムーミン谷」の愉快な仲間たちみたいです(笑)。
6月17日付星野みなみのブログ
掲載された4枚の写真は、二ヶ月のブランクなど吹き飛ばします。とくに一枚目は、星野さん、大人の魅力が入った超美人の表情を見せてます。
ところで、これらの写真には安藤さんが写っていますが、7月以降、どうなるんでしょう?安藤さん自身がOKであれば、しばらくは、このままにして欲しいんですが。
# アレチの素敵な乃木坂業務連絡 19Jun13 ~ 気になるブログの目次
アレチボルトが「見なきゃ損だ」と思うブログについて、過去に紹介したブログも含めて、目次ページを作りましたので、よろしければどうぞご覧下さい。
// 星野みなみのコーナー
写真が載っているメンバーブログ
6月17日付星野みなみのブログ
6月16日付安藤美雲のブログ
6月12日付秋元真夏のブログ
6月10日付中田花奈のブログ
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乃木坂の風 21May13 ~ アイドルとの「距離」、星野みなみの物語
この曲を作ったのは誰か?
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今年3月13日にリリースされたCDには、「作詞:秋元康、作曲:杉山勝彦、編曲:杉山勝彦・有木竜郎」と書かれている。
作曲家、杉山勝彦氏が曲を提供し、秋元康氏がそれに詞をつけて、この珠玉のナンバーが誕生した、
そう考えるのが普通である。
しかし、B.L.T.6月号(東京ニュース通信社)の「完全在宅主義」というコーナーに掲載された、Base Ball Bear 小出祐介氏と杉山勝彦氏の対談を読むと、話はそれほど単純なものでないことが分かってくる。
杉山氏が作曲した乃木坂46の二つの曲、「制服のマネキン」と「君の名は希望」に感銘を受けた小出氏が、
ついに秋元康さんが秘蔵っ子の杉山さんを投入してきたんじゃないか
と問いかけると、杉山氏は
秋元さんにはお会いしたことはないんですよ
と「秘蔵っ子」を否定している。そして、自分の曲作りについて、
歌詞を先に書いてメロを乗せる今のスタイルが出来ていって。曲を提出する時は、歌詞もフルサイズで入ったものを出します
と述べている。
実際、「君の名は希望」にも、最初に提出した仮歌入りデモバージョンが存在して、この対談の場で、小出氏は杉山氏が持参したそのデモ曲を聴いている。
さらに、杉山氏は、曲を書くときに、
どういうシンガーが、どういう世界観で、誰に向かって、どういうタイミングで、どういう瞬間を切り取って、どういう角度から見て、どの感情をっていうことまで含めて明確に世界観を作るんです。
として、
曲よりも言葉が先にある
と繰り返し強調している。
この対談ではっきりしたことは、杉山氏は自身を、作曲家である以上に、作詞家であると思っていて、「世界観」とそれを表現する「言葉」こそが、楽曲のもっとも重要な部分だと認識していることである。
では、現在31歳の杉山勝彦氏がどのような「世界観」と「言葉」を紡ぎだしてきたのか、少し振り返ってみたい。
杉山氏がJポップスの世界で大きな注目を集めたのは、2010年8月25日にリリースされた、中島美嘉の「一番綺麗な私を」という曲である。
作詞、作曲、編曲すべてを一人で手掛けたこの歌は、女性の恋人への切ない想いを綴った詞を、ゆったりとしたテンポのメロディに載せて、中島美嘉の美しい声で歌い上げたバラード系のヒット曲である。
また、翌月の9月22日にリリースされた倖田來未の「好きで、好きで、好きで。」では、彼女の恋人へのストレートな想いの詞に、曲を提供、編曲は別の人物が担当しているが、やはりバラード系の曲を作っている。
しかし、杉山氏は2年後、私立恵比寿中学のメジャーデビュー曲「仮契約のシンデレラ」で、がらっと作風を変える。
この曲は、2012年5月5日にCDリリースされ、杉山氏が作詞、作曲、編曲のすべてを一人で担当しているが、ユーモラスで、随所にセリフの入った歌詞を、軽快でアップテンポなメロディに乗せた曲で、前山田健一のももいろクローバー「行くぜっ!怪盗少女」を彷彿させる仕上がりになっている。
この曲は評判を呼び、その成功をきっかけに、杉山氏はアイドルソングの世界に入って行く。
「完全在宅主義」での発言から推測すると、特定の「世界観」を背景に作り出された歌詞付きの楽曲で、AKB48の「コンペ」に参加、
採用される機会が増え、AKB48のCDに彼の名前が登場することになる。
2012年6月20日発売、前田敦子の2ndシングル「君は僕だ」に収録された「右肩」は、作詞:秋元康、作曲:杉山勝彦、編曲:杉山勝彦・森祐太。ピアノの旋律が印象的なバラードで、「孤独な心とその救済」という、後に続いていく重要なテーマが、恋人への想いと合わせて、あまり重くないタッチで描かれている。
さらに、8月15日リリース、AKB48の2ndアルバム「1830m」に収録された三つの曲に杉山勝彦氏の名前が見て取れる。
板野友美と柏木由紀の「僕たちは 今 話し合うべきなんだ」、特別選抜メンバーによる「やさしさの地図」は、二曲とも作詞:秋元康、作曲・編曲:杉山勝彦である。
そして、もう一曲、チームBの「ノーカン」で、杉山氏は重要な出会いを果たす。
有木竜郎氏である。
「ノーカン」は、作詞:秋元康、作曲:杉山勝彦のアップテンポで軽快なポップスだが、編曲を杉山氏と有木氏が担当している。
実は、この制作陣、「君の名は希望」とまったく同じである。
そして、アルバムの二週間後、8月29日リリース、AKB48の27th「ギンガムチェック」のCDに、「夢の河」という曲が登場する。
後に、前田敦子が卒業の際に歌ったことで有名になる、この名曲は、やはり、作詞:秋元康、作曲:杉山勝彦、編曲:杉山勝彦・有木竜郎であるが、
鳥肌が立つほど、「君の名は希望」と雰囲気が似ている。
印象的なピアノソロで曲が始まり、そこに高音の美しい歌声をかぶせて行く。
歌詞も、「人間の孤独とその救済」というテーマを切なく表現したもので、
メロディもゆっくりした完全なバラードではなく、ややアップテンポなノリの良さを加味している。
「君の名は希望」のひな形が、ここで誕生したと言っても良いのではないだろうか。
中島美嘉「一番綺麗な私を」で、恋人を想う切ない歌詞が印象的な、バラードの名手としてスタートした杉山氏が、
私立恵比寿中学「仮契約のシンデレラ」では、ティーンの少女が躍動する歌詞とアップテンポなメロディに覚醒、
さらにAKB48の曲で、有木氏と出会い、新しいバラードの旋律を手に入れていく。
そして、杉山氏は、いよいよ乃木坂にやってくる。
2012年12月19日リリース、乃木坂46の4th「制服のマネキン」は、作詞:秋元康、作曲:杉山勝彦、編曲:百石元。
アップテンポなパンチのあるメロディを提供して、「仮契約のシンデレラ」に通じる面を見せている。
しかし、次の5枚目シングルでは再び、杉山勝彦と有木竜郎のコンビが呼ばれ、
ピアノソロの後、生田絵梨花の美しい歌声で始まるミディアムバラードの名曲「君の名は希望」が誕生する。
フジテレビ「MUSIC FAIR」でのピアノ伴奏だけによる「君の名は希望」は、秋元氏本人からのも含めて、高い評価を受けたが、
「夢の河」でも、随所にピアノの音色が効果的に使われていて、
こういう楽曲テイストは、肩書きの中に「ピアニスト」が入っている現在26歳の有木竜郎氏の影響と考えるのが妥当ではないだろうか。
現代のポップスでは、編曲がもっとも影響力があり、中心イメージを決めることすらあるとも言われるが、
杉山氏と有木氏の若い二人の編曲コンビが、「君の名は希望」の美しいメロディラインに辿り着き、それを完成させたことになる。
また、歌詞についても、「右肩」と「夢の河」で取り上げられ、深められてきた「人間の孤独な心象風景とその救済」というテーマが、「君の名は希望」で、より明確な形で提示され、完成された「世界観」の中で表現されている。
特筆すべきは、前二作において、手探りで迷いがあった「救済」の方向性に、「孤独」を乗り越えて、「誰かを愛する」勇気を持つこと、そこにこそ「未来」があり、「希望」があるのだということを、力強く宣言して、正面から道を示したことである。
「孤独」の苦しさや儚さではなく、それを克服する「強さ」を、初めて歌い上げたことである。
歌詞においても、メロディにおいても、杉山氏が積み上げて来たものが、ついに最高点に達して、眩しい輝きを放った瞬間である。
そして、Base Ball Bearの現在28歳の小出祐介氏が、感銘を受けて、杉山氏が「完全在宅主義」に呼ばれることになった。
杉山氏、有木氏、小出氏。
「君の名は希望」誕生の周辺には、こういった音楽界の若き才能たちが何人も登場する。
そのこと自体が、明日への「希望」であり、未来を目指す明るい雰囲気こそが、「君の名は希望」の世界を生み出したのだと、思いたくなる。
さて、最後に、ひとつ疑問が残る。
「君の名は希望」で歌われている「人間の孤独な心象風景とその救済」というテーマを考え出したのは、誰なんだろうか?
「右肩」と「夢の河」でも扱われているこのテーマは、すべて作詞:秋元康、作曲:杉山勝彦という形で出されている。
「完全在宅主義」において、杉山氏は、「世界観」を厳密に設定して「言葉」を作り、その後に、メロディを乗せていくと強調している。
仮歌入りの「君の名は希望」デモバージョンも存在していて、小出氏はそれを聴いている。
しかし、作詞は秋元氏であり、杉山氏の名前が入っていない以上、彼が最初に考えた「言葉」が、歌詞に入っている可能性はない。
日本音楽著作権協会(JASRAC)の理事でもある秋元氏が、その辺をいい加減にする筈はない。
すると、秋元氏は、杉山氏の歌詞を一度、完全に壊して、一から歌詞を作ったというのが、理論的な結論となる。
そうだとすると、秋元氏は、杉山氏の提供した最初の「世界観」は、どうしたのだろうか。
歌詞だけではなく、オリジナルの「世界観」まで壊して、メロディだけを使って、新しい「世界観」を生み出したのだろうか。
だが、歌詞の表現する「世界観」とメロディラインが、これほど一致している曲で、ベースとなったテーマや「世界観」を一切無視して、新しい「世界観」を作り出すことが可能だろうか?
しかも、「夢の河」でも、まったく同じ制作陣が、「人間の孤独とその救済」という同じテーマを扱っているので、秋元氏は、歌詞の破壊と新規創造を二回も行ったことになる。
杉山氏の歌詞がワンフレーズも残っていないとしても、もし彼の考えたテーマや「世界観」を採用しているのならば、作詞者の欄に彼の名前を入れるべきではないだろうか。
なぜなら、すでにあるテーマや「世界観」を土台にして、歌詞を書くのと、一から「世界観」を作って、歌詞を書くのとは、まったく意味が違う。作詞者の欄に一人の名前しかないのであれば、それは、後者のケースだけを意味するべきで、前者のケースを含むべきではないと思う。
「君の名は希望」において、秋元氏は、杉山氏の「世界観」の上に、歌詞だけを全面書き換えしたのか、
それとも、
そのオリジナルな「世界観」まで壊して、一から、自分の「世界観」を作って、全く新しい歌詞を書いたのか。
この疑問を解明する方法は、二つある。
一つは、小出氏が聴いた、仮歌入りの「君の名は希望」デモバージョンを、公開してもらうことである。
そうすれば、杉山氏のオリジナルな「世界観」と秋元氏の「世界観」を比べることが出来る。
しかし、これが実現する見込みは薄そうだ。
では、もう一つの方法、秋元氏本人に、「君の名は希望」の作詞について語ってもらうしかない。
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杉山勝彦という「希望」、乃木坂46という「希望」、
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# 記事中の青字部分は、テレビ番組、公式サイト、書籍、歌の歌詞などに、掲載されたものを、そのまま抜粋引用したことを表しています
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