goo blog サービス終了のお知らせ 

ジャン・アレチボルトの冒険

ジャンルを問わず、思いついたことを、書いてみます。

パキスタンの冷たい冬(3) ~ シャリフとブッシュ

2007-12-31 13:28:09 | 政治
ブット氏亡き後、シャリフ元首相の存在感が、高まってきているという。彼は、首相のとき、陸軍参謀総長だったムシャラフ氏の解任を命じたが、それがきっかけで、無血クーデターを起こされ、国外亡命を余儀なくされた。

現在は、亡命先のサウジアラビアから帰国して、国内で政治活動を始めている。

米国政府は、イスラム過激派との対決姿勢を鮮明にしていたブット氏とは異なり、シャリフ氏に対しては、冷淡であるらしい。イスラム過激派を育成したとされる、ハク元大統領の信任を得て、政治基盤を確立したこと。98年に核実験を強行したことなどが、影響しているようだ。

しかし、シャリフ氏が、再び、政治参加する可能性は、高くなっている。イスラム教徒の国で、イスラム寄りの人物が、人気を集めるのは、当たり前のことである。また、過激派のテロ行為を支持しているイスラム教徒は、ごく少数である。

イスラム寄りだから、イスラム過激派への態度が生ぬるいから、無視する。ムシャラフ氏や故ブット氏など、アメリカにとって、口当たりのいい人物は応援するが、シャリフ氏は、ダメ。それでは、いつまで経っても、パキスタンの政治は安定しない。

国民のほとんどが、イスラム教徒で、反米感情を持ち、同胞への迫害だとして、アフガン戦争に反発している。その国に、宗教色のない、「民主的」な、親米政府を作って、「テロとの戦い」を強要するのは、かえって事態を悪化させる危険がある。イスラム穏健派を支援して、国内急進派を押さえ込む方が、より現実的である。

PLOのアラファト議長、アフガニスタンのタリバーン、イラクのフセイン大統領、イランのアフマディネジャド大統領。嫌いな相手だから、外交交渉はしない。できれば、武力で排除する。

ブッシュ政権は、パキスタンでも、また、同じことを繰り返すつもりだろうか。パレスチナ、アフガニスタン、そして、イラク。その態度が引き起こしてきた、数々の悲惨な結果を、未来に押しつけて。

しかし、相手は、核保有国である。結果の深刻さは、これまでの比ではない。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

パキスタンの冷たい冬(2) ~ 総選挙の行方

2007-12-30 18:40:08 | 政治
パキスタン各地で、ブット支持者による抗議行動が起こり、治安部隊と衝突しているらしい。政府は、暗殺犯を、アルカイダと断定しているが、支持者らは、政権の関与を疑っているようだ。

騒然たる状況の中で、欧米各国は、ムシャラフ大統領に、総選挙の、予定通りの実施を促している。アメリカ政府高官の言葉を借りれば、選挙の延期は、ブット氏を暗殺した連中の勝利を意味する、という理屈だ。

しかし、本当に、このまま、来年1月8日に選挙を行って、よいのだろうか?

欧米先進国は、とにかく選挙さえすれば、良い方向へ前進するのだと、盲目的に信じている気がしてならない。しかし、例えば、イラクでは、スンニ派政党の多くがボイコットを表明する中で、選挙を強行したため、シーア派とクルド人の政府が出来てしまった。結果、スンニ派は、国家建設に参加できなくなり、武力闘争の道に進まざるを得なくなった。

現在、米軍は、サドル師に忠誠を誓うシーア派の兵士や警官と、共同して、スンニ派武装勢力を掃討している。治安回復にはほど遠い、歪んだ構図である。

今回の選挙に対しては、ブット氏亡き後、急速に存在感を高めている、シャリフ元首相が、「自由で公平な選挙を期待できない」として、ボイコットを表明している。

そもそも、ムシャラフ政権は、つい最近まで、戒厳令を敷いていた。野党は、自由な選挙運動など、出来るはずもない。事実、ブット氏も、軟禁状態に置かれて、外出すらままならなかった。

外出が可能になって、遊説を開始した途端に、暗殺。ブット支持者が、ムシャラフ政権へ、不信感を募らせるのは、当然のことだ。今の状態では、人民党の選挙参加すら、危うい。

予定通り選挙を行って、野党ボイコットで、与党が大勝。議会には、シャリフ氏もいないし、ブット氏の人民党もいない。そうなった場合に、パキスタンの政情が安定化するだろうか?野党勢力が、一層激しく、政府と対立するのは、目に見えている。

この選挙は、誰かを勝たせるためではなく、国内勢力を、幅広く政治参加させることが、一番の目的であるはずだ。それが、パキスタンを安定化させる、唯一の方法である。野党の参加がなければ、やる意味がない。

総選挙の時期を延期して、野党に、選挙運動の時間を、十分に与える。国際社会が、公正な選挙の実施を監視する。いくつかの手を打った後で、実施しても、遅くはない。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

パキスタンの冷たい冬 ~ アメリカの誤算

2007-12-29 19:15:06 | 政治
ブット元首相が暗殺された。犯人は銃撃後に自爆。軍を掌握するムシャラフ大統領と、国民に人気のあるブット元首相を組ませて、パキスタンの政情安定化をはかる。ブッシュ政権のシナリオは、完全に崩壊した。

ブット氏のパキスタン帰国は、ムシャラフ氏が、汚職の罪を免除すると発表したことが、きっかけである。この決定の裏に、アメリカがいたことは、想像に難くない。

しかし、ムシャラフ政権の支配が弱まって、国内のイスラム勢力が盛り返している時期に、ブット氏を帰国させるのは、果たして、正しい判断だっただろうか?イスラム過激派に、格好の敵を提供しただけではないだろうか?火に油を注ぐことになったのではないだろうか?

ブット元首相は、欧米とのパイプやリベラルな考え方から、イスラム寄りのひとびとから、支持されないのは、はっきりしていた。この点では、ムシャラフ大統領と、あまり変わらない。

また、国内の民主化勢力が、投獄されながらも、抵抗活動をしていた時期に、海外に亡命していたこと。そして、帰国直後の一時期ではあるが、独裁的傾向を強めるムシャラフ氏を、評価したこと。民主化を望む国民の中にも、ブット氏の姿勢に疑問を感じていたひとは、少なくないはずである。

加えて、汚職政治家というイメージが、完全には、払拭出来ていなかったのも、事実だ。

ブット氏が、再び首相になったとして、果たして、今のパキスタンをまとめていけただろうか?命の危険を冒してまで、彼女を帰国させる必要があっただろうか?

ムシャラフ政権は、軍事政権ながら、比較的リベラルで穏健な政権運営を行ってきた。パキスタンは、核保有国であると同時に、「対テロ戦争」の最前線でもある。欧米先進国から見て、この国を統治するに適切な人物としては、現在のところ、ムシャラフ氏以外には考えられない。

しかるに、ブット元首相の帰国、暗殺は、パキスタンの政情を一層不安定化させ、ムシャラフ政権の基盤を、さらに弱体化させた感がある。

ブッシュ政権は、再び、間違いを犯したのではないだろうか。

イスラエルのパレスチナに対する超強硬姿勢を容認したため、中東和平の試みは、完全に頓挫している。ガザ地区では、パレスチナ人が、悲惨な生活を送るなか、住民の不満を吸収して、ハマスが着々と勢力を伸ばしている。

アフガニスタンから軍事力でタリバーンを追い出して、オサマ・ビンラディンとアルカイダを壊滅する計画も失敗した。タリバーンは依然勢力を保っている。オサマは、ビデオレターを送りつけて、元気に演説している。

アフガニスタンは、軍閥が群雄割拠する最悪の状態で、米英軍は、いまだに戦争を続けている。カルザイ大統領は、首都カブールから、一歩も出られない。

さらに、イラク戦争。フセインを失脚させて、民主国家を建設する予定だったが、武装勢力、テロリスト、強盗団などが入り乱れる、無法地帯が、いくつも出現してしまった。テロリストのいない独裁国家を、テロリストが暗躍する分断国家に変えてしまった。

ブッシュ政権には、中近東問題に精通したブレーンが、いないのだろうか?それとも、ブッシュ大統領の耳は、ロバの耳なのだろうか?彼が、手を打つたびに、テロ組織にとって有利な状況が出来上がっていく。

血も涙もないテロリストの巣窟、そのすぐ側に、核兵器と核技術が転がっている。しかも、その国を治める政権は、弱体化の一途をたどっている。

ブット氏暗殺で、世界が、さらに危険な場所になったことは、間違いないだろう。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

グロブリン肝炎汚染の読み方

2007-12-28 16:17:59 | 政治
今日の朝日新聞朝刊の1面と30面によると、77年に旧ミドリ十字社が製造した血液製剤「人免疫グロブリン」2本から、C型肝炎ウイルスが検出された。

この製剤は、遅くとも75年には、発売されていたそうで、92年にC型肝炎ウイルスの高精度検査法が導入されるまで、肝炎汚染を引き起こした可能性が出てきた。

まず注意が必要なのは、「肝炎ウイルスが検出された」ことと、「そのウイルスが感染力を持っている」ことは、別物である点だ。

今回の検出は、恐らく、PCR法を使って、ウイルスの遺伝子を調べたものだと思う。その結果、確かに、C型肝炎ウイルスは存在した。しかし、製造過程で、エタノール処理を行っているので、ウイルスの外被タンパク質が変性して、感染力を失っている可能性もある。

そうであれば、幸いなことに、フィブリノゲン製剤、血液凝固第9因子製剤に続く、第三の薬害C型肝炎は、存在しないことになる。

ただ、エタノール処理したからといって、すべてのタンパク質が変性して、失活するわけではない。現に、製剤の主成分である、免疫グロブリンは、エタノール沈殿後も、活性を保っているからこそ、薬として使われている。C型肝炎ウイルスが、変性せず、感染力を維持している可能性もある。

つまり、感染力を維持しているかどうかは、実際に調べてみないと、何とも言えない。

問題なのは、「エタノール処理しているから、ウイルスが混入していても、安全である」と、調べもせずに、結論していたことである。

92年には、C型肝炎ウイルスの高精度検査法が導入されたという。ならば、その時点で、C型肝炎ウイルスを含んだ血液を使って、製造過程を実験室で再現して、各種の血液製剤に、どの程度ウイルスが混入するのか、確認できたはずである。

この手の実験なら、一ヶ月もあれば、結論が出せると思う。

従って、厚生省と、ミドリ十字は、「人免疫グロブリン」製剤について、少なくとも、92年には、75年からのその時点までに、患者が、C型肝炎に感染した危険性があることを、知らせなければならない。そして、過去の製剤の回収を、直ちに、開始しなければならない。

今回の薬害C型肝炎でも、感染の危険が、もっと早く分かっていれば、もっと早く治療を開始できた患者さんは、多いはずである。

確かに、混入したウイルスが、感染力を持つかどうかの試験は、難しいだろう。私は、この分野の専門家ではないので、はっきりしたことは言えないが、ヒト培養細胞を使った、感染実験ということになるのかもしれない。ある程度の時間が掛かるかもしれない。

しかし、「エタノール処理だから、大丈夫」と、決めつけることは、絶対にあってはならない。調べもせずに、「感染力はないから、ウイルスが混入していたとしても、通知する必要はない」と判断したのなら、それは犯罪的な行為である。

この記事の載っている、同じ30面に、薬害肝炎法案についての、江利川厚労省事務次官の発言が出ている。

「医薬品は効能と副作用をあわせ持つ。副作用が発生すれば直ちにメーカーや国に責任があるとなると、副作用のある医薬品はつくれなくなり、承認できなくなる」「実態を踏まえた責任論が展開されることを期待している」

これは、完全に問題のすり替えである。医薬品に副作用があることが問題なのではない。副作用を患者に知らせなかったことが問題なのだ。危険な副作用を察知できたはずなのに、根拠もなく、それを甘く見積もって、患者に教えなかった。その結果、大規模な薬害に発展してしまった。

だからこそ、厚生労働省に対して、発生責任が、厳しく問われている。

全く不必要な薬を使われて、C型肝炎になって、命を奪われたひとが何人もいる。命の危険にさらされているひとが何人もいる。いつ肝硬変・肝臓ガンを発症するか、脅えながら生きてるひとが何人もいる。

そのひとたちを前にして、原因を作った役所のトップが、平気で、開き直りとも取れる発言をする。

あなたには、人間のこころがあるのかと、尋ねたくなる。

怒りを通り越して、虚しいだけだ。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

タミフル1万人調査が示すもの(2)

2007-12-27 17:00:43 | 政治
タミフルが無かった時代に、十代のインフルエンザ患者が、異常行動で死亡したケースは、どのくらいあったのか?

国民が、一番知りたいのは、この点である。もし、インフルエンザの流行のたびに、10代の患者が、「飛び降り」や「走り出し」で、死んでいたのなら、タミフルの副作用という可能性は、低くなる。

単に、メディアが、報道しなかった、だけなのだろうか?

しかし、若いインフルエンザ患者が、「何十メートルも走り出して、車道に飛び出した」とか、「家の窓から出て、マンションの手すりを乗り越えた」など、タミフル以前には、一度も、聞いたことがない。

医師を含め、多くのひとが、そう思ったからこそ、10代への処方の原則禁止措置が取られたのではないだろうか?

今回の1万人調査では、「異常行動全般のリスクは高まらない」と発表されたが、タミフルのインフルエンザ治療効果を考慮すると、この結論は妥当だと思う。

例えば、インフルエンザの自然治癒に5日間かかるとして、タミフルを飲むと、それが2日半になったとする。つまり治癒率を5割とおく。すると、タミフルの異常行動への影響がゼロであれば、飲んだ場合の異常行動発生率は、飲まない場合の半分になるだろう。今回の調査では、飲まない場合が22%なので、飲んだ場合は、半分の11%になるはずである。

飲んだ場合の発生率は、調査では、10%となっている。11%に近い数値だ。もちろん、22%と10%という数字は、母集団ではなく、サンプル集団での発生率で、統計検定の必要があるが、「タミフルの影響なし」は妥当に見える結論である。

しかし、異常行動の範囲を絞って、「死亡事故につながりかねない異常行動」の調査では、飲まない場合と、飲んだ場合のリスク差がはっきりしなくなる。この結果は、前回12月26日のブログで指摘したように、「タミフルの影響あり」の可能性が、極めて高いことを意味する。

治癒率を5割とすると、タミフルを飲んだ場合、インフルエンザウイルスにさらされている時間は、飲まない場合の半分なのに、重度異常行動の発生率は同じ。つまり、発生率が、2倍に上がっていることになる。

異常行動の範囲をどんなに絞っても、治癒率が5割なら、飲んだ場合のリスクは、飲まない場合の、半分でなければならない。それが、「タミフル影響なし」を意味する。範囲を重度のものに絞るにつれて、飲んだ場合のリスクが、飲まなかった場合に近づくならば、タミフルが影響しているということである。

すると、さらに範囲を重度に絞ると、飲んだ場合のリスクが、飲まなかった場合を追い越す可能性がある。

そして、その究極の異常行動が、「死亡事故につながった異常行動」である。この発生率は、タミフルを飲んだ場合と、飲まない場合で、どう違うだろう?

飲んだ場合は、よく分かっている。我々が、ニュースで見たとおりである。一方、飲まない場合は?

不思議なことに、厚生労働省研究班は、この一番肝心な調査を行っていない。プレスリリースで、触れていない。

つまり、こういうことではないのか。タミフルを飲まない場合、10代のインフルエンザ患者が、異常行動で死亡事故を起こしたケースは、ほとんどゼロである。調べる、必要もない。

それなら、タミフルの副作用に関して、科学的に、つじつまの合う結論を導き出せる。

インフルエンザでよく見られる、一般的な異常行動に対しては、タミフルは、その頻度を上げることはない。しかし、この病気では本来見られない、死亡事故につながる極端な異常行動を、数は少ないが、引き起こすことがある。

これは、限られた情報から出した、推論である。しかし、厚生労働省が、「タミフルを飲まない場合の、死亡事故例」を示さない限り、到達せざるを得ない結論でもある。

一刻も早く、この調査を行って、結果を出して欲しい。

新しい薬のリスクを、正しく国民に伝える。それが、厚生労働省の一番の義務である。政府は、薬害エイズ、薬害肝炎を通して、自身の責任の重さを、十分に理解していると信じたい。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

タミフル1万人調査が示すもの

2007-12-26 19:49:21 | 政治
今日の朝日新聞朝刊30面によると、厚生労働省研究班は、タミフルと異常行動との因果関係に関する調査の結果を発表した。

十八歳未満のインフルエンザ患者で、タミフルを服用して異常行動が見られたのは、全体の10%。服用せずに異常行動をしたのは、22%。

この記事を読むと、

タミフルを服用すると、インフルエンザに伴う、異常行動が抑えられるのか?少なくとも、タミフルが異常行動を引き起こすことはなさそうだ

と、一瞬思いがちである。しかし、本当にそれで良いのだろうか?

このデータを解析する際に、重要な要因が一つある。それは、「タミフルは、インフルエンザを治す」という事実である。しかも、この薬は、珍しく、よく効く(笑)。

発表されたデータを使って、「異常行動は、すべてインフルエンザの影響であり、タミフルは、何の影響も与えない」という仮説を、検証してみよう。

例えば、タミフルの服用で、7割の患者が、すぐにインフルエンザが治ってしまったとする。すると、仮に、異常行動が、すべてインフルエンザの影響であるなら、この7割のグループには、ほとんど異常行動が見られないはずである。

一方、治らなかった残り3割の患者では、異常行動が見られる確率は、タミフルを服用しなかった場合と同じ 22% であるはずだ。

従って、「タミフルの影響が全くない」ならば、タミフル服用者の 6.6% (= 0.3 × 22%) が、異常行動を起こす計算になる。タミフルによる治癒効果を考えれば、異常行動の頻度が、服用の場合に下がるのは、不思議なことではない。

そして、調査の結果、服用時の異常行動の割合が、6.6% に近ければ、「タミフルの影響なし」と言える。もし、6.6% より高ければ、7割の治癒グループ、あるいは、3割の治らなかったグループの中に、インフルエンザの影響だけでは説明出来ない数の、異常行動ケースが、存在したことになる。すなわち、「タミフルの影響あり」の可能性が高くなる。

もちろん、この 6.6% という数字は、タミフルの治癒率が7割の場合である。もし、治癒率9割なら、2.2%。治癒率5割なら 11% になる。

タミフルの治癒率が分からないので、タミフル服用の 10% が異常行動、という調査結果から、結論を出すことは出来ない。

しかし、記事の後半に、

対象を10歳以上に限り、飛び降りなど死亡事故につながりかねない異常行動に絞って比較すると、飲んだ場合と飲まない場合のリスクの差ははっきりしなかった

と書かれている。

「リスクの差がはっきりしなかった」という表現が、「タミフルを服用した患者群と、服用しなかった患者群において、死亡事故につながる重度の異常行動の発生率が同じである」ことを意味するならば、この結果から、はっきり言えることがある。それは、タミフルの治癒率がゼロでない限り、重度の異常行動に対するタミフルの影響は、必ずある、ということだ。

タミフルがよく効く薬である、すなわち高い治癒率が期待されることを考えると、相当に大きな影響である可能性が高い。タミフルの治癒率が5割なら、服用時の重度異常行動の発生率は、飲まない場合の2倍。治癒率が7割なら、3.3倍。治癒率9割なら、10倍である。

「重度異常行動へのタミフルの影響は全くない」との結論は、到底出せない数字である。この調査結果は、「密接な因果関係がある」ことを強く示唆している。

加えて、研究班の別の調査によると、十代のタミフル服用の禁止以降、インフルエンザ患者の「飛び降り」「走り出し」などの重度異常行動件数は、三分の一に減ったそうである。

班長である広田良夫大阪市立大学教授が、「因果関係わからず」と発表したのは、かなり慎重な態度であると思う。重度の異常行動に関しては、「因果関係の可能性」に触れても、よかったのではないだろうか。

ただ、十代への使用制限の解除をしなかったのは、正しい判断だと思う。因果関係を示唆するデータが、これだけ出ている。安全宣言は出せない。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

薬害肝炎は、防げたはずだ

2007-12-25 19:10:00 | 政治
1964年(昭和39年)、国が、ミドリ十字のフィブリノゲン製剤の製造を承認。

これが、薬害肝炎の出発点である。売血からの血液製剤であり、B型C型肝炎ウイルスに汚染されていた。

この薬は、本来、先天性低フィブリノゲン血症の薬である。しかし、フィブリノゲンが、血液凝固の因子であることから、「止血効果」を期待されて、出産時の妊婦の出血あるいは手術の際の出血に対しても、幅広く使われた。

その結果、献血製剤に置き換わる、1990年代まで、肝炎ウイルスをまき散らすことになり、大規模な薬害に発展した。

では、国と製薬メーカーは、何が出来たのだろう?

1964年当時、次のような状況があった。

* 輸血用血液は、ほとんどが売血である
* 輸血によって、高率で、肝炎に感染する
* 売血は、低品質で、「黄色い血」ともいわれ、提供者には、恐らく覚醒剤の注射によると思われるが、肝炎患者が多数含まれていた

血液製剤は、多人数に由来する大量の売血から、生化学的分画・濃縮過程を経て、製造される。これは、ウイルスも一緒に濃縮される可能性を、意味している。フィブリノーゲン製剤が、非常に高い肝炎感染リスクを持っていることは、当時でも、容易に推測できたはずである。

例えば、昨今話題になった、タミフルの副作用に比べれば、この薬の副作用は、はるかに予見しやすい。つまり、販売当初から、危険な薬だった。

従って、国と製薬メーカーは、販売開始と同時に、次のことを行わなければならない。

1 フィブリノゲン製剤を投与された患者が、どのくらいの率で、肝炎になるかの調査
2 フィブリノゲン製剤の効果の検証
3 より安全な代替治療の研究

これらの調査研究は、十年もあれば、結論を出せるはずである。実際、アメリカでは、1977年に、アメリカ食品医薬品局(FDA)が、フィブリノゲン製剤の承認を取り消している。理由は、B型肝炎感染の危険性、薬の臨床効果への疑問、代替治療の存在、だそうだ。

米国政府は、仕事をしていた、ということだ。しかし、日本では、何事もなかったかのように、薬が使われ続ける。

1980年代後半には、青森県の産婦人科医院で、フィブリノゲン製剤を投与された妊婦が、集団で肝炎に感染する事件が起こる。厚生省は、この事件を調査したが、それでも、何も変わらない。医療現場では、相変わらず、広範囲に、薬が使われ続けた。

そもそも、フィブリノゲンは、血液凝固経路の最終段階の因子である。しかも、先天性疾患のひとなどを除けば、もともと体内に、大量に存在するタンパク質である。

それを、わざわざ外から入れて、「止血効果」があるというのは、強力な臨床データでもなければ、科学的には、首をひねらざるを得ない主張である。壊れたブロック塀を補修するとき、すでに十分なブロックが手元にあるのに、さらにブロックを補給する。何の意味がある?

むしろ、血液の凝固と溶解のバランスを壊す危険性を考えるべきだろう。

厚生省が、フィブリノゲン製剤の使用を、先天性疾患に限定する通達を出したのは、実に、1998年のことである。

「止血効果」を信じて、出産や手術に、何十年にも渡って、フィブリノゲン製剤が使われてきた。その結果、大量の肝炎患者が発生した。驚くべき、無為無策だ。

薬害C型肝炎訴訟の地裁判決では、国とメーカーの責任を認めたのは、最も早いもので、名古屋地裁の、1976年以降。東京地裁に至っては、1987年から1988年の一年間だけの責任しか、認めなかったケースもある。

これらの判決は、「確実に分かっていたのに、何もしなかった」責任を、問題にしている。しかし、「疑わしいものを、研究して明らかにする」責任は、一切問われていない。

国とメーカーは、財政的にも、人材的にも、立場的にも、調査研究が容易な立場にある。上述した三点、すなわち、(1)肝炎感染リスクの調査、(2)効果の検証、(3)代替治療の研究。販売開始当時から、これらを行ったことを示す資料を、国とメーカーが提出できなければ、彼らは、1964年の承認日から、責任をとるべきである。

自分たちには、「疑わしいものを、研究して明らかにする」義務がないというならば、厚生労働省は、薬の許認可権を持つ資格がない。製薬メーカーは、薬を販売する資格がない。

調査研究の能力や意志が無ければ、薬事行政の当事者になってはいけない。薬害エイズ、薬害肝炎ではっきりしたように、それは、国民の命を脅かすことになる。現在のように、国が自身の責任を認めないのであれば、薬の許認可権を、厚生労働省から取り上げるべきである。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

福田首相、一番の問題は、あなただ

2007-12-24 18:14:31 | 政治
薬害C型肝炎問題について、国が法的責任を認めた上で、患者全員を「一律救済」する。

官僚の抵抗が強くて、この政治決断が出来ないから、議員立法に任せる。首相として、あまりにも無責任な態度である。

「速やかに立法」と言うが、自民党の厚生族議員の抵抗を、誰が抑えるのだろうか。彼らは、文面の細かい変更を要求して、「一律救済」や「国の責任」を、薄めた法案を作ろうとするだろう。

首相として、官僚の抵抗が抑えられない人物が、総裁として、族議員の抵抗を抑えられるだろうか?しかも、党幹部は、派閥の領袖、すなわち族議員団の長ばかりである。

さらに、なし崩し的な法案では、民主党も、飲むことが出来ないはずで、審議が、長引く可能性がある。来年度予算案に、間に合わない危険もある。その場合、福田首相は、解決が遅れているのは、「国会の問題」「野党の責任」と言うつもりだろうか。

福田氏が、首相として決断すれば、この問題は、すぐに解決する。一律救済のための予算を、直ちに計上して、重篤な患者を、救済することが出来る。

一番の問題は、官僚の抵抗ではない。人事権を掌握する、行政のトップが、何一つ決断できないことにある。

町村官房長官は、国の責任について、「道義的責任」という言葉を使ったそうだ。裁判の判決、あるいは、和解案では、国の法的責任を認めていないという主張らしい。

しかし、考えて欲しい。その裁判で使われた「証拠」は、誰が提出したものだろうか?厚生労働省や、製薬メーカーが、自分たちのファイルの中から、都合の良いものだけを選んで提出したと言われて、彼らは、反論できるだろうか?

国政調査権や、検察による、ガザ入れをして、裁判で見せた以外のものは、何も出てこないと、断言できるだろうか?

少なくとも、それを信じる国民は、ほとんどいない。

そして、どんな資料があるのか、曖昧にしておけるのは、福田首相が、政府のトップとして、官僚と対決しないからである。党幹部を、派閥の領袖で固めて、総裁として、族議員に、エールを送っているからである。

薬害肝炎問題は、残念ながら、今のところ、まだ先行きが見えない。しかし、はっきりしたことが、一つある。

問題解決の一番の妨げは、未だに原告団に会おうともしない、福田首相、彼自身である。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

命名権ビジネスの落とし穴

2007-12-23 15:09:35 | 政治
もしもの話。

子供が生まれたとき、ミラクルクリーナーという会社から連絡がくる。

「一億円払うので、お子様の名前を、ミラクルクリーナーにして頂けませんか」

この申し出を受ける親は、どのくらいいるだろう。

名前は、さまざまなものを映し出す、鏡のようなものである。「雄太郎」と聞いて、可愛い女の子を連想するひとはいない。「美聡」という名前からは、美しく聡明な女性になって欲しいという、親の願いがにじみ出ている。

また、年齢を重ねて、名前が、本人を形作っていくことも多い。「美空ひばり」は、努力を積み上げて、美空ひばりになっていった。「高木ブー」は、時間をかけて、コメディアンとしての高木ブーを、作りあげてきた。

「山田ミラクルクリーナー」という名前のひとは、一生「ミラクルクリーナー」を、背負い続けなければならない。その名前の持つ、あらゆるものを、引き受けなければならない。もし、会社自体が、不祥事を起こして、世間から冷たい目で見られたら、その人は、自身の人生でも、マイナスイメージと闘わなければならない。

埼玉県所沢に、西武ライオンズが本拠とする、ドーム型球場がある。名前は、「グッドウィルドーム」。さらに、二軍のチーム名も、「グッドウィル」。西武球団が、命名権を、5年25億円で売った結果である。

「グッドウィルドーム」では、どこにあるのかさえ分からない。「グッドウィル」からは、チームとしての、意気込みや、チームカラーなど、何一つ、伝わってこない。

今日の朝日新聞朝刊30面によると、西武は、グッドウィル・グループとの、この命名権契約を、解除するとのこと。グッドウィルの違法行為の摘発、処分を受けての動きである。

歓迎できる決定だが、これまでに被ったマイナスは、小さくない。もちろん、被害者は、西武ではない。

選手にとって、チーム名や球場名は、その元に結集する、旗のようなものである。団結力を誇示する旗が、知らない会社の名前で、果たして、闘志がわき上がるだろうか。また、ファンにとっては、チームは、我が子のようなものである。自分の子供に、無理矢理、「グッドウィル」という名前を付けられたら、親はどう感じるだろう。

さらに、所沢市民から見ると、公共性の高い、球場という施設に、縁もゆかりもない、会社の名前が付けられる。球場名に、「所沢」も、「埼玉」も入っていない。道路の看板の書き直しなど、税金を使う部分があることを考え合わせると、決して、愉快な話ではない。

こういった、選手、ファン、市民の不満は、グッドウィル・グループ以上に、西武へ向かうだろう。西武グループは、今回の件で、自分たちも、少なからず、世間の信頼を失ったことを、肝に銘じるべきだ。

名前は、単なるラベルではない。心の一部分と言ってもいいほど、大切なものである。そのことを忘れて、安易に命名権を売ると、大きな落とし穴が待っている。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「おぎやはぎ」型宇宙人

2007-12-22 18:24:51 | 超常現象
『与えられた任意の角を、三等分する線分を、コンパスと定規を使って作図する』

これは、「角の三等分問題」と言われるもので、数学的に、不可能であることが証明されています。もちろん、特定の角度であれば、可能です。例えば、直角ならば、30度を作図すればよいので、簡単に出来ます。

しかし、ぽんと与えられた、任意の角に対しては、どんなに頑張っても、三等分線を引くことは出来ない。

ところが、世の中には、「出来ない」「不可能」という言葉が、大嫌いなひとがいる。「弱気過ぎる」「努力もしないで言うな」「頑張れば、不可能なことなんてない」と猛反発する。そして、「じゃあ、オレが作図してやる」と、本当に、三等分線を引こうとする。

これが、「角の三等分家」で、アメリカでは、結構な数、いるそうです。彼らは、「作図例」を、大学などに送ってくる。もちろん、送られてくる「作図例」は、全部、間違いです。一見どんなに上手くいってるように見えても、100%、誤りがある。それは、見る前から分かっている。

では、『宇宙人は、地球に来ている』という主張は、どうでしょう。「証拠」を見る前に、100%否定出来るでしょうか?

色んなブログを読んでいると、「宇宙人は存在するけど、地球には来ていない」という考え方のひとが、多い気がします。

近年、太陽系以外にも、数多くの惑星系があることが、分かってきて、その中には、地球に近いタイプの惑星も、ちらほら見つかり始めている。我々の太陽系は、特別な存在というより、あまたの惑星系の一つに過ぎない可能性が、高くなっている。こういう話を聞くと、宇宙人がいても、不思議じゃない気持ちになります。

さらに、NASAが、「火星には生命の痕跡があるかもしれない」、「木星の衛星には、水があって、生命が存在するかもしれない」など、地球外生命体の存在に、期待を持たせる発言をする。なぜか、予算の時期に合わせて情報が出てくる(笑)。このことも、「宇宙人の存在」を信じる気持ちを、後押ししているかもしれません。

一方、「UFOに乗って、地球に来ている」可能性は、確かに、低いように見えます。まず、宇宙は、ものすごく広い。例えば、地球から100光年という、ごく近くに宇宙人がいて、光速の百分の一という、べらぼうなスピードでUFOを飛ばしても、我々と会うのに、1万年掛かる。1000光年なら、10万年。遠い、遠すぎる。

こういう距離の壁に加えて、時間の壁もあります。例えば、宇宙の年齢を100億年、地球の有史文明の歴史を5千年とします。すると、宇宙の歴史を1年間に置き換えると、我々の文明は、たった16秒しか、存在していない計算になる。

ある人に会うため、家を訪ねる。でも、その人は、1年に16秒しか家にいない。これは、相当に会うのが難しい。

ただ、ある日道を歩いていて、空から円盤が降りてきて、中から、ETみたいなのが出てきて、「ヤア、コンニチハ、トオクノギンガカラヤッテキタモノデスガ、ソレガナニカ?」と言われた瞬間、こういう議論は吹っ飛んじゃいます。はい、宇宙人は間違いなく存在します、しかも地球に来てます(笑)、という感じに。

距離の壁、時間の壁は、ものすごく大きいけど、宇宙人に出会える可能性はゼロじゃない。出会えたら奇跡に近いけど、絶対あり得ない、とは言えない。可能性がゼロであるのと、低いけど、ゼロではないのと、この違いは、非常に大きい。

つまり、UFOの写真、ビデオ、目撃談などは、「角の三等分線の作図例」と違って、見る前から、嘘だと決めつけられない。丹念に、一個ずつ吟味して、偽物か、本物か、見分けなきゃいけない。何万という「UFOの証拠」が、間違いであっても、もし、一つでも、確かなものがあったら、それだけで宇宙人とUFOの存在が証明される。

そういう意味では、「UFO研究家」は、角の三等分家ではない。矢追純一氏のレポートの中に、本物のUFOが混ざっている可能性を、完全否定はできない。いつも、大槻教授に怒られてる、UFO雑誌編集長の韮崎さんも、一つの本物を持ってくれば、人類史上に名を残す人物になってしまう(笑)。

このギャンブル感、大穴ねらい感が、UFO情報を吟味するときの醍醐味ですね。次こそは本物があるんじゃないか、次こそは何か来るんじゃないか。その期待感で、多くの人が、UFOに、夢中になるのかもしれません。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする