キマグレ競馬・備忘録

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本「僕はあと何回、満月を見るだろう」

2024年07月19日 | Book
音楽家 坂本龍一の自伝。2009年の自伝「音楽を自由にする」以降の活動を口述筆記したもの。
若い頃は、気力体力に自信があって、健康も問題なく活動していた彼が、2014年に最初の癌に犯され、その後寛解して復帰したものの、2021年に転移再発して2023年3月に亡くなってしまう。前回の自伝上梓後の音楽活動とこれまでの節目となった出来事、地震や原発反対活動及び自身のルーツ、癌との闘病生活など、これまで語られてこなかったエピソードや思想を綴る。
テレビで見る彼の姿は、いつもすごく冷静で頭脳明晰な芸術家のイメージがあったけれど、実際は熱い心の持ち主だったようだ。様々な出来事に対する喜怒哀楽の感情が文章から伝わってくる。2011年の東日本大震災以降は政治的な活動も行ったようだが、これは怒りの感情が原動力になっている。また感情が高ぶってよく号泣することもあったようで、それは自分にとっては意外だった。自身の作品、演奏や共演した人達に対する彼の本音も語られていて、とても興味深かった。素晴らしい作品を発表し、良い友人知人や出会いもあって、自分にとっては羨ましくなるような充実した人生に見えるけれど、本人には道半ばでやり残したことも多かったのだろう。ただ仕事一途で人生を全うできたことは、幸せだったかもしれない。日本の偉大な作曲家の一人だったと思う。
ちなみに、アメリカの作家マークトウェインの言葉で、人の死について、「死んだ時に葬儀屋まで悲しんでくれる。そういう人生を送りたい」という言葉を思い出した。 彼の人生もその言葉に相応しい人生だったと思う。

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