立花隆の著作は、テーマが面白いのでよく読んでいる。
彼の書棚には、どのような本が並んでいるのか気になってこの本を読んでみた。かなりの厚さで手強い感じもあったが、内容は彼の著作と蔵書の関わりを中心に紹介したもので、多くの写真も収められており厚さの割に気軽に読む事ができた。また、彼の仕事が膨大な読書量に支えられていることをこの本で改めて認識した。
著作に纏わるエピソードや自慢話、なかなか入手しにくい本の紹介、読書だけでなく若い頃は世界中を取材旅行し、見聞を広めていたことや、今だから明かされる危ない裏話も多い。
今、何故このような本を出したか考えてみたが、おそらく人生の残りの時間を考えると、そろそろ自分の仕事の手の内を明かしたいのかなと思った。癌を患った経験を考えると、その気持ちも分かるような気がする。
有名な作家の本棚の写真を見た事がある。棚に並んでいる本を見ると、その作家の好みや志向が判って面白いけれど、彼の書棚は資料庫の雰囲気で、あまりにも網羅され過ぎて正直面白いとは思わなかった。でもせっかく写真があるのだから、どんな本が並んでいるのか目を凝らして見たが、写真が細か過ぎて本のタイトルを読むのに目が痛くなってしまった。できれば、付録で虫眼鏡を付けて欲しかった。(^^;)
これまでバスや電車など安い費用で旅行した経験を持つ著者が、流行の格安飛行機を利用しての世界一周をレポートする。
LCCで出発し現地に着くと、LCCが就航している会社を探しながら、その都度予約・搭乗を繰り返し、関西からフィリピン、シンガポール、インド、UAE、エジプト、ギリシア、イギリス、アイルランド、アメリカへと旅をする。各国のLCCの違いや、LCCの空港事情、各国の習慣や文化、過去の失敗談など、格安旅行ベテランの著者の経験が豊富に盛り込まれていてとても面白い。同じLCCカテゴリーの航空会社でも、アジアから西欧へ行くに従って、座席のピッチが徐々に広くなって快適になる傾向にある。体の大きさの関係もあるのだろう。総じてアジアのLCCはコスト意識が高くて旅行者に厳しい。しかし今後は、食事なども含めてLCC同士の競争も激しくなり、サービスも改善してくるかもしれない。
お金を掛けないで、とにかく世界一周したい人には参考になると思いますが、お金のある人は読む必要はないでしょう。お金の無い人は、この本を読んで世界一周した気分になるのが良いでしょう。
椎名誠のエッセイ。世界中を旅してきた著者が、現代の「水事情」について考える。「水」の重要度は今後益々高くなっていく。地球上の「水」は、そのほとんどが海水であり、人間が飲める淡水はわずか数パーセントしかない。その淡水でさえも、ダムの開発や工業化による汚染が進み、安心して飲める水はわずかしかない。世界中で水不足になっている中、日本の水政策は無策に見える。川の上流には外国資本が徐々に進出し、水源を押さえようとしているのに、それを規制する法律が無いらしい。国土が簡単に売り買いできるのも、先進国の中では日本だけの特徴であり、著者は今後の日本の水資源確保に不安を感じているようです。日本は水に恵まれ過ぎていて、国民も水が当たり前に有るので、水不足に対する自覚が無い。もし水が手に入らなくなると、石油不足以上の問題になると警告している。
自身が世界中を旅行した時の「水」体験を含め、水に纏わる話題を多く取り上げており、読みやすくて勉強にもなるエッセイです。水について改めて考えさせられました。
太平洋戦争における日本戦闘機の物語。ゼロ戦や隼といった戦闘機は、太平洋戦争の日本軍の主力戦闘機として大活躍し、その開発や戦歴は多くの本で紹介されています。しかし、その裏で戦闘機として企画されながらも日の目を見なかった戦闘機も数多くあり、その中でも特にユニークで印象深い軍用機・試作機を紹介したのがこの本です。
飛行機の技術的な面だけではなく、その開発に携わる人々の姿も併せて紹介しています。
最初のエピソードは、ロケット戦闘機「秋水」です。戦闘機の動力としてロケットを装備して、どうやって戦闘を行うのかまったく想像できませんでしたが、この飛行機の仕組みはロケットで急上昇して相手の上空まで一気に高度を取り、降下しながら相手を攻撃するというものだったようです。この戦闘機の設計は、ドイツのメッサーシュミットの設計図が基になっており、実際に機体を制作して一度だけ飛行を行いました。しかし、試験飛行でエンジン不調のため墜落してしまい、技術的な問題と運用の難しさ(着陸を一回で決めなければいけない)から、結局「お蔵入り」となってしまったようです。この「秋水」を始め、前翼機「震電」、大戦中最高の飛行艇だった「二式大艇」など、大戦機マニアには興味深いエピソードが綴られています。大戦末期の物資や燃料に苦労する中で、決して諦めることなく戦況を打開するための飛行機開発に打ち込む人達の姿にとても感動しました。
佐野真一の辛口エッセイ。テレビや雑誌の話題を独自の視点でコメントする。テレビの前でブツブツ文句を言っているオヤジの風景が目に浮かぶ。最初は面白く読んでいたが、辛口過ぎて、読むのも辛くなって、最後は飛ばし読み。話題の人物を徹底して批判しており(こき下ろすという感じ)、ノンフィクションライターには恐いものは無いのかも。これまでの取材で多くの俗物を見ているだけに、その眼差しは鋭い。人間、裏表があるのが当たり前で、そういう人間に善くも悪くも魅力を感じるのだろう。
彼のノンフィクションは徹底した取材による力作も多いし、好きな作家ですが、でもこの本は読まないほうが良かったかもしれない。