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共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

《春日大社~千年の至宝》展

2017年03月03日 22時27分20秒 | 日記
今日も教室の定休日だったので、この機会を逃してはならじと、上野の東京国立博物館に出かけました。こちらでは今、《春日大社~千年の至宝》展が開催されています。この展覧会は、奈良公園内にある世界遺産春日大社で、20年に一度行われる式年造替(しきねんぞうたい)が昨年完了したことを記念して開催されたものです。

春日大社は、常陸國鹿嶋神宮の御祭神・武甕槌命(たけみかづちのみこと)が白い神鹿に乗って、奈良の御笠山(三笠山)に降り立ったことから始まっています。その事を示すように、前半は御笠山に降臨した武甕槌命の姿を描いた《鹿島立図》や、境内を俯瞰した景色に本地仏を描いた《春日山曼陀羅図》といった掛軸が多数展示されていました。この曼陀羅を見ると、現在とほぼ同じところに同じ建物があることが分かります。と動じに、かつて平安後期には五重塔が2基建てられていたことも分かり、なかなか興味深いものでした。

その後には、春日権現の霊験を描いた《春日権現験記絵》という絵巻が展示されていました。今回は御物である三の丸尚蔵館所蔵のものを始めとして様々な写し絵も展示されていて、細かな違いを楽しむこともできました。

今回は初回から数えて60回目となる節目の式年造替だったこともあって様々な神宝が新調され、以前から納められていたものが撤下(てっか)されたものも多数展示されていました。中でも、本宮御料の《蒔絵琴(まきえのこと)》や《毛抜形太刀(けぬきがたたち)》といった御神宝は現代の人間国宝の手によって復原されたものが一緒に展示されていて、納められた往事の華やかさを垣間見ることができました。

また、会場内には御簾の掛けられた春日大社第2殿の正面が原寸大で再現されていて、式年造替前まで実際に使われていた《御間塀(みあいべい)》や青いガラスの入った瑠璃灯籠、螺鈿の散りばめられた供物台等も展示されていて、神職以外は普段絶対に見ることのできない神殿の様子を間近に見ることができるようになっていました。そして、春日大社の廻廊に延々と吊るされ、節分とお盆の万灯籠の時に点灯される吊灯籠が会場内に展示されていました。しかも、何とここだけは写真撮影OKだったので、





遠慮なく写真を撮ってきました。

私も現地で一度万灯籠を見たことがあるのですが、それはそれは美しい光景だったことを覚えています。はからずもこうした場面に遭遇することが出来たのは大変嬉しかったのですが、こうして改めて見てみると、また奈良の御山に行って見てみたい…という気持ちが沸き起こってきました。

春日大社は御祭神が武甕槌命なためか御料の中には刀剣や弓矢、槍に矛といった武具が多く見られます。その中でも甲冑のコーナーは圧巻で、国宝の《赤糸威大鎧(あかいとをどしおおよろい)》



や、昨年新たに国宝に指定された《黒韋威胴丸(くろかわをどしどうまる)》といった甲冑の名品が多数展示されていて、特に外国人観光客が食い入るように観賞していました。

最後のコーナーには若宮の『おん祭り』に因んだ展示で、舞楽や伎楽に使用された仮面や装束、楽器が展示されていました。中央は源頼朝が寄進したという左方楽の巨大な拿太鼓の複製が設置されていましたが、鼓面だけでも2mくらいありそうな大きさに、見る人達が驚いていました。ただ、複製ながら鼓面に撥痕が残っていたので、もしかしたら実際に何回か演奏に使ったのかも知れません。

今回の式年造替では、4棟並んだ本殿の屋根の桧皮から調度品から全てが新しく造り替えられましたが、各神殿の前に一対ずつ据えられていた獅子と狛犬も新しいものに替えられました。この展示の最後には、数百年のお役目を終えた鎌倉期から室町期作の旧獅子・狛犬が全部揃って鎮座していました。筋肉表現の素晴らしいものから玉眼の入ったものまでいましたが、数百年の風雪に耐えて本殿を護りぬいた獅子・狛犬の姿は、どれも如何にも誇らし気に見えました。

展示スペースを出たロビーの一角に『春日大社東博出張所』なるものが設置されていて、白地の着物に紫の袴という出で立ちの、如何にも神職という若者がいたので少し話を聞いてみました。彼等にとっても真新しい社殿や調度品は新鮮なようでしたが、中でも本殿の獅子・狛犬は古色然としたものから金箔を押した極彩色のものに替わったので、未だに見慣れない…ということを話してくれました。やはり、朝な夕なに見ていたものが一新してまだ半年足らずですから、そう思うのも無理からぬことです。

そして

「日頃奉職している私たちですら初めて拝見するものが沢山ありますから、今回この展覧会にいらした皆さんは大変幸運なことだと思います。」

とも仰っていました。確かに《春日山曼陀羅》だけでも8幅はありましたし、御料宝物なんてものは普段は神職ですら目にも触れないでしょうから、考えてみれば春日大社に関する貴重な国宝や重要文化財がこんなに一堂に会するという機会も無いわけです。そうした意味でも、大変有意義な展覧会と言えるでしょう。

この展覧会は12日(日)まで、上野の東京国立博物館平成館で開催されています。興味のある方は、お急ぎ下さい。
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