
今日は教室の定休日だったのですが、たまたま興味深いコンサートがあるのをポスターで見掛けたので、平塚市へ出掛けました。
今日出掛けたのは《遥かなるシルクロード~天平の響き~》というものでした。内容は主に中国由来の楊琴、二胡、横笛、中国琵琶の奏者4人と、インド由来のシタール奏者の5人のセッションということでしたので、当初はポスターを見ても全く期待していませんでした。というのも、中国系の楽器については横笛以外は実はそんなに歴史が古いわけではなく、シルクロードとか天平とか銘打つには甚だ無理があったからなのです。ただ、ポスターやチラシの琵琶奏者の紹介欄に『中国琵琶・正倉院五弦琵琶』と書いてあり、写真でも彼女が正倉院宝物である螺鈿紫檀五弦琵琶(らでんしたんのごげんびわ)を構えている姿があったので、『おぉっ!これが聞けるならば!!』と矢も盾もたまらずチケットを購入して今日の日を迎えたのでした。
何しろ螺鈿紫檀五弦琵琶と言えば日本史の教科書にも写真が載るくらい有名な正倉院宝物で、私もかつて奈良国立博物館で開催された正倉院展で本物を観て感動したことが今でも忘れられません。ですが、何せ1300年も前に作られたものでありますから、楽器として奏でられたところは見たことも聞いたこともなかったのです。国宝でもありますから当然と言えば当然なのですが、やはり聞いてみたいという欲求に駈られることもあるわけですが、そこへもってきてこのコンサートのポスターで五弦琵琶のことがふれられているわけですから、これは行かねば!と思ったわけです。
プログラムをみたら、『○の流れのように』とか『す○る』といったイージーなアンサンブルの合間に、各奏者のソロタイムが設けられていました。それを見た時に若干の不安を抱えながらもソロタイムを楽しみにしながら開幕を待っていると、幕の隙間からオタオタと一人の男性が出て来たのだ何だろうと思っていたら、今日のコンサートでナビゲーターを務めるはずの男性が不摂生により全く声が出なくなってしまったため、今日は各奏者が解説します…という、ある意味どうでもいい前説がありました。
やがて幕が開き、中国系の奏者が登場してオリジナルなのか何なのか分からない曲を2曲演奏してから、拙い日本語でのMCが始まりました。その後インド系のシタール奏者が出てきて素晴らしい即興演奏を披露してくれて、次にいよいよ琵琶のソロタイムになりました。
『いよいよ螺鈿紫檀五絃琵琶が登場か!』と首を長くして待っていたら、なんとさっきまで弾いていた普通の中国琵琶を携えて現れたではありませんか!そして席に座ると、シレッと演奏を始めてしまったのです。呆気にとられた私をよそに、琵琶奏者は演奏を終えて引っ込んでいき、そのまま前半の舞台が終わってしまいました。
すっかり拍子ぬけしながらも、もしかしたら後半に登場するのかも知れない…という淡い期待を抱きつつ、気を取り直して後半の幕が上がるのを待ちました。
そして後半がスタートしました。しかし、いつまで経っても螺鈿紫檀五絃琵琶が登場する気配はなく、そうこうしているうちにアンコールも含めて全てのプログラムが終了してしまい、奏者たちが手を振りながら退場する中緞帳が下りてきて、そのまま閉演してしまったではありませんか!
ドッカーン!!!ヽ(♯`Д´)ノ =3
もう…怒りやら悔しさやらガッカリ感やらいろんな感情が一気に爆発して、涙やら鼻水やらが止めどもなく溢れ出てきました。私のたった一点の楽しみは、始めから存在すらしていなかったのです。それを実感させられるだけのためにチケットを買わされ、厚木からわざわざバスに乗って出掛けたようなもんだったのです。帰り際、係員の女性から「ご協力下さ~い♪」とアンケート用紙を渡されたので、紙面いっぱいに『五絃琵琶はどうした?!』と書き殴って回収箱に突っ込んで帰ってきました。
およそクラシックの世界で、当日演奏しないものをチラシに表記するなんてことは絶対にしません。こういう気を持たせた宣伝の仕方を俗に『釣り』と言いますが、これをやると次からの信用がガタ落ちして、反って集客力がダウンしてしまいます。そんなリスクを彼等が冒そうとしたのかどうかは分かりませんが、憤懣やる方ない思いだけがのこるコンサートでした。