昨日から更に気温が上昇し、今日は遂に今年初の夏日を迎えました。この暖かさ…いや暑さで、ソメイヨシノの開花もかなり促進されることでしょう。
ところで、今日3月31日はバッハの誕生日です。
ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685〜1750)の誕生日は3月21日と書かれていることがありますが、それはローマ帝国時代から使われていたユリウス暦上でのことで、1526年に公布されて以降広く使われているグレゴリオ暦上では3月31日となります。
バッハの来歴については、ここであれこれ述べるまでもないことかと思いますので、今日は数あるバッハの作品の中から《管弦楽組曲第3番ニ長調BWV1068》をご紹介しようと思います。
バッハの《管弦楽組曲》は《ブランデンブルク協奏曲》と並ぶその代表的管弦楽作品の一つで、第1番BWV1066から第4番BWV1069までの独立した4組曲から成っています。それぞれバリエーション豊かな4作品は当時の様々な舞曲や宮廷音楽の集大成であり、またフランス風序曲形式の一つの完成体を見ることができるものとなっています。
成立年代はそれぞれ、バッハが世俗器楽曲を多数作曲したケーテン時代(1717年〜1723年)、またはそれ以前のヴァイマール時代(1708年〜1717年)と考えられています。ただ、トランペットやティンパニを含んでいる第3・第4組曲などの編成を見ると、当時のケーテン宮廷の小規模な楽団には不釣り合いと思われるので、ケーテン時代の後のライプツィヒ時代(1723年以降)にコレギウム・ムジクムでの演奏のために大幅に加筆された可能性が高いと考えられています。
因みに第4組曲の序曲は、バッハ自身の手によってヴィヴァーチェ部分に合唱を加えて《カンタータ110番『笑いは我らの口に満ち』》の冒頭合唱曲に転用されています。また、かつて『第5番』とされていた《管弦楽組曲ト短調BWV1070》は、現在では長男ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハの作ではないかとの見方が有力視されています。
《管弦楽組曲第3番ニ長調BWV1068》は、4つの組曲の中でも第2番と並んで有名な作品です。中でも第2曲の『アリア』は『G線上のアリア』として単独で有目ですし、第3曲の『ガヴォット』はヴァイオリン教則本に必ず登場する曲として知られています。
『G線上のアリア』というタイトルは第2曲『エール (Air)』を、ドイツのヴァイオリニストであるアウグスト・ウィルヘルミ(1845〜1908)がピアノ伴奏付きのヴァイオリン独奏のために編曲したものの通称です。その名の通りヴァイオリンの最低音のG線だけを使って演奏するというものですが、よくぞこうやって演奏できることに気づいたものだと思います。
そんなわけで、今日はバッハの《管弦楽組曲第3番ニ長調BWV1068》をお聴きいただきたいと思います。ラインハルト・ゲーベル指揮、ブダペスト祝祭管弦楽団の演奏でお楽しみください。