学習障害と英語指導を考える

特別支援の視点から。
どの子もハッピーになるような指導を。

アスペルガー症候群の子の読みについて・・つぶやき

2013年01月04日 | 学習障害について

アスペルガー症候群は、広汎性発達障害ですが

人によってもちろん程度や現れ方が違います。

 

特別支援教育では、広汎性発達障害の中でも

特にアスペルガー症候群が爆発的に増加しているため

今後、アスペルガー症候群こそが今日的な意味での

発達障害対策の中核群だろうと言われています。

 

子どもに限らず大人のアスペルガー症候群に関する本も多数出版されていますが

実際、周りを見ると結構そういう感じの人は多いように感じます。

私自身、家系にアスペルガー的な人がいますので

彼らの独特の感性や表現がよくわかります。

わたしはアスペルガーの人の率直さ、

素直さ、純粋な好奇心、裏表のなさ、

事実を言葉で表現し、真実を追求しようとする態度が大好きです。

自分の好きなものをなんとか相手にわかるように伝えようとしてくれる

あの一生懸命さが好きです。 

(そのせいで言葉の数が多くなるんだけど)

 

 

大学などの高等教育機関でのアスペルガー症候群の学生は

勉強はよくできるしまじめです。

ですが共通して友達を作るのが難しい様子で、

それぞれの苦手なことが際立っています。

 

例えば私がこれまで会った大学生/短大生の

おそらくアスペルガー症候群ではないか?と思った学生では

次のような様子を見たことがあります。

 

・口頭での説明がわかりにくい

・道に迷いやすい(道が覚えられないというか・・・)

・常識があまりない

・返事が普通のタイミングではない(少しずれている)

・周囲に合わせて声のトーンが調整できない

・大きな音や突然の音に異常に驚く

・うるさいところが苦手、うるさい人も苦手

・持ってる趣味が深い!深さが半端じゃない

・授業はいたって真面目すぎるくらい真面目

・ストレスに非常に弱い

・人の言うことを真に受ける(冗談と受け止めない)

 

英語を教えていて感じるのは

彼らはとても真面目なので文法や語彙はコツコツと積み上げられるのですが

文脈を理解することや、場面の背景や情景を思い浮かべることが

とても困難なようです。

 

視野が狭いとよく言われますが

それは興味関心だけでなく、

もしかしたら読書の時もそうなのかもしれない・・・と

感じます。

 

例えば、Aくんという生徒がいます。

彼は英語をがんばりたくて、TOEICでなんとか500点以上とれる

ようになったのですが、どうしてもパート7が弱い。

努力でなんとか文法はできても、

読解ができない。

 

彼の読みを見ていると、

前の文章と後ろの文章の関係がわかっていないようすです。

 

例えば、調理方法を書いた文章を読んでいたとすると、

AをBに入れて

という指示を見ても、

その前に作ったはずのAが何なのかわからない。

 

または、

例えば手紙の全文を訳せるのに、

誰が書いた文章ですか、

という問いに対して

明らかに父親が娘に書いているとしても

それがわからない。

どこにも「父親」とは書いていないので、文脈から

察することができないようです。

 

 

去年のチャレンジ教室の子は、

二人の会話文を読んでいて

「これ、何人の会話ですか?」と尋ねられて

「えーと、1,2,3,4・・・・」

と行数を数え、

「11人」(11行あったんですね・・・)

と答えたというエピソードを以前紹介したと思いますが

こうした文の関係性への無頓着ぶりは

こちらの想像をはるかに超えていることがあります。

 

 

他の英語の先生たちとも情報交換をするのですが

「彼は信じられないことに、常識がわかってない!」

という先生もいます。

何が信じられなかったかというと、

季語のようなもの。

たとえば、「おせち」というと正月ですね。

だから、「おせちを食べました」という文章からは、

季節がお正月だということが読めるのですが

おせち=正月と結びついていないので、わからない。

おせちを食べてないのかというとそうじゃなくて、

単に、つながってないのです。

このあたり、彼らのシングルフォーカスぶりというか

興味が無いことは全然見えていないのかな・・・と感じます。

 

 

そういう様子を見るにつけ、

学習障害の子どもたちが、もう少し基本的な

読み書きや、暗記というところでつまずいているとすれば、

広汎性発達障害の子どもたちは

意味理解、文脈の理解というところで苦労しているように思います。

 

 

この文脈の理解だけは、

やはりただ「本を読め」と言うだけでは身につかないように感じます。

 

見えていないのですから、

気づかせるような読み方が必要なんではないかな・・・と。

 

文学担当の先生が、

「小学校に行くまでの子どもが読むような、

 物語性のあるお話をしっかりビジュアル化しながら読んでほしい」

と言っていました。

なぜなら、単純なお話の中の起承転結は

物語の先を推測したり、お話のパターンを理解したりということに

とても大切だからそうです。

 

 

「でも、Aくんにいまさらイソップ物語とか・・・?」

「うーん」となってしまいました。

 

 

だけど、やっぱりそこからなんだろうと思います。

そして誰かと一緒に読むことが必要なのでしょう。

 

 

本当に、読解はなかなか伸びないので、

指導も悩みます。

 

ですが、こうした工夫にはやりがいがあります。

 

子どもたちは「わかりたい」と思っているからこそ、

こちらもがんばりがいがあります。

 

他の先生方との情報交換が一番勉強になります。

特別支援は一人ではできません。

一人の子を多方面から見てこそ最善の策に近づけるのではないかな。

こういうディスカッションのできる先生方がいてくれる環境は

いつもありがたいと思っています。

 


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