学習障害と英語指導を考える

特別支援の視点から。
どの子もハッピーになるような指導を。

LDのある小学生が、カナダの高校でオールAを取るまで(3)

2015年05月06日 | 学習障害について

(カナダ留学後) 

村上:留学後ですが、最初から通常教室だったとのことですが、大丈夫でしたか?


Iさん:娘は昨年から高校生(昨年は9年生、こちらの高校は9年生からの4年間)でしたが、

ESLもなく、現地の高校生と全く同じ扱いでした。

 

9月の新学期が始まる前に英語のテストがあり、

その結果、ESL必要なしとの判断でした。

 

主に単純な物の記憶と数字が苦手ですが、

こちら(カナダ)では学習障害のテストを受けるどころか数学でAの成績で、

日本での状態をいくら説明してもご理解頂けません。

 

ただし、苦手で無くなったわけではなく、

現地の高校生の数学のレベルが日本に比べてかなり低く

一応日本で算数の基礎を学んだ娘はこちらでは数学に問題があるとはなりませんでした。

 

アセスメントですが、希望すれば誰でも受けられるわけでは無く、

学校の方で年間に特別指導できる人数が限られている為、

優先順位をつけているという話を聞きました。

 

ですので小学校4年生でアセスメントを受けた、

中学に入ってからアセスメント受けた、など人によって時期に差があります。

 

アセスメント受けてその結果Special needと判断させると

その子には指導計画やその記録と共に特別指導を受ける権利を優先的にもらえることになります。

 

それ以外の場合は学校ごとの判断でサポートが必要という形の物で、

この場合将来的にアセスメント受ける可能性はありますが、

その時点では指導計画のようなものは出されず、

先生方が様子を見ながら指導と言う感じです。 

 

 

 

村上:カナダでの「特別支援教育」について、日本とは違うと感じたことはありますか。


I
さん:特別支援は日本で感じていたような

『他の子どもと違う特別な支援』という感じではありません。

 

全体的に感じるのは「考え方の違い」とでも言いましょうか・・・

 

例えば、日本で、

「小学校の6年生で50メートル泳ぐのが目標」だとすると、

苦手な子もスイミングスクールに通っている子も50メートルなんですよね。

 

でもこっちだと、泳げる子は泳がせておいて、

水に浮くことのできる子はストロークの練習して、

水に顔をつけられる子は浮けるように、

水が怖い子は水に恐怖を感じない様に。。。

 

最初から50メートルなんて目標がないんです。

 

それぞれの子どもの今の立ち位置から一歩進もう、

という事しかないから、

水が怖い子が50メートル泳げるようになるまで頑張ろう!

なんてスローガンが存在しないんです。

 

でも日本は

「50メートルが無理なら25メートルでいいから、頑張ろう!」

となって、

「25メートルまであと何メートル!」

という考え方をしているような気がするんです。

 

そんな目標を大人が掲げているから、

水が怖い子供はかなり無理して頑張らなきゃいけないというか・・・・

 

頑張っているのに全然目標に追いつかなくて、

子どもも大人も疲弊してしまう。

 

 

良い意味では、

具体的な目標があることで潜在的な力を伸ばすことが日本の教育はできると思います。

 

それはそれで素晴らしいと思うんです。

 

最終的にきっとクラスの8割は50メートル泳げるようになりますから。

 

 でも後の2割は落ちこぼれとして烙印を押されてしまう。

 

ここカナダでは、

『水が怖かった子がプールで遊べるようになった、よかった、よかった、』

という感じなので、

きっとクラスの2割の子しか50メートル泳げるようにならないんですが、

『50メートル泳ぐことの価値』なんて考えていないから、

『すごいね♪』で終わっちゃうんですよね。

 

でも人生に絶望的なコンプレックスは持たなくていいというか・・・

 

特別支援の指導もそういう感じです。

 

一歩進もう、ですから、それはどの子供にも言えることで、

日本のように、『これができないとダメ』という概念がないので、

ここからが『特別支援』でここは『通常学級』というくくりがないです。

 

苦手な事でそれが理由で困難になっているなら『手伝うね』と言うくらいの感じが特別支援と感じます。

 

村上:娘さんの最終成績は、素晴らしかったようですね。

 

Iさん:現在10年生を終了する直前ですが、

こちらの高校でありがたい事に後期オールAを頂きました。

 

Pre-IBのコースですので、こちらでは進学クラスと言う事になります。

頭を抱えていた数学ですが、こちらも92%という高成績で、

堂々のAです。(こちらはAにはプラスがつきません。)

 

ですが、この結果はAである事が重要なのではなく

私たちにとってはここに至までの道のりがこの成績を導いてくれたと思うのです。

 

 

日本の小学校であれほどまでに辛い涙を流した娘です。

 

その当時の小学校の先生からは『基礎ができない子は中学で大変な事になる』と散々脅されました。

(もちろん先生方に悪気は無いのですが)

 

数字と量の概念が無い。

かけ算などを記憶する事が出来ない。

漢字を覚えられない。

地理の記号も歴史年表も記憶できない。

連絡帳を書いて来る事が出来ないので宿題が分からない。

持ち物をちゃんと持っていけない。

 

ありとあらゆる事が出来ずに、

『ダメ生徒』の烙印を押され、

『問題児』扱いだった娘ですが、日本の学校教育に決別をし、

インターに行ってからは、生き生きと過ごすようになりました。

 

インターの中学を終了する前、このまま受験戦争に突入するインターより、

もう英語圏の公立高校で自分に合った進路を模索した方が良いのではないかと悩み、

カナダに留学し、

ありがたい事に、カナダでの学習方法が娘にはとても合っていて、

先生方との相性も良く、学習に意欲的です。

 

村上先生にお会いして、先生方の取り組みを知り、

様々な発信されている情報を手がかりに、

娘と模索してきました。

 

そしてその情報でとても勇気づけられてきました。

 

『自分に合った学び方こそ、大切なんだ』と。

 

成績を問うた事は一度もありません。

 

 

でも『自分のスタイルを理解し、

そのスタイルを受け入れてくれる教育』があれば、

自然と意欲も湧くものなのですね。

 

本当に出会いに感謝しています。

 

こちらに来てから娘は、

ディスレクシアの子どもたちと一緒に本を読むボランティア活動に参加しています。

 

現在は2人の小学生のお子さんを担当させてもらっています。

 

とても勉強になるようです。

 

 

 

日本の地元の小学校の先生方の厳しいご意見は

当時私たちから希望の光を奪った事は事実ですが、

その先生方の物の見方がある意味とても狭かったため、

決別して別の道を進もうと決意させてくれたのですよね。

 


「あの時の辛い思いがあったからこそ、今サポートしてくれている先生方に感謝の気持ちが生まれる。」

と娘は言っています。

 

(追加)

A子さんが中学校(インターナショナルスクール)に通っていた頃(2011年)のIさんとのやりとりがこちらです。

インターナショナルスクールに通う(1)
http://blog.goo.ne.jp/itkayoko/e/5b52e7bc3100e3a89eb081b83abc44a7

インターナショナルスクールに通う(2)

http://blog.goo.ne.jp/itkayoko/e/7e52f78fc02f3e19a206f41a2e3ea4f8

 

 

 

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
教えてください (moco)
2017-12-23 20:48:11
こんにちは。
遅ればせながら、今日ブログを拝見しました。
実はまったくうちの息子と同じ内容で
涙が出ました。
パターン化した答えしか得られない日本の状況に
息がつまりそうになっていたので、
光を見る思いでした。
もし、差し支えなかったら、カナダのどこの学校に
通われたか教えていただけませんか。
わらをもつかむ思いでメールさせていただきました。
よろしくお願いいたします。
返信する
mocoさん (村上)
2018-01-08 17:41:05
もしよろしければ、メッセージを下さい。
itkayoko@ybb.ne.jpです。
返信する
Unknown (みみ)
2018-06-21 22:15:56
こんにちは
うちの娘と全く!まっったく同じです。
うちの場合は日本のインターではなく、10歳からフィリピンのセブ島のインターに。その後バンクーバーに留学中です。(飛び級して、今グレード10を終わったばかりです)
今のところ成績も良好です。
日本ではバカ扱いだったのですが、外に出てみると秀才になってしまいました。
どんぐり倶楽部もやりました!すごく良かったです。
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