学習障害と英語指導を考える

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2016年度 LD傾向のある小学生への音韻意識と文字指導

2017年01月12日 | チャレンジ英語教室(読み書き困難)

チャレンジ教室は今年度スタートした小学生から、

音韻意識指導を体系的に取り入れたいと思って始めていました。

もちろん日本人向けの音韻意識指導教本があるわけでもないので、

英語圏の教材や論文を見ながら試行錯誤です。

なのでこれがベスト!ではありませんが、実践レポート的に参考になればという気持ちで書き残しておきます。

 

一昨年は「文字の音はわかっているのに、流暢さが身につかない」LD傾向のある

中学生にオンセット−ライム単位の音韻意識とフォニックスを同時に指導しました。

彼はカナ文字の段階でもずいぶん苦労した生徒さんです。

フォニックスだけではまったくうまくいかなかったのですが

オンセット−ライムレベルの音韻意識活動を加えたことで、流暢さと正確さが確実に向上しました

(その結果は2016年のLD学会大会事例報告で発表しました)。

そこで2016年度の5月から、英語の読み書きのつまずきを回避する目的で、

LD傾向のある小学生2名への段階的な音韻意識指導に本格的に取り組みました。

 

5月はほとんどアルファベットが読めない書けない段階からのスタートですので、

次のように、文字指導も同時スタートしました。

まず5月からジョリー・フォニックス(Jolly Phonics)で、1文字1音の対応を、

週1日、3ヶ月間で終了。

(ジョリーフォニックスは以前トレーニングを受けました。感想等はこちら) 

ジョリーだけでは文字を想起することが難しかったので、

想起しにくい文字だけを取り出して粘土を使ったり、絵を描いたり、語呂合わせなど色々やっています。

そうした合わせ技を用いながら、

夏休み前までに全ての文字が「読めて、書ける」ようになりました。

大学の夏休み明けの(10月)にはかなり綺麗に忘れていたので(笑)、改めて繰り返しています。

文字なんて、何度も忘れて覚えての繰り返です。

毎回必ず練習するので、忘れてもOK、覚えるまでやります。

 

次に、音韻意識指導は次のようなステップで進めて来ました。

1・【音節意識】 

絵カードを用いて、単語をいくつかのカタマリにわけるよ〜という感じで、

音節単位に分けていきます。

英語圏のように「手を叩く」のは、

そもそも英語の音節感覚のない日本の子供には難しいですね・・・ほぼ、間違えます。

意識は暗記ではないので、何度も子供が自分で試行錯誤しながら、コツを掴む時間が必要です。

英語圏で紹介されているものや、知人の先生のアドバイスなど受けながらやり方をいくつか試して見ました。

最初はどうしても間違いますので、ある程度明示的に区分けのポイントを示しつつ、

生徒が自分で体の感覚を使いながら確認する方法が効果的なようです。

 

少人数の場合は先生の目が届きますので、顎の動きで確認する方法が良かったです。

「顎の下に手を置いて、大きく口を開けながら、言ってみるよ・・・mon-key、mon-key、顎は何回動いた?」

など声をかけながら、ちょっと最初は無理矢理感があるのですが(先生はわざとでも動かします!)、

「あ、顎が2回動いた。2だね!」というように続けます。

2レッスンほどは、まよっている様子が見られましたが、

3レッスン目からほぼ正しく単語の音節を捉えるようになって来ました。

大人数では、恥ずかしがる子や、できていない子に目が届かないので、

あくまでも「顎に手」は少人数でオススメです。

ちなみに、1音節は一番難しいですので、2音節、3音節からのスタートですよ。

 

音節活動のための絵カードは2種類作っています。
 
 

上の写真のように、カードにあらかじめ音節の数だけ丸を打っておくものと、

何もヒントがないものです。もちろん後者の方が難易度が高くなります。

最初は、丸のあるカードを使って、

顎に手を当て、丸を指差しながら、「go-ri-lla!」と一つずつの丸に対応する音節を一緒にいう練習からです。

それができるようになると、ヒント無しのカードを使ってゲームをします。

① 同じ音節数のカードを取る、「神経衰弱」、

② 音節ごとにカードをバスケットに入れる「片付けゲーム」

③ 音節すごろくは、子供達が一番好きなゲームです。

スタート地点も好きに決められます。 カードをめくって、出た音節の数だけ前に進みます。

止まったところに書いていある数字の数だけポイント(コイン)がもらえます。

こんな風に、音節の遊びを2ヶ月〜3ヶ月ほどやりました。

今はどんな単語でも自分で音節単位に分解できるようになっていると思います。

 

2・【ライム意識】

音節ゲームをしつつですが、ライミングカードを使ったゲームも始めました。

ライムの難しさは、「どこを聞くか」を掴む難しさに尽きます・・・うう、本当に難しい。

 

英語圏のディスレクシア研究では、ライムや音素の意識が難しい、と書いていたので

個人差があるので、すんなりわかる子もいるでしょうが、

反応を見ると「やはりここからが難しいんだなあ」と感じています。

 

音節よりも、いっそう細かな部分に注意して「聞く」必要があります。

これはたくさん聞いて欲しかったので、アプリも使っています。

 

 

次に、カードも自分で聞いて、
マッチするものを探すように作りました。
このカードで赤いシールが付いているのは音声ペンであらかじめ音声を吹き込んでいるものです。

子供がペンを当てると、単語の音が聞こえます。

同じライムを持つカードを自分で探すんですが、もっと面白いゲームにしたいなあ。

今後の課題ですね。

下の写真は、同じライムを持つ単語を集めましょう、という活動です。

 

まだまだライムの練習中が継続しています。

ライムの単位は、のちの単語の読みの際に、より大きな単位で捉える際に、役立ちます。

大きな単位で読めると流暢さがアップするのでとても大切ですよ。

なので音の段階で、長母音も含む色々なライムに触れていることが肝心だよね、

というのを今日も研究仲間と語っていたところです。

 

さて、ライムをやりながら、オンセット−ライムの混成練習も

10月からちょこちょこ入れていました。

3.【オンセット−ライム】

小学生のうち1名は来年中学生になる6年生なので、私としても「早く読めるようにしてあげたい」という気持ちがあり、

ジョリーフォニックスで文字が1文字読めるようになった段階で、

次のフォニックスの練習本を始めました。

 

Sounds Fun!という本です。

これも人に薦められて購入した一冊ですが、写真にあるように(見えるかしら)

単語の読みを、まずは 母音+子音 (o + p =op)で練習し、

次にオンセットを加える h + op=hop という、オンセット−ライムを基本としたアプローチを取っています。

ですのでこの本を始めたときに、

読む前に、文字なしで口頭で オンセット−ライムの混成練習をして、
音をつなぐ感覚をつけてから読むようにしています。

T: h, opは? 

S: hop!

というように、生徒は2つの音の情報をつないで1語にします。 

 

まだまだちゃんと文字だけで「読む」のはハードルが高いので

「音をつなげて単語にする」「文字をつなげて単語にする」という感覚を養いたい時期です。

 

オンセット−ライムの混成(つなげる)が間違いなくできるようになってから、

先週から、単語を二つに分解する練習をしました。(オンセット−ライムの分解)

1回目のレッスンでは少し戸惑いましたが、あっという間に分解できるようになってびっくりでした。

今週、2回目のレッスンで撮影した様子はこちらです。

練習はささっと、1分ほどです。


https://www.youtube.com/watch?v=clhMJLm-L8o

 

子音と母音を分けることができたら、一番大きな難関クリア!

ですので、

次は頭子音だけを聞いて文字とつなげるアプリにも挑戦できるようになります。

https://www.youtube.com/watch?v=-dWfremvBxk

 

 

だんだん、読みに近づいている実感があります。

もう少ししたら、音素の分解、音素の混成へと進めるように感じます。

 

だいたいここまでで6ヶ月間かかりました。

 

 

 


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