飛梅(とびうめ)は、樹齢1000年を越える白梅。九州・太宰府天満宮に植えられた梅のなかではいちばん先に咲き始めるという。
菅原道真は、平安京朝廷内での政争に敗れて、大宰府へ左遷されることになったが、屋敷内の庭木の内、梅・桜・松との別れを惜しんだ。その時に詠んだ歌が
東風吹かば にほひをこせよ 梅の花主なしとて 春な忘るな
道真を慕う庭木のうち、桜は、主人が遠い所へ去ってしまうことを知ってからというもの、悲しみに暮れて見る見るうちに葉を落とし、ついには枯れてしまったという。
しかし梅と松は、道真の後を追いたい気持ちをいよいよ強くして、空を飛んだ。ところが松は途中で力尽きて、摂津国の八部郡板宿近くの後世「飛松岡」と呼びならわされる丘に降り立ち、この地に根を下ろした。(飛松伝説)
一方、梅だけは見事その日一夜のうちに主人の暮らす大宰府まで飛んでゆき、その地に降り立ったという。
日本人は、こういう類の法螺話が大好きなのである。めでたし、めでたし。