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遺言は書かず終ひや鳥雲に 悦子
遺言なしで財産が沢山あると、骨肉の争いとなる場合がある。そこへ隠し子でも現れたら、もう大騒動。和解もまとまらず、裁判になり十年余もざらという。
そういうことにならないように、あれほど「きちんと遺言書を書くように」頼んだのに、ああ、父はとうとう書かずにあの世へ行ってしまった。大陸へ帰ってゆく鳥たちのように。
「発つ鳥水を濁さず」という諺があるから、きっとこの方は、争いは起こらない、と確信していたのだ、と私は想像する。この句は、2000年の作。