そして大峰奥駆道縦走に続いて11月半ばから後半にかけて、湯浅から伊勢・二見ケ浦までの「紀伊半島一周カヤックトリップ」を行っていました。カヤックにテント、寝袋、食料、水などを積んで昼間こぎ、夜は浜辺でテント泊という、一筆書きの旅です。
こちらも同じく3作目の書き下ろし著書「海と山のソングライン」の取材という名目でしたが、それ以上にハードトレーニングを行った感がありました。普通にツアーガイドだけやっているとどうしてもカヤッカーとしてのポテンシャルは落ちてしまう所があるので、ちょうどよかった、1石2丁だったと思います。
紀伊半島の外洋、とくに枯木灘から熊野灘にかけてはなかなかの荒海で、ところどころ日本でも有数の難所というえるゾーンが立ちはだかります。ここを自分の判断力とパドリングで一周することができるならば、あとは時間さえ許せば日本一周も可能だといえるような、バロメータ的な基準となる海だとも言えます。
そして今回、やっぱりシーカヤックという乗り物はすごいなと改めて思いました。寄る辺ない大海原でまるで一寸法師のように頼りなげだけど、着実に目的地へと進めゆくことのできる乗り物。身一つで大波の合間を渡っていくなんて、冷静に考えると有り得ないわけで、でもそんな有り得ないことを可能にする道具、それがシーカヤックであるということを実感し、不思議であると同時に、ぼくはすごいものに携わっているんだなという思いが、何度となくこみ上げてきました。
自然の息吹、地球の鼓動を、もっともダイレクトに感じることのできる乗り物。
そこから繋がってくる、豊かな世界。
そんなものを存分に表現したいなと思います。