プリミティヴクール

シーカヤック海洋冒険家で、アイランドストリーム代表である、平田 毅(ひらた つよし)のブログ。海、自然、旅の話満載。

ゴミ調査活動無事終了

2014-10-16 23:26:50 | インポート
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 さて、前回の記事で案内しました田辺湾・神島(かしま)でのゴミ調査&クリーンアップ活動は無事終了しました。
 参加された方、また同行していただいた田辺市教育委員会の方、
 どうもありがとうございました。
 http://homepage3.nifty.com/creole/kasimasoujitour.htm

 シーカヤックで神島に渡り、2カ所の砂浜でゴミ調査&クリーンアップしたあと、袋に入れたゴミをカヤックに積み、再び出艇場所に戻りました。その後田辺市の方がトラックを回してくれ、焼却場まで運んでくださいました。
 ゴミは全部で70キロ。ほんとはもっとありましたが、時間的に全部を掃除しきれずでした。
 でもこの活動は、ゴミ掃除というよりゴミ調査というところがミソなんですね。
 定点観測、データ作り、傾向分析が目的だから・・・。
 
 ちなみにこのゴミ調査では、ICC(インターナショナル・コースタル・クリーンアップ)という、海ゴミ問題に取り組む世界的組織の統一フォームに従って、ゴミを45品目にわけて分類します。それによってどんなゴミが多いのか傾向が分かり、さらにそれを分析するとゴミの発生源がある程度分かってきます。このデータをJEANという環境NGOの全国事務局に送り、さらにICCに送られることになります。そうすることによって世界の中の北太平洋、北太平洋の中の日本列島、日本列島の中の西日本、西日本の中の紀伊半島、紀伊半島の西側の南よりのエリア・・・・、と、世界の海というマクロの視点から、ローカル的なミクロの現状と傾向が浮き彫りになってきます。そこで初めて、解決方法を考えるスタートラインに立てるわけです。
 海ゴミ問題に取り組むにはこの視点が大事なんですよ。海ゴミは次から次へとやってくるわけで掃除してもきりがなく、そもそものゴミの発生起源を断たなきゃだめですよね。逆にこういうデータの分析によって発生源が見えて来ると、ICCからその自治体などに注意を促したりすることもできます。
 まずはそこから始まります。

 水は低きに流れやがて海にたどり着くように、陸で処理しきれなかったゴミやポイ捨てされたゴミは、かなりの確率で最終的に海に行き着くといわれています。特に日本の様な、梅雨末期や台風による集中豪雨、夕立時のゲリラ豪雨に見舞われる国ではそれが顕著です。海に行き着いたゴミは、①海底に沈む、②海岸に打ち寄せる、③海流等に乗って世界の海を漂う、この三つのいずれかの運命をたどります。特に③のゴミは、海流の淀む場所などで溜まりに溜まり、大げさではなく大陸を形成します。例えば黒潮の淀みができるミッドウェーからハワイ北西部にかけての広大な海域には「太平洋ごみベルト」と呼ばれる吹きだまりがあって、ゴミ密集部の海面面積は、日本列島の2倍以上に相当するなどといわれています(今や、ゴミだけでなく放射性物質も??)。
 と聞くと、ほんまかいなーと思うでしょう? それがほんまなんですよね。
 とにかくえらいこっちゃ。地球環境問題のひとつの大きなトピックなのです。
 というわけで、特に誰も近づけない海岸線にアプローチできるシーカヤックでのゴミ調査は特に有効なのでうちでも何年も前から機会を見つけては行っているのですが、今回は台風と台風の狭間のちょうど一番穏やかに晴れたコンディションで、のんびり楽しみながら行うことができました。

 45品目のデータ全部はさすがにここには書ききれないですが、多かったゴミのトップ10を参考までに記しておきます。
 1位:食品の包装、袋 186ケ
 2位:硬質プラスティック破片 173ケ
 3位:プラスティックシートや袋の破片 153ケ
 4位:発泡スチロール破片 139ケ
 5位:プラスティック・発泡スチロール梱包材 135ケ
 6位:飲料用プラボトル(ペットボトル) 118ケ
 7位:ロープ、ひも(水産系) 106ケ
 8位:食品容器(プラスティック) 105ケ
 9位:荷造り用ストラップバンド 72ケ
 10位:プラスティックのふた 56ケ
・・・・・というような感じです。
 
 一目瞭然で、石油製品が多いのが分かります。太平洋ゴミベルトの主要な、典型的な構成員でもあります。あとサンダル、カセットガス、植木鉢、原付のミラー、自転車ペダル、靴底、ダクトの一部などがありました。中国、韓国のプラ系ゴミも微量ながらありました。結構田辺市の市街地から流れてきたものが多く、生活ゴミ系が大半を占め、遥か彼方からやってきたゴミは少なかったですがこの場合は、遥か彼方から来るやつというより遥か彼方にいくゴミという目線で見た方がいいかと思います。浜のゴミは氷山の一角で、漂いつつ黒潮に乗って太平洋をさまようゴミの方が圧倒的に多い。その辺の想像力が大事かなと思いますね。

 あとは参加者の皆さんの感想も下記の通り載せておきます。
 色んな人の感想を見ると、より傾向がよく見えてきて、なかなか面白いです。

 Aさん「漂着物が島の奥の方まであったが、波打ち際はそれほど大きなゴミはなかった。その事から、いかに多くのゴミが海の中を漂っているのかが想像できる。分別、調査しながらのクリーンアップ活動は、少し宝探しのような気分にもなった。小学校の課外授業などに採用してもらいたい。そこに父兄が参加する形になれば、海ゴミ問題の関心がより高まるような気がした」

 Bさん「今日はありがとうございました。良い企画なので年齢層を広げて回数を多くすると自然に触れる人が多くなり、理解者が増えるのでは? 久しぶりのノンビリカヤックもよかったです」

 Cさん「以前から神島に興味があり、何年も前からこの活動に参加したいと思っていました。実際に参加してみて、人が立ち入れない島ということは、なかなかゴミを拾う人がいないから、こんなにたくさんゴミが流れ着いたままになっているのかと思いました。神様の島だから、大切な島だから、きれいな方がいいですね」

 Dさん「3回目の神島も、ペットボトル類、食品用の袋など、相変わらず町からの資源ゴミが多かったように感じます。二カ所あるうち片方の浜にはペットボトルのキャップが多いなど、同じ島でも流れ寄る物が違うんだな、と。熊楠さんの残した植生に人工的な「モノ」が目障りなものとしての印象が残った1日でした。今日、キレイにしたとしても一時的なこと。また次から次へと打ち寄せるということを忘れないようにしたい」

 Eさん「念願の神島上陸を果たしたものの、森に入ることはできず、ゴミの結界で足止めを食らった気分でした。自分の暮らしの身近にあるゴミを見つけるたびに、それが身近なものであればあるほど心苦しい。今日、神島に降り立って、やっぱり地球にすぐ還ってゆくものに囲まれて暮らしていこうと改めて思った。衣食住を地産地消してゆく。地元を愛していく。それと同時に、今ある、地球に還っていきにくいものたちとちゃんと向き合って、地球に還してゆきたいと思う」

 Fさん「予想通りとはいえ、生活用品のゴミが多かった。意外だったのが、中国語の50cm程度のビニール袋。中国本土からの物か、台湾の物なのか? 
 太平洋ごみベルトのことは以前から知っているが、どうしたらいいものか。真面目に考えると途方に暮れる。フクイチからの放射性物質もそこ(太平洋ごみベルト)にたくさん溜まっていることだろう。
 ゴミを片付けるより、ゴミの元を絶たねば解決はなさそうだ。ゴミを出さない生活習慣への変更。何となくだけど、日本人が最も得意な分野のように感じる。淀川や大阪港辺りはずいぶんきれいになった。海を大切にする文化は日本人の中に必ずあるはずだ。魚を食する日本人なら当然の事だろう。テーマは『ゴミを出さない生活習慣への変更』かな。そんなことを考える一日だった」

 Gさん「ペットボトルやプラスティックの破片など、石油製品のゴミが多かった。ビン類はキャプの付いたものがほとんどだった。ビニールのひもは同じ種類のものがまとまっていた。ただ拾うだけじゃなく、ゴミの内容を調査していくことは有効だと思った」

 Hさん「ゴミはどこからでも流れ着く。たとえそれが聖なる場所だとしても。私たちが普段よく見知ったものから、海の暮らしに欠かせないものまで。もっともっと限りない時間が必要というか、いかに土に還るもので暮らせる工夫が大事かということを知らされました」

 Iさん「初めて参加させていただきました。ゴミの区分としては海外製品やかわったゴミは見当たらず、ほとんどが精油製品系の生活ゴミでした(台風18号の影響で台風前後でゴミの種類が変わったのかもしれませんが)
 東京湾や湘南でのゴミ拾いでは生活ゴミだけではなく医療系のゴミ、大人のおもちゃのようなゴミ、吸い殻などが目立っていたので、印象としては思ったよりきれいでした。定点観測的に継続してゆく事で、ゴミの種類に違いが出てくるのを観察したり、世界中のあちこちで同じ時期にやることで、ゴミの先進国、後進国のような差がでてくるんだろうと思うと興味深いです。今回のゴミの種類でいえば、ほとんどが個人から出たであろうものばかりでした。海外では、たとえばスウェーデンではゴミの99%を有効利用するリサイクル革命が起きている。ゴミのほとんどはエネルギーに変えられる。またカリフォルニアではペットボトルの水が禁止されるなど、国や州単位の取り組みが進んでいる。日本もゴミの後進国にならないよう取り組んでいく必要があると思う」

 Jさん「待ちに待った神島ゴミ調査。気が引き締まるような感じで上陸させてもらいましたが、あまりのゴミの多さ、大きいゴミも多いことに驚きました。潮の流れも関係するのかもしれませんが、そのほとんどが生活ゴミや漁業関係だと思われるもの。これらは意識的に海に捨てるということをしているのか・・・、も気になりました(特に漁業関係のもの)。どれだけ地球に還らない材質のものがあふれていて、日常使っているか。ということも改めて認識しました。ゴミの内容として、ペットボトルが多いのは予想していましたが、缶類にビールが少なく、栄養ドリンク系(こ れはビンも同じく)が多かったのには不思議でした。海でカヤックを漕いでいる時、水に溶けない材質のものが浮いているととても目立ち、違和感を感じます。自分自身が日常生活でどういうものを使うか、選ぶか。をもう一度改めて考えるいい機会になりました。実際されているかもしれませんが、近くの学校などで定期的にゴミを拾うイベントなどを企画すればいいのに。と思います」

 Kさん「ゴミ問題に関して、国外からのゴミも多いと思っていたけれど、実際は国内のゴミの多さが思った以上の量で、イメージしていたポイ捨てされやすいものだけでなく、ロープや肥料の袋なども多いなと思った。ただ海にたどり着いただけでなく、風で飛ばされたものなども全てが海に行き着くことを改めて実感した一日でした。海に出る時は少しでもこのゴミが片付くよう持ち帰ろうと思いました。ゴミの項目も細かく分類することで生活上から出るものが多いと改めて実感することで、自分の生活から出るゴミも減らす意識が持てました。海だけでなく、山などでもこういう催しに参加したいです」

 Lさん「陸上で処理しきれず何らかの形で捨てられたゴミの大半は、いずれ海に流れ着くものだとはっきり認識する必要がある。海は出口なしの最終終着点であり、特に分解されない精油製品系のゴミは世界中から出され、半永久的に海を漂う。そうして海流や潮流によって吹きだまりの様な、とんでもなくゴミの溜まる場所ができたりする。たとえばミッドウェーからハワイ沖にかけてプラスティック系ゴミの残骸ばかり集まった『太平洋ゴミベルト地帯』という場所があると聞く。それも日本列島の数倍の面積に該当するという。そんなスケールのゴミ物量が既に環境中に存在するわけだから、海岸線のゴミはいくら掃除しても掃除してもまた次から次へとやってくる。はっきり言ってしまえば、ただ掃除するだけでは無駄なのだ。なのでまずははっきりと、海ゴミ問題は地球環境問題の大きなジャンルのひとつだと認識すべきだろう。解決策としては、①ゴミの発生源を断つ。②プラスティックゴミを使った発電など、逆にゴミを利用する方法を発明する。この二つしかない。その意味でゴミ掃除というよりゴミ調査であるこの活動は有意義だと思う」


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