「海の波うねりとは連続的なリズムそのものであり、全身で波うねりと調和して進んでゆくシーカヤックとは極めて音楽的な経験である」とぼくは10年くらい前からずっと言い続けていますが、最初は結構アホ扱いされましたね。悔しいな、やはり日本のスポーツ系の人は体育会系の流れにある人が多くて保守的で面白くねえのかもな、とホゾを噛んだこともしばしばでした。また逆に文化系の人は身体を使わないインドア派ばかりなのでこれまた分からない。というわけで話の合う人が地球上にはいないもかもしれない、ツライなあと思う日々もありましたが、だんだんぼくのような意見も受け入れられるような世の中になってきつつあり少しずつ居心地がよくなってきた感があります。
これから5年、10年と経つにつれてそういう自然における身体感覚とアートとを結びつける流れはさらに高まってくるように思われます。そして100年、200年とか1000年とか経ってもなくならん普遍のものになるだろうと思います。
「ほう、大きく出たな」と言われるかも知れませんが、別にぶっ飛んだ意見を言ってるわけではなく、大昔は人間はみんなそういう世界観で生きていたのだから、当たり前だと思うわけです。
たとえば縄文時代の人々が作っていた土器の文様とか見たら一目瞭然でわかりますが、あれなんかめちゃグルーヴィにうねってて実に音楽的ですね。自然の内奥のリズムを捉えて作ったなとすぐに分かります。自然のリズムと共に生きてきた人たちの身体感覚が表現されたものだと、一発で分かります。
で、「自然のリズムと調和する」という価値が少しずつ尊ばれるようになった21世紀に入り、その流れで登山、サーフィン、カヤックなどアウトドアスポーツに興じる層が増えてきました。そしてその可能性をもっと探っていこうと考えたとき、やはり「自然のリズムと調和して生きてきた先史文化」に着眼的が向かうというのも当然のことです。
アメリカインディアンの賢者の言葉とか、アボリジナルアートとか、ポリネシアンのスターナヴィゲーションの知恵とかを本読んだりして研究しつつ、自分の興じるアウトドアスポーツにどう生かしていこうかと考えるのは、最高に面白い遊びです。