冬季のシーカヤッキングでは夏季に比べて、より野性世界に身を置いている感覚がリアルだ。冬場、ぼくらはたくさん服を着込むし、コタツ、ストーブ、ファンヒーターなど暖房器具に囲まれてぬくぬくとした生活を送る。寒い季節はできるだけ外界の雨風から「人工的に」肌身をカバーしようとするのが人間という動物の習性だ。
そんな生活パターンに慣れたところで何の覆いもない海上の風に身をさらしてみると、他の季節より「裸感」が強くなる。もちろん実際に裸で漕ぐわけではなく、しかるべきウェアに身を包んで完全武装するのだけれど、なんというか風ひとつがより肌身に染み入るような感じがするし、風にあおられた波頭ひとつひとつがより直接的に心に染み入ってくるような感じがする。
また、プランクトン含有度が著しく減った海水の透明感も、「裸感」をいっそう演出する。
心身ともに着膨れしがちな冬の人工的インドア都会生活が鬱陶しくなったならば、この裸感を味わいに行くのも悪くない。
冬場のシーカヤックでは風裏を選ぶことが特に大事だ。そして太陽の軌道。ポカポカとした太陽光線に包まれながら上の写真のような(湯浅湾・やびつ海岸)透明感あふれる浅瀬などを漂う快感は、ほんとはあんまり他人には教えたくないものである。
※和歌山・湯浅湾のやびつ海岸から宮崎の鼻付近にかけての海岸線は、冬季に漕ぐのがすばらしい屈指のフィールドだ。海水の透明感、断崖絶壁のワイルドな感じ(下の写真のような)、無人感が特筆ものだし、京阪神からアプローチしやすいエリアなので日常の延長で楽しめるのが何よりいい。