プリミティヴクール

シーカヤック海洋冒険家で、アイランドストリーム代表である、平田 毅(ひらた つよし)のブログ。海、自然、旅の話満載。

風をはらんで

2013-04-17 12:47:08 | タンザニア・ザンジバル島カヤックトリップ
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 ※タンザニア・ザンジバル島カヤックトリップの続き記事。当カテゴリの下から順に読んでいくと話の流れが分かりやすいです。 

 ザンジバル南島のウングジャ島はかなり観光で開かれていますが、北島のペンバ島はローカル色濃く、あまりツーリストは見当たりません。その分、ツーリスト同士出会うと、とても仲良くなれます。ぼくがあえてあんまり観光ズレしていない場所を好んで旅するのは別にマニアックとかそういうわけではなく、そんな理由もひとつにあります。

 着いた途端、ボロッちい安宿に投宿していた連中とすぐ仲良くなり、彼らとは帰国した今でも連絡を取り合っています。で、そういうノリは、観光ズレした場所ならばまず無理なんですね。朝飯のあとそれぞれ自分の活動に向かう、晩飯のあと一日の出来事の話や情報交換の会話に花が咲く、という日々を繰り返しました。わざわざこんな辺鄙な島に来るってのはやはりヒトクセあるような人たちで、サイクリストのイタリア人、格闘家のヒョードルにそっくりなロシア人のコメディアン、アフリカを何十年も旅しているけれどなぜか1987年に奈良の新大宮で一年間英語教師をしていたこともあるというオーストラリア人女性、ペンバ島ローカルのクローブ農家と契約しようと交渉中のデンマーク人のオーガニックファームのご一行、水道建設に来ているというイラン人ご夫妻、何やっているのか分からない人だけど暑い中ブーツを履いている超くそまじめそうなベルギー人・・・、だいたい外国人が集まるような宿やレストランは決まっていますので、すぐに知り合いになります。
 「あんた、今日も来たのか? 今日は何してすごしたんだい?」
 ってな具合。

 まあ、色んなくせ者の旅人が居る中で、やはりカヤックを背負って旅している人間っていうのは、並みいるくせ者の中でも、一目も二目も置かれるようです。みんなびっくりしますね。まあぼくもさらっと書いていますけれど、合計35キロもあるような荷物をかついでクソ暑いほこりっぽい滅茶苦茶なアフリカを旅するのはかなりの体力と気力が必要になってくるわけですが、そりゃあこの東洋人は何者なのだろうかって思われますよね、普通。
 ま、土地土地の自然の鼓動をソウルでディープにfeelするってのはぼくら日本人の文化の伝統に組み込まれているものなわけでもありますから自分の中では正統派の旅をしている感覚なんですが、みんなこっちのことをすごい異端児的な変人の、かつすごいスポーツマンだと思っているようでした。しかし、そういうリアクションも面白いものでもあり、いい旅をさせてもらってるなという実感がさらにありましたね。

 ペンバ島南部を漕ぎ回った後、今度は北部のウェテというところに移動し、そこの唯一の海辺の宿に投宿し、また漕ぎ回りました。ペンバ島には結局2週間ほどいましたが、かなりがんがん漕ぎ回りましたね。

 ウェテの宿にはフランス人のカップルが二組いて、なんでもソマリアの横のジブチに配属されている空軍兵士の夫婦たちのようで、その彼らがペンバ島など選んでわざわざ来るというそのシチュエーションが、なんかすげえなと思いました。で、その彼らがダウ船を貸し切って沖のとびきり美しい無人島である「ミザリ島」に行くというので、カヤックごと同乗させてもらうことにしました。それがこれらの海の写真のやつなんですが、無料で便乗させてもらったというのも、このカヤックなんぞというシロモノで旅していることの一目も二目も置かれる特権みたいなもので、ラッキーだなと思いました(というわけで、みんな、面白いからフォールディングカヤックでの旅しようぜ、もっと)。

 で、そのとき乗せてもらったダウ船こそが、東アフリカとアラビア、インド、中国との交易で活躍した時の帆船そのものなのですが(交易の場合もっとでかいやつが使用されてたわけですが)、いやあ、よかったですよ。特に風をはらんで帆が張るときの「バっ」という時のサウンドが、この文化を形成してきた貿易風ってやつの精というのか象徴みたいなものであり、その音を聞く瞬間ひときわの旅情をかき立てられましたね。
 「バ」っというそのサウンドだけで、様々な人たちが行き交い、悲喜こもごもが繰り返されてきた歴史の手触りのようなものが胸に去来して、胸がキューンとしていてもたってもいられなくなってしまいました。そしてどこまでも、世界の果てまでも旅したくなってしましました。
 「バ」っという帆が風を孕むその音だけで。

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 ダウ船でカヤックごと連れて行ってもらった沖の無人島ミザリ島は美しいペンバ島の海の中でも特に美しかった。

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 もちろんミザリ島もカヤックで一周した。一周一時間半ほどでした。途中でシュノーケリングもしつつ。

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 ダウ船は帆をたたむとこんな感じ。やはり帆を張ってこそ雰囲気が出る。

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 沖の無人島であるミザリ島まではダウ船で片道2時間くらいで、その間たくさんの小島に出くわす。中でも幽霊が出ると言って地元民が近づかないという島の話などが面白かった。まじでみんな怖がっているようだ。イスラム教文化圏では幽霊等という存在はこの世にもあの世にもいないことになっているが、アフリカや東南アジアのイスラム教徒は絶対唯一神であるアラーを信じつつ、霊の存在や魔術なども信じている。つまり矛盾した2つの考え方を内包している文化なわけで、寛容性なのかなんなのか、そこのところも面白い。

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