プリミティヴクール

シーカヤック海洋冒険家で、アイランドストリーム代表である、平田 毅(ひらた つよし)のブログ。海、自然、旅の話満載。

気をつけたい

2022-04-26 11:47:00 | 日記
知床の事故について心痛むと同時に色々考えさせられる。海を知らずして海の仕事(特に観光系)をする人が増える世の中の流れの中で起こった象徴的な出来事のようにも思える。

 海に出るときに最も大事なのは状況判断力だけど、まず現場では感覚や勘や想像力をフル稼働させて先々を推測していく必要がある。感覚や勘などと言うと、根性論あるいはスピ系に思われがちだけど実は逆で、自然の「変化の気配、予兆を感じる」というのは、抽象や嘘の介在しない、最も物理的で科学的なものだ。さらにそこから想像力を駆使して先々を読んで危険を回避する。だけどそれはさまざまな経験を重ねつつ、操船から観天望気に至るまで意識的に研鑽を積んでいかないと養われない。昔の「海の男(女)」と言われる人たちはみな、そうやってナビゲーション能力を身につけていった。

 だけど今は船の性能も良くなり、また天気予報の精度やGPS機能も上がっているので、良くも悪くも身体感覚やイマジネーションを使う必要がなくなっている。漁師ですら、言葉の端々や目の動かし方から素人くさいなと感じる人も結構多い。カヤックやSUPなんかでも、検定や講習を数回受けて修了すれば、ハイもうガイドです、という型枠が出来上っていて、実際そういう連中の方が多数派だったりする。さらに会社組織の社長は現場を知らず、売上にしか目が行かず、現場の船長やガイドは「催行中止」する権限を持たないというケースも多い。今回の場合、海水に手を浸けてその冷たさを感じたこともなかったのではないか?

 大局的に見ると、経済的パイが小さくなった日本社会で効率効率一辺倒の競争を余儀なくされ、余裕がなくなり、どの業界も職人気質が尊ばれなくなった世相の中で、起こるべくして起こった象徴的な事故だと思われる。しかし海や自然は、世相や社会状況と関係なく、昔も今も同じ風が吹き、同じ波が立つ。やはり海に携わるプロは職人、そしてアーティストでなければいけないのである。たとえばカヤックガイドなどは、ホームのフィールドを隈なく知ると同時に色んな海の色んなシチュエーションに身を置いた経験が必要で、最低1ヶ月は海旅をした経験がないと、もうお話にもならない(だがこの業界では、海旅経験のないガイドの方が多数派になっている)。

 しかし、気をつけなければいけないのは、どんなに経験を積み重ねた熟練者できちんとしていても事故を起こす可能性は常に孕んでいて、逆に超ドシロートで何も知らなくてズサンの極みだったとしても無事何事もなかったように帰ってくるというケースもあり得るということ。海や自然はそれほど厳しい世界でもあるということだ。逆にだからこそ面白くもあるのだけど、そこのところも踏まえた上で気をつけたい。

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セイリングカヤック

2022-04-26 11:33:00 | セイリングカヤック








 
 何ができるか、色々試し中。

 このセーリングカヤックは、前後左右で計4人乗れる(外海には2人だが)し、風を味方につけるとパドリングよりも距離を稼げるので、漕ぐことはちょっと、という人もそこそこの距離をツーリングできる。すると貸切での周遊も可能になるし、初心者ツアーでは行けない穴場の浜でのランチやシュノーケル、あるいはキャンプも射程距離に入る。

 また旅するにおいても可能性が広がる。シーカヤック旅には50キロ問題、あるいは70キロ問題というのがある。1日、日中漕ぎ続けて行ける距離の限界がそれくらいということで、さらに風や波の状況によってはそれ以下になる。すると行ける範囲も限界が出るし、さらに真面目にひたすら漕ぐばかりを余儀なくされ、途中で漁村に寄って漁師に話しを聞いたり、寄り道する余裕がなくなりがちになる。もちろんそういうことも想定して旅するわけだけど、その限界を超えた旅をしたくなることもある。特に、訪れた先の陸もいろいろ見て回って文化に触れる旅を。

 そういうことを考えての導入。もちろん限界を超えると新たな危険性も出てくるわけだけど、それも含めていろいろ試し中。


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護岸20キロ

2022-04-26 11:09:00 | イベント












 先日ワケあってコンクリートの護岸を20キロほど漕いでコンクリート酔いした。

 これがまだ経済効果を生み出しているのなら意味は分かるが、高度成長期もとうにすぎ、重化学工業もすっかり斜陽になって埋立地そのものが有効活用されずほっぱらかしになっている。それもあいまってさまざまな社会的矛盾が我が身にのしかかってくるようで、普段の何倍も疲れた。

 いっそのこと、万葉集に詠まれた時代の自然海岸に戻す公共事業をやったらどうだろうか? それなら別に利権まみれでも天下りの温床になってても構わない。

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イベント無事終了

2022-04-26 10:56:00 | イベント









 先日行った、探検家の関野吉晴氏を招いての「海のグレートジャーニー」イベントは盛況にて無事終了することができました。

 海のコンディションにより、1日目と2日目を逆にして開催しましたが、逆にそれがよかったのか、映画「縄文号とパクール号の航海」を観た後で、よりモチベーションとリアリティが高まった上でのシーカヤックツーリングとなったので、より得るものが多かったと思います。

 関野さんは言わずとしれた探検家ですが、ある場所からある場所へと踏破する、というだけでなく、むしろそれよりもその道中で出会う出来事や人を大事にしている。特に出会った人との関わりを、その後も続けてゆくところが他にはないユニークさで、ゆえにべつに冒険や探検に興味がない人にもファンが多いという由縁でもあるかと思います。

 身体経験を通したイベントの中で、よりお話が心に沁み入り、参加者それぞれが良い者を持ち帰っていただけたら幸いと思い開催したのですが、無事に終了できてホッとしています。そして同時に、このようなイベントをこれからもやっていきたい、やっていくべきだなと実感したのでした。

 カヤックやアウトドアを、レジャーだけではなく、文化の領域に押し上げていくために。

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