プリミティヴクール

シーカヤック海洋冒険家で、アイランドストリーム代表である、平田 毅(ひらた つよし)のブログ。海、自然、旅の話満載。

一瞬先のベストを探るという行為

2017-11-24 23:42:59 | マインドフルネス

Robert Glasper Trio - LIVE at The Village Vanguard - Double Black

 例えばシーカヤックで数日以上の旅に出ている最中、感覚がヴィヴィッドになって色んなものからインスピレーションを受けますが、どちらかというとアウトドア系の本とかメディアよりも、音楽の演奏に触発されることが多い。
 言語化できない心のひだに触れるものだからだろう。
 海上で感じている感覚も9割方、言語化できないものだ。

 シーカヤッカー目線、シーカヤッキング感覚で特に最近インスピレーションを受けるのは、現代のジャズ。と言っても俗に言う「モダン・ジャズ」ということではなく、まさに「今のジャズ」。
 今、ジャズは新しく、未来を感じさせる、面白いものがたくさん出ている。

 ロックもヒップホップも全く目新しいものがなくなった昨今だけど、そんな中、今の先鋭的なジャズマン達は過去のジャズはもちろん、ロックやヒップホップの歴史的流れも踏まえ、ワールドミュージックへの造詣も持ち、テクノ系の音も咀嚼しながら、即興で音を紡いでゆく。
 ジャズの本質を残しながら、音楽表現として全く新しい次元にシフトさせようという試み。
 上からなぞったような予定調和ではなく、次の瞬間の未知に賭けるチャレンジ精神と遊び心。賢くて、柔軟で、引き出しが多く、多様性主義であること、音楽への愛情に貫かれていること、革新的実験と同時にエンタテイメントであること。それらは指使いのタッチ一つで伝わってくる。

 特にこのロバート・グラスパーは衝撃的だと思う。
 今一番ビビーンとくる。
 音楽好きのシーカヤッカーならば、このよさ、よく分かると思う。

 シーカヤッキングも、旅に出たら、瞬間瞬間が即興で、誰も一切お膳立てしてくれる者助けてくれる者はいず、一瞬先は未知の世界だ。
 あらゆる可能性の中から一瞬先のベストの一音を探るという行為と、無限に広がる大海の中のベストな一筋を自らナヴィゲートして進んでゆく行為。そこに相通じる部分があるのだけれど、これはその最高峰のひとつ。

 ロバート・グラスパーを聴いていると、世界はまだまだ豊かで、未知に溢れているということを教えてくれる。


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山間の水辺の素顔

2017-11-24 22:07:40 | 

 この時期恒例の名張・青蓮寺湖のカヤックツアーも先日、無事開催・終了しました。

 前日夜半から当日朝にかけて雨が降り続けましたが、ツアー開始時間までにはすっかりやんでくれました。
 西高東低の気圧配置になり、北西風が強まりけっこう肌寒くなりましたが、それもまたこの時期の「自然の鼓動」の味わいだと言えます。陽が差すと暖かさに包まれ、日が陰ると再び、谷間を走る冷たい風に身体を引き締められる。一日その繰り返しの中で、そしてピーンと張りつめたような静けさの中で、木々の葉のパッチワークのような色合い、静寂を割って水面からいきなり飛び立つ水鳥、風が湖面を渡っていくときのさざ波、香落渓の断崖絶壁の背面を彩る青空と、草原を走る動物を想わせるようなちぎれ雲の速い流れ、山の木々の合間からふと出現する滝の白い筋と谷間に響くしぶき音、・・・。山上湖というひとつの閉鎖空間の中で、その湖面に身を置いた者にしか決して知ることのない、瞬間瞬間に立ち現れては消えてゆく水辺の素顔を、臨場感たっぷりに垣間見ることができました。
 そこでは、ちょっとした「寒さ」もまた、五感をより鮮やかに際立てる「彩り」のようなもの。

 地味ではあるけれど、だからこそ良い、カヤックならではの、豊かな時間の流れを噛みしめるような一日でした。


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