Robert Glasper Trio - LIVE at The Village Vanguard - Double Black
例えばシーカヤックで数日以上の旅に出ている最中、感覚がヴィヴィッドになって色んなものからインスピレーションを受けますが、どちらかというとアウトドア系の本とかメディアよりも、音楽の演奏に触発されることが多い。
言語化できない心のひだに触れるものだからだろう。
海上で感じている感覚も9割方、言語化できないものだ。
シーカヤッカー目線、シーカヤッキング感覚で特に最近インスピレーションを受けるのは、現代のジャズ。と言っても俗に言う「モダン・ジャズ」ということではなく、まさに「今のジャズ」。
今、ジャズは新しく、未来を感じさせる、面白いものがたくさん出ている。
ロックもヒップホップも全く目新しいものがなくなった昨今だけど、そんな中、今の先鋭的なジャズマン達は過去のジャズはもちろん、ロックやヒップホップの歴史的流れも踏まえ、ワールドミュージックへの造詣も持ち、テクノ系の音も咀嚼しながら、即興で音を紡いでゆく。
ジャズの本質を残しながら、音楽表現として全く新しい次元にシフトさせようという試み。
上からなぞったような予定調和ではなく、次の瞬間の未知に賭けるチャレンジ精神と遊び心。賢くて、柔軟で、引き出しが多く、多様性主義であること、音楽への愛情に貫かれていること、革新的実験と同時にエンタテイメントであること。それらは指使いのタッチ一つで伝わってくる。
特にこのロバート・グラスパーは衝撃的だと思う。
今一番ビビーンとくる。
音楽好きのシーカヤッカーならば、このよさ、よく分かると思う。
シーカヤッキングも、旅に出たら、瞬間瞬間が即興で、誰も一切お膳立てしてくれる者助けてくれる者はいず、一瞬先は未知の世界だ。
あらゆる可能性の中から一瞬先のベストの一音を探るという行為と、無限に広がる大海の中のベストな一筋を自らナヴィゲートして進んでゆく行為。そこに相通じる部分があるのだけれど、これはその最高峰のひとつ。
ロバート・グラスパーを聴いていると、世界はまだまだ豊かで、未知に溢れているということを教えてくれる。