プリミティヴクール

シーカヤック海洋冒険家で、アイランドストリーム代表である、平田 毅(ひらた つよし)のブログ。海、自然、旅の話満載。

一番大切なこと

2011-06-12 14:45:09 | 震災や原発に関連する事
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 今日は待望の湯浅~田辺50キロツアーの日だったんだけど悪海況のため中止にしました。
 こんな日は何をしているかというと本を読んだりデスクワークしたり色々です。
 というわけで前回記事の続きです。

 特に最近は原発関係の本読みまくってるんですが、読めば読むほどヤバいなと思う。地震の活動期に入った今、即刻原発をストップしなければとんでもないことになる危険性が極めて高いぜ、という思いが募っている。

 じゃあ発電はどうすんねん、原始時代に戻るんかいな? という意見がふつう返ってくるが、実は火力発電で全部まかなえるらしい。というか、元々火力で全然OKなんだけど原発を使いたいがために火力発電所の稼働率をわざと落としているというのが実態である。それを稼働させるだけで、計画停電も、節電すらもしなくていいという指摘がある。
 え、そうだったの? とあきれ返るほど簡単な話だ。

 じゃあなぜ原発にこだわるのか。
 早い話が原子力によって潤う方々の利権構造ができているからである。
 国、産業界、政治家、御用学者がタッグを組む「原子力村」が強固だからだ。
 別に原発が優れているわけでも、クリーンなわけでも、それがなきゃ電気が足りなくなるわけでもない。
 原発が廃止されれば彼らが困るから廃止しないだけの話である。

 野田ともすけなどの本を読んでるカヌー・カヤック愛好家はある程度知ってるだろうけど、海・山・川をコンクリート積めにする公共事業しかり、日本は政・官・財界の「鉄のトライアングル」構造が強固にできあがっていて、ちょっとやそっとでは崩れない。その上、司法の独立性があいまいなので、国家がかりの「鉄のトライアングル」の大犯罪を裁ききれない。たとえ地球を滅亡させるスーパー化け物犯罪でも裁ききれない。
 その点、日本は実は民主主義国家ではないのである。

 ほんとは原発を即刻廃止しても全く困らない。
 実は電気は原発なしで十分足りているという話もある。
 http://www.youtube.com/watch?v=PLJVLul6Wz0 

 もちろん太陽光や風力や地熱発電など自然エネルギーに即移行すれば一番理想だけれど、実際問題、急にそいつでは賄えない。むしろ「やはり原発がなきゃダメだろうがバカめ」という口実にされる恐れがある
 まずは火力をフル稼働すればいいんだよ。
 それも石油ではなく天然ガス。

 天然ガス・コンバインドサイクルの発電方法が今のところ一番現実的で、しかもクリーンで効率がよいようだ。「結局火力だろ、じゃあ温暖化の原因である二酸化炭素の排出量はどうなりまんねん?」 という反論も出ようが、実は最も温暖化の原因を作っているのは原発からの「温排水」であるとも言われている。なんせ1日に出す温排水の熱量は広島型原爆の100個分もあるのだから。それに比べればガスコンバインドは遥かに熱効率のよい発電だ。また、必ず化石燃料の埋蔵量の話になるけれど、メタン・ハイドレードやコールヘッドメタン、タイトサンドガス、シェールガスのような天然ガス田が世界各地で新しく次々発見され、日本近海にも100年分くらいのメタン・ハイドレードが埋蔵されているという。

 もちろん天然ガスコンバインド発電が究極にいいとは思わんけれど、
 最も早急に大切なことは原発を止めることなのだ。
 次の原発事故を絶対に起こしてはならないのだ。
 そうなれば何もかも、日本人全員試合終了なのである。

 太陽光や風力は、急に止めさせる力はない。
 火力でしのぎつつ、自然エネルギー発電の可能性を追求しまくっていけばいい、
 なんでそんな簡単なことをみんな言わないのか、不思議に思う。

 いずれにせよ、「原発止めたら電気どうすんねん、原始時代に戻るんかいな?」なんて意見はとてつもなく恥ずかしい無知なたわごとだと思うべきである。


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10万年後の安全と今現在の危険

2011-06-12 11:38:29 | 震災や原発に関連する事
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 ちょい前に「10万年後の安全」というドキュメンタリー映画を見た。
 原発から出る汚物に関する映画だ。

 原子力発電はクリーンな発電方法だと言われ続けてきたが詭弁もいいところで実際は大量の高レベル放射性廃棄物(いわゆる「死の灰」)っていうとんでもなくダーティーな汚物が出る。
 もちろんその汚物をどうにか処理しなければならない。
 で、宇宙に捨てに行けばいいとか深海底に沈めたら大丈夫だとか、過去色々議論されてきたけれど、宇宙に捨てに行くロケット発射の際に事故・爆発でもあったら人類が終わっちゃうし、海も海底火山や深層水の流動などの問題がありすぎる。で結局、岩盤を削って300m以上地中深くに埋めるという地層処理が、世界中で採用されるようになった。

 この映画は、フィンランドに建設中であるオンカロ永久地層処分場の施設の中に実際に潜入し、このプロジェクトの実行を決定した専門家たちに、毒性が消える10万年後までの安全性を問いかけるのがテーマだ。
 10万年だぜ。
 たとえば10万年前といえばネアンデルタール人の時代だ。

 廃棄物が一定量に達すると完全に閉められ、二度と開けられることはないというけれど、
 果たしてその保障はあるのか?
 数万年後そこに暮らす人たちにその危険性をきちんと警告できるのか?
 結局どうなるのか、専門家も誰も分からない。

 ということでかなり色々考えさせられたけれど、
 ふと我に返ると、そんな心配をする以前に現在の日本の状況はもっともっと深刻だ。
 むこうは10万年後だけれど、こっちは今現在の話だからである。

 日本の原発で出た高レベル放射性廃棄物はどこに行くのか?
 実は日本には地層処理場がない(一時高知県の東洋町が候補として挙がっていた)。
 で、青森の六ケ所村の再処理工場に行く。
 そこでウラン235とプルトニウムを取り出し、新しい燃料として再び使えるようにする。
 いわばリサイクル工場である。
 しかし実のところは、地震国で地層処理できる最適地もないから、「リサイクル」という一見聞こえのいい名目を採用しているだけなのだろう。そいつのリサイクルは極めて危険かつ難しい作業なので、実際には無理なのだ。
 
 案の定、再処理工場は機能しておらず、
 試験運転さえも完了できずほっぱらかしになっている状態である。
 そう。リサイクルも地層処理もできず、とりあえずプールにためてごまかしているのである。

 そうして全国の原発から集まってきた「死の灰」は、
 再処理もされずたまりにたまって、貯蔵プールは満杯寸前になっている。
 貯蔵プールの汚物キャパは3000トンだが、
 もうすでに2727トン入っていて残り173トンしかキャパがないのだ。
 どういうこっちゃねん、まったく。

 そんなわけで六カ所村には運べず、
 全国の原発のプールでとりあえず汚物をため込んでる状態が続いている。
 ちなみに福島第一原発の四号機の水素爆発は、
 冷却できなくなったそいつのシワザだったというわけだ。

 福島第一原発はもちろんヤバいし、
 原発震災に見舞われる可能性がある全国の原発もヤバいけれど、
 最もヤバいのは六ヶ所村の再処理工場で、
 こいつが事故を起こせば日本は消滅、
 世界中が深刻な被ばくすると言われている。

 そしてヤバいことに、3月11日の大震災の約1ヶ月後の4月7日に最大余震があり、その時六ヶ所村再処理工場では外部電源が遮断され非常用電源でかろうじて冷却できた、というドエライ事故があった(事象ではなく、事故ときちんと言わなきゃいけない)。震災や福島原発のドサクサにまぎれてあんまり騒がれず、マスコミもサラっとしか言わなかったけれど、とんでもない話だ。毎日毎日福島原発のニュース見てると感覚がマヒしてくるものがあるけれど、とんでもないことをとんでもないと思う常識的感性を失ったら人間、終わりだと思う。まあこんなこと、自然を愛でるこんなブログ上で書きたくないけどね。
  
 フィンランドの最終処理場は過去2億年ほど地層が動いていない安定した岩盤に作られているけれど、こちら日本の足元はガンガン揺れる断層・亀裂だらけの若い地層である。で、実際のところ日本の原発の耐震設計も結構いい加減らしい。福島のメルトダウンも想定外の津波が原因だと言われているが、実は地震の際に配管が断裂したからだと指摘する人も多い。
 六ヶ所村の処理場の下にも活断層があり、またプルトニウムとかがガンガン流れている配管が複雑に絡み合っている。
 そいつが破断してドカーンと福島第一みたいなことになったら・・・・?
 イマジンしたくないよね。
 
 むこうは10万年後だから悠長だ、とはもちろん思わないけれど、次どこかの原発が事故起こすと今すぐに国が滅亡する日本は、その比ではない。将来の夢も仕事も趣味も恋人も家族もキューっと一杯飲む冷えたビールも・・・、現在未来だけでなく過去の思い出とかおれたちのなにからなにまでが終わりである。地震が活性化している今、日本の原発は、「そのうちに」ではなく、「即刻」とめなければならない。
 映画を見て改めてそう思った。

 ※写真はそんな話とは全く関係ないカヤックトリップ時のもの。アラビア半島。 


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