プリミティヴクール

シーカヤック海洋冒険家で、アイランドストリーム代表である、平田 毅(ひらた つよし)のブログ。海、自然、旅の話満載。

リアルイメージ

2006-05-17 08:17:52 | インポート

P1010097

一昨日、今年初めて海における夏のサウンドを聴いた。

 ここのところいわゆる「梅雨の走り」状態で、南海上に前線がチンタラ停滞している。遥かかなたのそいつから届けられたうねりが湾内にも入ってきていて、砂浜や岩礁にいっせいに押し寄せドカーンとワイルドに砕ける。その際の、何万もの気泡が天に向かって弾けるようなサウンドがなんというか、フィーリングの世界なんだけど、夏を「リアルイメージ」として喚起させる音だった。
 
 梅雨前線の発生原因は2つある。
 1つ目は、インド洋から中国大陸に向かって吹く海風がヒマラヤ山脈を迂回してきたモンスーン風と、太平洋高気圧から中国大陸に吹き込もうとする風とが東シナ海でぶつかって上昇気流が巻き起こることによってできるものだ。
 2つ目は、上空を走るジェット気流がヒマラヤ山脈を避けてちょうど川の流れの真ん中に石があるような感じで左右に分かれる。そしてその流れが日本上空で再び合流するのだけれどそれはすっかりリズムを乱してしまっていて、渦を巻いたり、よどんだりして前線となる。
 いずれの梅雨前線も、北半球が夏に変身する際のサインだ。
 
 そんなスケールでかいルーツを持つ前線から届けられたうねりのみが持つ独特のサウンドが目の前ではじけ、全身の細胞をバババババーっと駆け巡る。同時に真夏の突き抜けるような青空とか入道雲とか海水が鼻に入ってツーンとする子供のころの感覚記憶などがたちあがって、なにかしら泣けてきたのだった。
 プラネットアース(地球)、
 TERRA(水の惑星)、
に対する、センチメンタリズムとロマンティシズムとポジティヴィティがまざりあったような慈しみのエモーションだ。

 ちなみにテレビや映像が喚起する広告的イメージを「マスイメージ」と呼ぶが、そいつに対して自然のダイナミズム現場に全身をさらして細胞でfeelしたところから立ち上がるイメージを、リアルイメージと呼んでいる。
 リアルイメージの方が大切である。


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