Islander Works

書いて、読んで、人生は続く。大島健夫のブログ

見られ続ける。

2012-12-06 18:50:22 | 出たもの
ステージの上では、ごまかしのきくものと、ごまかしのきかないものとがあると思う。

ごまかしのきかないものとは、その人から滲み出てくる、その人が普段どんな姿勢で生きているか、という部分だ。勇敢な人からは勇敢さが滲み出る。ここ一番で前に出る人からは、ここ一番で前に出る空気が滲み出る。苦しくても何とかしようとする人からは、苦しくても何とかしようとする空気が滲み出る。同情を買ってもらおうとして生きている人からは同情を買ってもらおうとする空気が滲み出るし、ほどほどで流そうとする人からはほどほどで流そうとする空気が滲み出る。思いやりのある人からは思いやりが滲み出、自分のことしか考えていない人からは自分のことしか考えていない空気が滲み出る。どこかしら、滲み出る。それは時には残酷なことだと思う。

「見られて」いるというのは恐ろしいことだ。ステージを見上げる観客は、ステージの上の表現者が意図して表現しようとする者よりもずっと多くのものを、一瞬のうちに見てとってしまう。

2012年12月5日、Poe-Tri Vol.54。今年最後のPoe-Tri。2012年のPoe-Triは、移転であたふたした11月を除く全ての月で前年同月を上回るお客様にご来場頂いた。それはとりも直さず、より多くの人が、上に述べたような形で、そこで起こったことを見、何らかの判断を自分の中で下したということでもある。その重さを噛み締める。

今回のオープニングは、長い間原宿JET ROBOTでのJET POETを裏方として支えてきたケイコ


「食べる」ことをテーマにした4篇を、トータルアルバムのように朗読。揺るぎのない、というよりも、揺るぎつつも自らが暮らすこの世界を懸命に生きていこうとする姿勢がそこにはあった。私はおそらく数十回彼女のステージを見ているが、この日のパフォーマンスが私の中ではベストだった。

続いてはライヴイベントにキャスト枠で出演すること自体が初めてという、デビュー戦の工藤ヒロツグ。


自分の愛するものに没入し、ブラインドコーナーに向かってアクセルを踏み込んでいくかのような、硬質な魅力に満ちた朗読。彼のような肚の座ったストレートな表現をするタイプは昨今のポエトリーリーディングシーンでは実は非常に稀有である。

後半のキャストは、毎年12月になると出演して頂いている広瀬犬山猫。


好評発売中の短歌集『バカ』を引っ提げ、新作詩を中心とした朗読。抜群のスキルによって実現された声と言葉の構成力と、一見アングラな内容でありながら視点・切り口ともに知的なテキストは、観客を決して弛ませることがない。

私は「恋人たちの詩」「砂で山を作る」の2篇を朗読した。



オープンマイクに登場したのは、

北村しいこさん


後藤理絵さん


三木悠莉さん


死紺亭柳竹さん


ともちゃん9さいさん


晴居彗星さん


菊池奏子さん


村田活彦さん


笹田美紀さん


あしゅりんさん


ジュテーム北村さん


MELODY KOGAさん


という12名の皆様であった。詩のボクシング全国王者が二人いるし、懐かしい顔もいるし、いつもながらバラエティ豊かな顔ぶれだった。

Poe-Triは2013年に入っていく。

Vol.55は1月9日、水曜の開催だ。

皆様、また近いうちに。

ありがとうございました。