「いくさんのお部屋」つぶやきNo.3

日頃の何気ない日常をつぶやいています。

素敵な出会いの山旅

2005-10-03 16:09:49 | 登山
4-5年ほど前に「岳人」に載った池の平から見た平の池とチンネの紅葉の写真が胸に焼き付き、行きたい行きたいと思いながらもいろんな事情でなかなか行けなかった。
今年こそは必ず、と密かに計画を練っていた。最初の計画では室堂から北方稜線を越えて池の平にたどり着くという計画だった。これも数年前から出来上がっていた。
意を決して、相棒を会で募ったが誰も来てくれなくて、単独となった。天気予報は悪いが、これを逃すとまた一年モンモンと過ごすことになりかねない。一日早めて運を天に任せて出発した。
結果は初日だけ晴れ。とはいっても雲の多い日だった。次の日の朝はどんよりとして、厚い雲が劔の上部を覆っていた。稜線を隠した北方稜線を目で追いながら、まだ未練はあったが断念して劔沢を下った。真砂沢ロッジに着いた頃には雨がポツポツ。それからは3日目(10/2)の下山まで雨が降り続けた。自称晴れ女の私としては、これからは自惚れはよした方がよさそうだと反省した。
雨で台無しとなった裏劔の紅葉だったが、時期的に色付きも今年は遅いということもあり、天気は待っても今ひとつ良くならないという予報なので、晴れ待ち停滞組の人を尻目にさっさと下ってしまった。これが、ガスの下に素晴らしい紅葉が隠れているというのなら、もう少し待ったかも知れない。
私は今回のような、単独小屋泊まりという山行形態は今まで全くしていなかったので、とても楽しかった。初日に時間があったために室堂平をうろうろしたり、ぼ~っと時間を忘れて風景を眺めてたり出来たのは、単独のお陰でだった。
そしていろんなところでいろんな人と出会えたのもいい思い出となった。剣山荘ではやはり単独の64歳の女性と同室で楽しく山の話で盛り上がり。池の平では写真目的で何日もの停滞の人とも出会え、同世代の女性3人のにぎやかなパーティーともいろいろ話せ、中年女性はほんとうに元気だなぁ~、と感心した。
もっとすごい出会いは、劔御前小屋にもう少しという登りの登山道で、軽やかな足取りで上から下ってきたかなり年輩の女性が目が留まった。見覚えがある。すぐに「Kさんですか?」と聞いてみた。「そうですけど、何で知ってはるのん?」と反対に質問された。「70歳で屏風を登らはったKさんは、有名ではありませんか? 今お幾つですか? 山も歩いたはるんですか?」と私の矢継ぎ早の質問にも、いやがらずに答えてくれる気さくな人だった。
kさんには、以前2回ほど会っている。1回目は大阪パンプで遠目に見ただけだった。私が星田に通い初めてなかなか登れなかったときに愚痴ると、常連のおっちゃんから「大阪に70歳を過ぎてクライミングしている女性がいて、屏風も登ったらしいで…。入れ歯をカタカタ言わして登っているさかいに、カタカタちゃんと呼ばれてるらしい! いくさんもまだまだ若いんやし、負けてたらあかんでぇ~」といわれ、そんな凄い人がいるんだったら会ってみたいと思っていた。パンプの時は「あぁ~この人なんやなぁ~」と気がついたが声は掛けられなかった。
それからだいぶ経って数年前だが、神戸三宮にICI石井スポーツが関西に初めてオープンした。その日バーゲン商品を目指して行ってみた。目的のクライミングシューズを見ていたら、登山靴を履いたお婆さんが私の手にしている靴を見て、「それ底が堅すぎでよ~ないよ!」と話しかけてきた。その時に初めて私も噂のKさんであることを本人に尋ねて確認した。その時も、店員がKさんが手にしてるクライミングシューズを見て「それ、誰が履かはるんですか?」と訪ね。「私やがな!」と答えていたのを内心、面白がって聞いていたことを思い出す。その時のことを、今回話したが「悪いけど覚えてへんわ」とおっしゃっていた。
二人並んで登山道の脇に座りこみ、一時間近く話し込んでいた。みんなKさんをじろじろ見ていく。中には話しかけてくる人もいる。私が自慢してもしょうがないのだが、つい「この人大阪で有名な人なんですよ」といってしまう。
ロッククライミングはガイドクライミングでだが、山は単独で年中歩いているということだ。ますます感心してしまう。「次の抱負は明星山のフリースピリッツや」と軽くおっしゃっていた。まだまだやる気十分。私は強い刺激を貰い、別れを惜しみながら劔御前に向かった。
今はもう80歳をいくつか過ぎたという。ほんとうに凄い人だと思った。とうてい私には真似は出来そうにもないが、近づけるようにもう少し頑張ろうと気力を貰った。
紅葉と天気は外れだったが、思い出に残る山旅となった。