一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

3月25日のLPSA芝浦サロン・相矢倉

2011-03-26 12:47:49 | LPSA芝浦サロン
きのう25日(金)のLPSA芝浦サロンは、松尾香織女流初段の担当だった。震災後初めての金曜日開催だが、節電の余波で、LPSAのホームページには「夜7時半クローズ」との告知があった。
松尾女流初段はファンランキングの6位。当日仕事の身としては、行くべきか行かざるべきか微妙なところだったが、こういうときこそ、悩みのなさそうな松尾女流初段の笑顔を拝むべきと考え、伺うことにした。
震災後は、節電と称してウチの仕事も4時仕舞いになったのだが、きのうは終業間際に材料の入荷があったりして、終業が40分延びた。したがって、サロンに入ったのは5時20分近くだったと推察する。
本日手合い係の大庭美夏女流1級と挨拶を交わす。その先では、松尾女流初段とHon氏が談笑中。この時間、ふだんなら指導女流棋士は休憩で席を外しているから、当事者がいらしたのは珍しい。その奥ではWパパ氏が某氏と一般対局を行っていた。
震災後だが松尾女流初段は屈託なく、
「(芋焼酎勝負は)負けないからー」
とか言っている。悩みがなさそうで、ホントに羨ましい。
室内が暗いが、それはLPSAも節電を行い、一部の蛍光灯を消しているからだ。そのために、ふだんは中央にある指導対局のスペースが、窓際に移動していた。駒込金曜サロンの第1部が窓際スペースだったので、このレイアウトはちょっぴり懐しかった。
私が予約した6時の回までまだ時間があるが、対局は私とHon氏だけだったので、前倒しして、指導対局に入る。きのうの松尾女流初段は絶不調で、ここまで指導対局全敗とのこと。しかし指導対局なんて何回負けてもいいのだ。本業の対局で勝てば、本人もファンもいちばん嬉しい。
途中から新潟氏も入り、3面指しになったが、私の将棋が一番先に終了した。
このあとはWパパ氏との一般対局。Wパパ氏とは金曜サロンで1局指したきりで、意外に対戦が少ない。前局はWパパ氏のゴキゲン中飛車に私が手厚く指し、中盤でかなり優勢になったが、終盤でひっくり返された。Wパパ氏は男性プロを練習将棋で破ることもある強豪だが、勝負は時の運である。私にも勝機はあるとフンでいた。
大庭女流1級が、
「女流王座戦に私もエントリーします」
という。それは構わないが、「マッカラン勝負」に参戦したいらしい。
先日私がブログで告知をしたのは倉敷藤花戦のそれで、引退した大庭女流1級は、LPSA女流棋士の誰が勝ち上がるかをBetするしかないのだが、今回は特例を認めてほしいということらしかった。
まあ11日と18日は私も芝浦サロンに行けなかったことだし、大庭女流1級のみ、女流王座戦の特別マッカラン勝負を受けることにした。そこでこちらが出した条件は、「4月30日に行われる東日本アマチュア予選で、予選通過をすること」。これをクリアすれば、大庭女流1級にマッカランを進呈する。
プロがアマにまじって対戦するのだから予選突破は容易に思われようが、いまや女流アマ棋界も層は厚い。「引退してから強くなった」大庭女流1級といえども、予選通過は至難であろう。しかし引退女流棋士の再チャレンジには夢がある。大庭女流1級の奮闘を期待したい。
Wパパ氏との対局に入る。チェスクロックを使い、持ち時間は15分だった。
Wパパ氏の先手で、▲7六歩△3四歩▲2六歩△8四歩▲6六歩。Wパパ氏の居飛車明示に私が横歩取らせに誘導したら、それはイヤだと▲6六歩。6日の大野教室での小学生との一戦もこの出だしで、後手の私はここから中飛車・右玉に変化したが、ものの見事に粉砕された。そこで今回は、大人しく矢倉に追随することにした。
ほぼ定跡どおりに進んで、3五で銀交換が行われた局面。この駒の配置を記す。

先手・Wパパ:1八香、2五桂、2六歩、3五飛、4七歩、5六歩、6七金、6八角、7六歩、7七銀、7八金、8七歩、8八玉、8九桂、9七歩、9九香 持駒:銀、歩
後手・一公:1一香、1五歩、2一桂、2二玉、2三歩、3二金、4二銀、4三金、4四歩、5四歩、6三歩、6四角、7四歩、8一桂、8二飛、8五歩、9一香、9五歩 持駒:銀、歩3
(▲3五同飛まで)

ここで私は△7三桂と跳ねたが、疑問。△2四銀と受ける一手だったようだ。これならWパパは▲6五飛の予定だったというが、それは△7三桂▲6六飛△9六歩▲同歩△9八歩▲同香△9七歩▲同香△同角成▲同桂△6四香の進行が予想され、これからの将棋だった。△2四銀には黙って▲3八飛と引かれ後手がおもしろくないと思ったが、そうも言ってられない状況だったのだ。
本譜はここからWパパ氏の猛攻が始まる。

▲1二歩△同香▲1五香△同香▲1三桂成△同桂▲1五飛△2四銀▲1四歩△1一香▲2四角△同歩▲4一銀

たぶん教科書どおりの攻めだろうが、▲1二歩とひとつ叩いて▲1五香は、私が1歩ドクになるから指せると思った。△2四銀▲1四歩には△1五銀と飛車を取りたかったのだが、▲1三角成△3三玉のあとに先手からの攻めがいくらでもあり、取り切れなかった。
▲1四歩に私は、相手の歩切れを見越して△1一香と打ったが、ここは黙って△1二歩だった。Wパパ氏は、それならこちらも安心する、とのことだったが、本譜は香を取られる変化がつきまとったのが大きかったのだ。
さて▲4一銀に私の応手は。

△3一銀▲3二銀成△同銀▲1三歩成△同香▲1一銀 まで、Wパパ氏の勝ち。

△3一銀の受けがひ弱だった。本譜△3二同銀でも受けきれると読んだのだが、平凡に▲1三歩成~☗1一銀をうっかりした。これ以上は指せない、と投了。
感想戦では▲4一銀に△3一金が検討されたが、▲3二銀打以下、先手の攻めを振りほどくのは容易ではないという結論になった。
しかしどうもおかしい。きのう帰宅した私は、▲3二銀打以降を考える。△3二同金▲1三歩成△同香▲3二銀成△同玉▲1三飛成で後手わるい、とお互いが読んでその先はやらなかったのだが、ここから△2二銀▲1二竜△2三銀打ならどうか。これは▲1七竜と引き揚げられ、次に▲3五桂や▲6六香を見せられて、やはり後手が容易ではないか。
あまりやりたくはないが、私は「東大将棋8」を起動し、まず▲4一銀の局面での後手の最善手を問うてみた。答えは「△3三金上」で、「後手有利」。▲3二銀打~△2三銀打の変化のソフトの判断も、「後手有利」だった。ソフトの形勢判断は1手を境にコロッと変わるから即断はできないが、これならまだまだ後手も指せたようである。
相矢倉は久しぶりに指したが、やはり奥が深い。しかし後手番では守勢になってちょっと指せない、が実感だった。
もう7時半が近い。松尾女流初段が、i-phoneを注視している。旦那様の歩七段×木村一基八段との対局が中継されているらしい。松尾女流初段の夫婦愛を見た気がした。
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LPSA芝浦サロン・船戸陽子女流二段5・完敗

2011-03-25 00:53:19 | LPSA芝浦サロン
私は船戸女流二段のお怒りを鎮めるため、おかわり対局を申し込む。船戸女流二段とのおかわりは、10月19日(火)以来、早くも2度目となる。前回は1局目に私が負けたからその雪辱戦だったが、本局は船戸女流二段の雪辱戦だ。それなのになんで私がおカネを払わうのかよく分からぬが、私のほうが楽しんでいるからいいのだろう。
早速2局目の開始。☗7六歩☖3四歩☗2六歩☖4四歩。私の居飛車明示に船戸女流二段は振り飛車模様の立ち上がりだが、船戸女流二段は雁木を得意としているので、決め打ちは早い。
果たして船戸女流二段は12手目に☖6二銀。これで居飛車がほぼ確定した。船戸女流二段との平手戦は28局目だが、相居飛車系の将棋は4局目となる。27手目☗2五歩に☖3三銀と受けず☖1四歩だったので、ここで雁木もほぼ確定した。雁木も船戸女流二段の得意形である。
私は2歩を持ったので、☗1五歩と突っかける。☖同歩に☗1四歩。これに☖同香なら☗2四歩☖同歩☗同飛☖2三歩☗1四飛の狙いだったが、船戸女流二段に☖3三角と上がられて、早くも読みが破綻した。考えてみれば、プロが☖1四同香という素直な手を指してくれるわけがなかったのだ。
私は☖1五の歩を☗3七銀から取りに行くが、これではいかにも遅い。船戸女流二段は☖7三桂と跳ね、☖4五歩と角道を通したあと、☖6五歩と戦端を開く。ここではもうダメだと思った。
以下は船戸女流二段の快調な攻めをひたすら受けるのみ。ツボに入ったときの船戸女流二段は手がつけられない。船戸女流二段に責められるのは嫌いではないが、もう限界だ。最後は☗9八玉に☖6七成銀とすり寄られたところで、もはやこれまでと投了した。
本局、相手陣に駒が侵入したのは、☗8二角と打ちこんだときの一手だけだった。1局目の「怪勝」はどこへやら、まさに実力どおりの完敗だった。しかし悔しかったのはいうまでもない。この悔しさを忘れないために、投了図の駒の配置を記しておく。

2局目はちょっとアレだったが、この日も半日、楽しかった。女流棋士に指導をいただける境遇にあるのは幸せなことだ。船戸女流二段と指しているとき、いつもそう思う。
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LPSA芝浦サロン・船戸陽子女流二段4・逆転

2011-03-24 00:56:09 | LPSA芝浦サロン
昨晩放映された日本テレビ系「(オリコンで)1位をとったアノ歌コンサート」はよかった。元おニャン子クラブの城之内早苗がしっとりとしていて、私のイチオシだった。AKB48もよかった。日本全体が沈んでいる中、日本を元気にするには、歌の力が必須であろう。

昨年11月8日のLPSA芝浦サロンは、船戸陽子女流二段の担当だった。この日は月曜日だったが、女流棋士ファンランキング1位の登板なので、芝浦に出向く。
その船戸女流二段は、5日の黒とはうって変わって、全身ピンクのいでたちだった。LPSAのファッションリーダーだけあって、何でも自在に着こなす。
挨拶もそこそこに対局開始。船戸女流二段とは飛車を振ったり振られたりだが、本局は私が四間飛車に振った。船戸女流二段は早々と銀を腰掛け、天守閣美濃に組む。居飛車穴熊と並び、これも船戸女流二段の十八番である。私も高美濃に組み、着々と戦機をうかがう。
私が☗7五歩と伸ばすと、船戸女流二段は☖9三桂と、こちら側から活用する。そして☖8五桂。これに私が☗8八角と引いたので、(たしかこの手の時だったと思うが)すかさず船戸女流二段から待ったが入った。
「ここは☗8六角。☗8八角ならこっちが簡単によくなるよ」
そう言って、船戸女流二段が私の角を「8六」にやる。
「ええっ、そうなんですか? でも待ったはできませんから」
「できなくても何も、角を引くのは悪手なの。私はこの将棋を何百局も指してるんだから」
5日の松尾香織女流初段戦で、私は早投げを連発した。局面によってはまた早い投了もあり得るので、船戸女流二段も必死だ。そんなやりとりを、手合い係(だったと思う)の神田真由美女流二段が笑いながら見ている。そこには松尾女流初段もいたような気がする。
「それでも待ったはできません」
「ダメよ」
「いえいえ、この手で勝敗が決するほど、将棋は簡単じゃないです」
結局私の指し手を通して☗8八角と引いたが、上手は☖6五歩~☖8八角成~☖6五銀と駒を捌いて、やはり十分になった。
しかしここから私が粘る。馬を2枚作り、敵飛を3一に追いやる。私は☗4六馬と引いて一安心。上手はどこかで☖2五歩と突く手があったはずだが、そうならなかったのは、2四の空間を開けるのに抵抗があったからだろう。
私の駒損ではあるが、私は6二に作ったと金を5二~5三~5四と活用し、船戸女流二段の攻めを待つ。このあたりは、私の持ち味が良く出ている。船戸女流二段と指すときはアガッテしまうが、不思議と将棋は落ち着いていることが多い。船戸女流二段とじっくり将棋を楽しみたいとの思いが、気持ちに余裕を持たせているのだ。
一方の船戸女流二段、序盤で優勢になったのに流れはわるく、こんなはずではない、の思いもあったろう。表情が曇ってきた。船戸女流二段は腕時計もピンクだ。きょうはピンク一色のコーディネートというわけだ。芸能人と見紛う。
船戸女流二段は端攻めに望みをかけるが、王が1二なので、迫力もいまひとつだ。このやりとりをうまく逆用して形勢逆転、私がハッキリと優勢になった。
チャンバラは端の周辺に絞られたので、ここまでくれば考えやすい。私はなおも船戸女流二段の手に乗って指し、優勢が勝勢に変わった。
☗1五歩☖同王☗2七銀。高美濃囲いの銀を攻めに参加させて、上手王を受けなしに追い込んだ。この局面をしばらく眺めていた船戸女流二段が、「負けました」と悔しそうに投了した。
私はケラケラ笑い、
「私が勝ちましたよ、この将棋。だから将棋は最後まで分からないって言ったでしょ?」
と神田女流二段に告げる。対して船戸女流二段の不機嫌そうな顔。まあ、それはそうだろう。自分が情けをかけて待ったを許してやったのに、それを拒否されて将棋も負けてしまったのだから…。
船戸女流二段は笑顔が素敵だが、怒った顔もまたかわいらしい。などとホレボレしている場合ではない。このままではまずいな、と思った。
(つづく)
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LPSA芝浦サロン・中倉宏美女流二段1

2011-03-23 00:32:35 | LPSA芝浦サロン
昨年10月29日(金)のLPSA芝浦サロンは、私が将棋ペン倶楽部へ投稿する原稿の執筆にあてたため、休んだ。しかし肝心の原稿は、1文字も書けなかった。こんなことならサロンに行くべきだった。
その翌週、11月5日(金)は中倉宏美女流二段の担当で、これは行った。
LPSA棋譜ノートの2冊目が前回で終わり、本局から3冊目となる。棋譜ノートには40局ぶんが記入できるが、2010年の初めから使い始めたから、けっこうな数に上っている計算だ。10ヶ月で3冊目とは、ちょっと多い気がする。余談だがこの日は棋譜ノートの在庫がなく、後日購入した。
中倉女流二段とは、芝浦サロンでは初対戦。ちなみに駒込サロンでの戦績(平手)は、私の8勝10敗1指し掛けだった。
このころはまだ、私の金曜日の仕事が休みだったので、早めにサロンに入り、午後3時半からの指導対局となった。
対局開始。私の3手目☗2六歩に、中倉女流二段は6手目に☖3二飛。中倉女流二段は居飛車VS振り飛車の対抗形を好むので、振り飛車は予想されたところである。振り飛車は本局が13局目になるが、実に全局三間飛車だった。LPSAで三間飛車の使い手といえば藤森奈津子女流四段が挙げられるが、中倉女流二段のそれはわりと持久戦志向なのに対し、藤森女流四段は石田流からの軽い捌きを好む。また藤森女流四段は四間飛車や向かい飛車の将棋もあり、振り飛車・三間飛車の採用率は、中倉女流二段のほうが上回る計算になる。よく飽きないな、と妙なところで感心してしまう。
本局は時間もたっぷりあるので、私のほうから持久戦に誘導した。私は穴熊は指さないので、天守閣美濃にすることが多い。本局もそうなった。
中倉女流二段☖4四銀に、私は☗2四歩☖同歩☗同角と動いたが、当然☖2二飛と回られ、☗2五歩と謝るようでは、何をやっているのか分らなかった。
中倉女流二段は角を転回して☖7三角。私は☗1五角~☗2六角~☗2七飛と、屈服を強いられる。これも☗2四歩の罪だ。いやその前の☗3七桂も、桂頭にキズを作ってよくなかった。
中倉女流二段☖6五歩。角道を開けられ、ここでは私がわるい。その局面が下である。

ここから☗1七角☖3三桂☗3五歩☖2六歩☗同飛☖3七角成☗2八角☖同馬☗同飛、と進んだ。苦しい☗1七角に中倉女流二段は☖3三桂。しかしここでは☖1五歩と角頭を攻められるほうがイヤだった。つづく☖2六歩でも☖3六歩がイヤだった。本譜も桂損になり似たようなものだが、お荷物の角が捌けたのが大きい。
ただし形勢は互角。中倉女流二段は☖6四馬と引きつけて十分。ただ、☖8四桂から☖7六香の攻めはありがたかった。私は☗7七銀を犠牲にこの桂香を入手する。これを☗7六香~☗7五桂と打ち返して優勢になったと思った。
しかし私にも攻め急ぎの手があり、また形勢は逆転。

ここで中倉女流二段が☖8六馬と切ったのが短兵急だった。ここは☖7五銀とかぶせられるのがイヤだった。☗同銀☖同馬の次、下手の指し手がむずかしい。
本譜は私の辛勝。局後はこのあたりの検討を重点的に行ったが、変化はあるものの上手勝ちの結論だった。
中倉女流二段は指導中でも表情が真剣で、こちらも指していて気合が入る。内容は負けだったが、将棋を心から堪能でき、私は満足だった。
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LPSA芝浦サロン・松尾香織女流初段2・マッカラン勝負ラスト3

2011-03-22 00:12:55 | LPSA芝浦サロン
昨年10月26日のLPSA芝浦サロンで、松尾香織女流初段との指導対局に負けた私は、このまま帰るわけにもいかず、おかわり対局を所望した。いま考えれば船戸陽子女流二段にしっぽりと将棋を教えていただくチャンスだったのだが、このときは松尾女流初段とのマッカラン勝負を消化することしか頭になかった。繰り返すが、私は律義なのである。
私がおカネを出そうとすると、松尾女流初段は
「いえ、いえ、いいですよ。いまの将棋はなかったということで…」
とそれを制す。しかし30手で終わっても立派な指導対局なわけで、これを記録から削除するわけにはいかない。気持ちだけありがたくいただき、おかわりの1,000円を払って、私は2局目の指導対局に入った。
☗2六歩☖3四歩☗2五歩☖3三角。松尾女流初段はゴキゲン中飛車の連チャンはしないと思ったが、私は志が低いので、大事を取って☖3三角まで決めておく。松尾女流初段は四間飛車に振った。
私は☗2六銀から☗3五歩。松尾女流初段は☖3二飛と受けずに☖5五歩とマギレを求めてきた。私は☗3四歩☖同銀を決め☗5五角と歩を払ったが、ここは☗5五歩と、じっと歩で取っておくのだったか。
松尾女流初段は3筋を軽く受け流す方針のようだ。☖5二飛に私は☗3七銀。落ち着いた手のようだが、☗3八飛と寄る手をもう少し掘り下げるべきだった。
本譜は以下☖7三桂と跳ねられ、☖4五歩から角を換わられ、☖3三桂とこちらの桂も跳ねられては、指しにくさを感じた。お荷物気味だった☖3四銀まで捌かれ、☖5五飛と出られた局面はどうもいけない。
私は☗4四角と飛車桂取りに打ったが、これがどのくらい利いているのか。数手進み、☖5七銀の打ち込みが厳しかった。ここで素直に応接しても上手には☖6五桂の応援などがあり、とても支えきれない。私は飛車道を防ぎつつ☗5五桂を先着したが、構わず☖4八銀成~☖5七銀と殺到され、考えれば考えるほど、気が滅入ってくる。とても耐えられず、ここで私は投げた。
ところがこの投了がまた早すぎると、あっちこっちから異議を唱えられた。
「ちょっとぉー。大沢さん、私にマッカランをくれたいの?」
と松尾女流初段。
「いえいえいえ、そんなことはありませんよ」
「大沢さんのほうが(形勢が)いいんじゃない?」
私が否定するそばから船戸女流二段も口を挟み、投了の局面から指し始める。参考までに、投了図の駒の配置を以下に記してみよう。

上手・松尾女流初段:1二香、1三歩、2三歩、5二飛、5六歩、5七銀、6一金、6三金、6四歩、7二銀、7三桂、7四歩、8二王、8三歩、9一香、9三歩 持駒:角、歩2
下手・一公:1七歩、1九香、2五歩、2九桂、3三馬、4六歩、4八飛、5五桂、5八金、6七歩、6八金、7六歩、7八玉、8七歩、8九桂、9五歩、9九香 持駒:銀2、歩2

☗6三桂成☖同銀☗5三歩☖同飛☗4四馬…。たちまち下手が優勢になってしまった。
「うん、そうなればこっちがいいけど、でもこうはならないでしょう」
「どうして? ここまでは必然じゃない」
「うううん…。そうか5筋はなまじ受けないほうがいいのか…。でも先生が私の味方をしてくれていいんですか? 私が負けたほうがマッカランのご相伴をあずかれるかもしれないから、そのほうがいいでしょう?」
「それとこれとは別。いい将棋を投了するなんておかしいよ」
と、船戸女流二段は我がことのように憤る。
「……。でも桂を渡すと、あとの反撃が厳しいでしょ?」
「四間飛車党から見ると、☖6三金を取られるのは痛いですけどね」
私が言うと、今度はミスター四間飛車氏がつぶやく。松尾女流初段、船戸女流二段も、ここで投了は早いを繰り返した。
そうか…。1局目の敗戦が尾を引いて、完全な負け下になっていた。これは将棋の神様に、失礼なことをした。
「もう! 私が指す」
私の不甲斐なさを目にして闘争心に火がついたのか、船戸女流二段が私の仇を取るべく、松尾女流初段に練習将棋を挑んだ。船戸女流二段のいでたちは黒のレオタード風で、今回もイカしていた。
それはともかく、この連敗は現実的に、痛かった。マッカラン進呈回避のためには、残り2局を連勝しなければならなくなったからである。
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