一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

大野教室へ行く(前編)

2011-03-11 00:36:47 | 大野教室
4日の芝浦サロンの帰りの電車は、W氏といっしょだった。
「大沢さんもブログのネタがないだろうから、大野教室に行った方がいいよ」
最近のW氏は、よくこの言葉を口にする。W氏は大野教室の生徒なのだ。私は休日に将棋を指しに行くほど将棋が好きではないが、W氏の熱心さに負けて、1回だけお邪魔することにした。
説明が前後したが、大野教室とはその名のとおり、プロ棋士の大野八一雄七段が講師を務めるもので、七段が直々に実戦指導するのが、隠れたウリである。開講日は原則的に第1、第3の週末(土、日)で、時間は午後1時から5時まで。料金は全4回で12,000円。1回料金は3,500円である。場所は、JR川口駅から徒歩5分のところ。
6日(日)昼、私は日本将棋連盟のホームページに記載されている大野教室の電話番号に電話をかけ、大野七段ご本人から所在地を聞いた。
大野教室は線路沿いのマンションにあり、分かりやすかった。ところが昼の電話で部屋番号を聞き取れず、マンションの各部屋にも表札がなかったので、往生した。まさか一軒一軒訪ねるわけにもいかない。
どうしたものかと思案していると、自転車置き場におばちゃんが現われたので、ダメもとで大野教室を聞いてみた。
これがビンゴ。部屋を教えていただき、午後1時すこしすぎ、無事入室することができた。
中は洋室と和室の二間。ここに五~七寸の将棋盤が数面、所狭しと置かれていた。将棋教室でこのような盤を使うのは、珍しいのではなかろうか。
かつて大山康晴十五世名人は「強くなりたければ、いい盤と駒で指しなさい」といった。いい駒や盤は大切に扱うから、自然と読みに集中する、ということだろうか。いずれにしても、大野教室のこの盤は、指すだけで強くなりそうな気がした。
先客は大人3名、子供4名だった。子供の内訳は男子2名、女子2名。女子はWパパの娘さんの、AkiちゃんとHanaちゃんだ。Akiちゃんには、昨秋のわらび信濃合宿で2連敗した苦い思い出がある。いつかリベンジしようと思う。
また、後で分かったのだが、大人のうち1名は、男子の子供の親御さんだった。
生徒が扇状にすわり、私は大野七段に角を落としていただいて、対局開始。
私のプロ棋士との指導対局成績は、大野七段・角落ち2敗、植山悦行七段・飛車落ち1勝2敗・角落ち2勝2敗、櫛田陽一六段・角落ち1勝、片上大輔六段・飛車落ち1勝・角落ち1勝、である。私の棋力では、棋士に大駒落ちでも勝てないのは承知している。それでもいくつか白星があるのは、棋士が緩めてくれたからだ。棋士に本気を出されたら、二枚落ちでも勝てないだろう。
大野七段からの白星はないが、指導対局なので、チャンスボールはあった。それを打ち返せなかった私がわるいのだ。今回はそのチャンスをなんとか活かそうと思った。
局面。私は居飛車か振り飛車か明示しなかったが、大野七段が☖5二金左と上がったのを見て、☗2六歩と突きだした。しかし☖4三金とこちらに構えられて、あまり効果がなかった。
私は2筋の歩を交換するが、大野七段は素直に☖2三歩と打たない。この歩を攻めに使うハラだろう。
そこで私もツッパッテ☗7五歩と突いたが、これは作戦が分裂してよくなかった。
☗2八飛に大野七段、☖3五歩。さらに☖3四金と厚くされて、もう息苦しさを感じてしまった。先日のイケメン氏との角落ち戦でもそうだったが、下手は3五の位を取らせないほうがよい。いや3筋だけでなく、ほとんどの筋で位負けをしないほうがよい、と定跡では教えている。
大野七段は正座を崩さず、器用に上半身をよじり、着手する。私も正座を続けたいが、足が痺れてきた。
情けないと思う。ここ最近間食が多く、また体重が増えてきた。この歳になったら、減量は苦難だ。ダイエットしなければと痛感しつつ、失礼して膝を崩す。
私は飛車を4筋に振るが、これは作戦が一貫せず、支離滅裂。☖2六歩には☗2八歩と謝ったが、これでは2筋に歩が利かなくなり、大損となった。
さらに左の金を5八に上がったのが悪手。飛車の横利きが消えたため、すかさず☖2七歩成~☖2八歩~☖2九歩成と桂を取られ、その桂を☖5四桂と要所に据えられては、早くも敗勢となった。
芝浦サロン仲間のW氏、Hon氏が相次いで顔を見せる。「おお、やっと来ましたね」という顔だが、私は挨拶をする余裕すらない。上手の厚みに押されジリジリ後退し、歩も3段目にペタペタ受けたため、初形に近くなってきてしまった。
W氏は慌てて対局に入らず、パソコンに映し出されている棋王戦第3局を観戦し始めた。W氏は久保利明棋王のファンなのだ。応援にもチカラが入っていることだろう。
大野七段は最初からノータイム指しだったが、筋に入ってきたので、文字どおりノータイム指しになってしまった。私は防戦一方だ。
上手は空中に要塞を作り、「4三」の地点に王がしっかり収まっている。まるでツリーハウスのようだ。この王をどうやって捕まえればいいのだろう。
ダメだ…これ以上無意味な手を指して、醜態を晒したくない。私は力なく、
「負けました…」
と投了した。下手にチャンスらしいチャンスがまったくない、文字どおりの完敗だった。
(つづく)
コメント (5)
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