一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

渡辺九段、勝ち切る

2024-05-30 23:38:17 | 男性棋戦
きょうは第65期王位戦挑戦者決定戦が行われた。対局者は渡辺明九段と斎藤慎太郎八段。
渡辺九段は「藤井聡太被害者の会」会長で、藤井王位にいくつもタイトルを獲られた。藤井王位がいなければ二十世名人になっていたはずで、あいや、まだ渡辺九段の二十世名人がついえたわけではないが、藤井王位に誰も勝てない現状では、名人2期の藤井王位が二十世名人の最右翼と言わざるを得ない。
とにかく無冠になってから影が薄い渡辺九段だが、今回は輝きを取り戻す、願ってもないチャンスだ。
対して斎藤八段も、名人に2期連続で挑戦した実績がありながら、前期A級順位戦では、まさかの降級を喫した。順位戦の鬼とも思えた斎藤八段でさえ降級する。これが順位戦、とりわけA級の恐ろしいところだ。
しかし勝負事は分からない。この、どちらも株価が下がっているふたりが、挑戦者決定戦を争うのだ。
しかし挑戦者決定戦ほど、勝ちと負けの落差が大きいものはない。負けたら来期また出直しだが、勝てば全国を回って将棋三昧だ。
将棋は渡辺九段の先手で、相懸かりになった。どっちが先手になっても角換わりになると思っていたから、ちょっと意外だった。今回もABEMAの中継ありで、ありがたい。
そこから進んで、渡辺九段は中住まい、斎藤八段は銀冠に組んだ。居飛車党の不思議なところは、対振り飛車では穴熊など玉をガチガチに固めるのに、相居飛車戦だと、平気で玉が薄い将棋を指すことだ。とくに渡辺九段には、その傾向が強い。ただ本局の場合、金銀を2段目に並べるこの形は、渡辺九段の得意形だと思う。
斎藤八段、7筋の歩を突きあげて、銀を出る。渡辺九段は飛車を逃げる一手だが、そこで斎藤八段は7筋の歩を取り返すのだろう。
だがそうすると、渡辺九段は飛車を切って、角を飛び出す手がある。私が見えたくらいだから狙いが単純すぎるが、存外先手の駒が捌けていないか?
斎藤八段、その狙いにいま気づいたようだが、当初の予定通り、銀で歩を取る。と、渡辺九段が短考で、先の手順を実行した。
斎藤八段もやや虚を衝かれたようで、長考に沈む。明らかにこの筋を軽視していたふうで、私はこの将棋、渡辺九段が勝つと思った。
事実、そこから渡辺九段が徐々に形勢の差を拡げる。そしてこれは、容易に逆転しない形だ。先手陣には嫌味がなく、後手陣は先手が次善手の連続で迫っても、寄りそうな気がする。
渡辺九段の的確な追及に、斎藤八段は金、角を捨て竜を取る非常手段に出たが、渡辺九段は豊富な持ち駒に物をいわせ、勝ち切った。
感想戦では、上の飛車切りのあたりを重点的にやるかと思いきや、わりとアッサリ素通りしたので、拍子抜けした。どうも勝負所は、別のところにあったようである。
さて、渡辺九段の王位戦登場は初めて。渡辺九段は「冬将軍」と異名を持つほど、秋から冬にかけてのタイトル戦(竜王、王将、棋王)に抜群の強さを発揮したが、真夏の王位戦はどうなのだろう。相手が藤井王位でなければ興味津々の戦いなのだが……。
第1局は7月6日、7日。
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