一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第82期名人戦第5局2日目「盤石の防衛」

2024-05-28 23:03:46 | 男性棋戦
第82期名人戦第5局(主催:毎日新聞社、朝日新聞社、日本将棋連盟)2日目、藤井聡太名人の封じ手は、飛車先の歩を突き捨てる手だった。これは大方の予想通り。
豊島将之九段が歩で取ったのはいいとして、唸ったのはその次、藤井名人が5筋の歩を突きあげたことだ。
指されてみればなるほどの手で、どう応じても味が悪い。同じ戦型で、この金が銀のときも歩を突く手があるが、やはりこの筋が急所のようだ。
豊島九段はこの歩を取り、数手後金を摺りこんだが、手数をかけたわりには、でかしていない。
反対に藤井名人は手順に馬を引き、穴熊が指しやすい。
さらに藤井名人は香を立て、金香交換の駒得に成功した。伊藤匠七段とのタイトル戦でもこのマスに香を打って駒得を果たしたことがあったが、藤井名人は香の使い方がうまいと思う。ああまあ、藤井名人は、すべての駒の使い方がうまいのだが……。
さらに藤井名人はその金を、打ちにくい場所に打つ。だがこれはAIも推奨していて、こんな手が一致するようになったら、もう藤井名人の勝ちだと思った。
ABEMA2日目の解説のひとりは郷田真隆九段だったが、藤井名人が6筋に歩を垂らす変化が出てきた。これも藤井名人が序盤で歩を損したから生じたわけで、藤井名人はここまで読んで、6筋の歩を差し上げたに違いない。
反対に豊島九段はほとんどの筋の歩が切れておらず穴熊崩しに有効なと金攻めができない。
藤井名人、端に銀捨ての鬼手が出た。これも、豊島九段が端歩を2つ伸ばしたから生じた手である。私が後手だったらバカバカしくて投了しているところだが、名人戦でそれはできない。
豊島九段、取るに取れず香を受けたが、これで8筋に駒柱ができた。豊島九段はともかく、藤井名人はプロになって、駒柱の経験があるだろうか。
以下も、藤井名人の攻め、豊島九段の受けが続く。受けといっても受け方がいろいろあり、豊島九段がわずかでも間違えると、差が開いていく。
以下99手まで、豊島九段の投了となった。
投了図を見ると、藤井名人の穴熊が手つかずで残っている。これがそのまま形勢の差で、藤井名人の完勝だった。なんでこうなってしまったのだろう。
序盤、AIの形勢判断は、「藤井52:48豊島」が長く続いた。これがほかの戦型ならなんてことはないが、穴熊戦の場合、挽回が難しかったということだ。
むかし私が工場で仕事をしていたとき、作業机の上に敷いた新聞に、小さな穴が開くことがあった。それはそのまま作業をすると、やがて大きな穴になり、破れてしまうのだった。本局の豊島九段も、こんなイメージだった。
こんなことを書くのもいまさらだが、豊島九段は相手の穴熊を警戒し、後手番ではあるが、藤井システムを採用したほうがよかったのではないか。いや、藤井名人の指し手が完璧だったというべきか。
藤井名人は、4勝1敗で最年少名人防衛となった。昨年、最年少で名人位を獲得したのだから当然だ。今回、苦しい将棋もあったが、数字的には余裕の防衛だった。
そしてタイトルは、22連覇の22期となった。タイトル数は早くも自身の年齢を抜いたわけだが、自分の年齢より多くのタイトルを獲っているのは、羽生善治九段、大山康晴十五世名人、中原誠十六世名人(引退時)の3人しかいない。これから藤井名人は、どれくらいタイトルを積み重ねていくのだろう。
コメント (4)
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