一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

加藤九段に新たな段位を贈るなら

2024-06-11 22:14:52 | 将棋雑考
加藤一二三九段が非公式ながら「十段」を所望したのは、いつだったか。加藤九段は中学生で四段、18歳でA級八段、20歳で名人挑戦、タイトルは名人を含む8期、公式戦通算1324勝の大記録を持つ棋士である。言っちゃあなんだが、その辺の九段(失礼)とは比べものにならないほどの実績がある。
加藤九段が2017年に現役を引退したとき、日本将棋連盟は加藤九段になにがしかの肩書を授与するチャンスだった。でもそれはなかった。
もっとも、二上達也九段、有吉道夫九段、内藤國雄九段が引退したときも連盟はノーアクションだったから、加藤九段のときも、このことは容易に予想できた。
そこで勝手ながら、もし加藤九段に新たな肩書を授与するならばどれがいいか、考えてみる。

・「実力制第○代名人」
まず、「実力制第○代名人」問題を片付けておく。これは升田幸三実力制第四代名人のために作られた肩書で、連盟はつねづね、引退して久しい升田九段に、新たな肩書を与えたいと考えていた。
当初は「名誉名人」を考えていたが、升田九段は「名人を取った者が、なんで『名誉』などと余計な単語を付けられにゃならんのだ」と、ガンとして受け付けなかった。
そこで連盟は1988年、「名人を2期以上取り、成績抜群の70歳以上の引退棋士に、『実力制第○代名人』の称号を授ける」として、升田九段に授与した。
ところがこの定義も「名人1期……」とか「名人3期……」とか、諸説あり、現在ではハッキリしない。ただ、名人1期の加藤九段が引退しても九段のままだったから、少なくとも「2期以上の名人」が該当することは分かった。

・「名誉九段」
次に候補に挙がるのがこれである。この肩書は、渡辺東一名誉九段、金易二郎名誉九段、加藤治郎名誉九段、高柳敏夫名誉九段、佐瀬勇次名誉九段の5名が授与されている。しかしいずれも現役時代にタイトル戦に出たわけでもなく、加藤名誉九段、高柳名誉九段などは、観戦記のほうが馴染みがあるくらいだ。
よって「名誉九段」は、まさに名誉的な肩書といえる。現役で輝かしい実績を残した加藤九段には、ふさわしくない。

・「十段」
十段の新設。これが叶えば分かりやすい。もとをたどれば、「九段」も、タイトル名だった。ところが、塚田正夫、大山康晴、升田幸三の名人経験者が無冠になったとき、前の「八段」ではあんまりだというわけで、3氏には特例で「九段」が与えられた。
ところがこのとき、タイトル戦にも同名の「九段」があり、ややこしいことになった。そこで連盟と読売新聞社は協議の末、タイトルを「十段」としたのである。
タイトルの十段が竜王に昇格したいま、以前と同様の理由で、段位の十段を新設しても、なんの障害もない。

・「名誉十段」
この肩書も、ないことはない。授与者はただひとり、塚田正夫名誉十段である。
ただ塚田名誉十段は現役時代、タイトルの九段を3期保持し、永世九段になっている。その実績があるから、タイトルとしての十段に「名誉」がついたと思われる。
加藤九段も「十段」を2期獲っているが、するとこの肩書は、九段もしくは十段の経験者に限定され、後述する棋士が該当しなくなってしまう。
結論として、加藤九段に新たな段位を贈るなら、「十段」がふさわしいと考える。そして同様の理由で、二上九段、有吉九段、内藤九段にも、十段を贈りたい。二上九段に十段を贈るとなると、弟子の羽生善治会長に職権乱用疑惑がのしかかるが、複数の棋士に授けるなら、抵抗もあるまい。
加藤九段は現在も意気軒高で、120歳までは生きるだろうが、新たな段位は被授与者が存命でなければ意味がない。
今年は日本将棋連盟設立100周年。勝ち星による昇段規定が、連盟60周年にあたる年に制定されたことも考えると、今年十段位を新設しないと、機会を逸すると思う。
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