一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第82期名人戦第5局1日目「豊島九段、飛車を振る」

2024-05-27 00:08:13 | 男性棋戦
26日・27日は第82期名人戦第5局である(主催:毎日新聞社、朝日新聞社、日本将棋連盟)。藤井聡太名人3連勝のあと、前局は豊島将之九段が1勝を返したが、引き続き豊島九段が崖っぷちであることに変わりはない。
第5局の対局場は北海道紋別市。全国的に名の知れた地名だが、意外にも鉄道は走っていない。むろんむかしは鉄道=名寄本線が通じていたが、1989年5月1日、143km全線が廃止された。「本線」と名の付く廃止は初めてで、鉄道ファンは大いに落胆したのであった。
私がむかし紋別市のビジネスホテルに泊まったとき、プロパンガスが壊れたとかで、シャワーが使えないことがあった。
そこでスタッフ氏(ご主人)が、近くの銭湯まで、クルマで送り迎えしてくれた。私は銭湯の帰りにご主人オススメの寿司屋で降ろしてもらい、寿司をつまんだ。にぎりのセットが2,000円だったと記憶している。寿司はもちろん、美味かった。
さて、第5局は藤井名人の先手である。藤井名人の居飛車明示に、豊島九段は角道を止める。居飛車党はそれでも雁木があるから厄介で、第3局がその形だった。
豊島九段、さらに9筋の歩を突き、様子を見る。第3局はここで飛車先の歩を突いたから、第5局はさらに思わせぶりだ。ABEMA解説の藤森哲也五段は、「振り飛車もあるかもしれませんよ」と期待を抱かせる。
だけどこっちはもう、その手には乗らないのである。どうせまた居飛車だろ?……と思いきや、豊島九段が四間飛車に振ったから驚いた。名人戦における居飛車党の振り飛車は珍しく、ひょっとしたら初めてかもしれない。
当ブログでは以前から、藤井名人の角換わりの勝率が高すぎるから、相手は振り飛車を指すのもひとつの作戦だ、と主張していた。今回それが現実になり、私としてはうれしい。もう角換わりはいい。
ちなみに竜王戦では、第3期に羽生善治竜王が第4局まで、●●●○と今回と同じ星で、第5局に四間飛車に振った。挑戦者の谷川浩司二冠は天守閣美濃に組み、際どい終盤を読み切り、竜王奪取とした。
ただ羽生現九段はオールラウンドプレイヤーで、豊島九段とはやや事情が異なる。もっとも豊島九段がこの大舞台で、気分転換で振り飛車を採用するはずはないから、長く温めていた作戦ともいえる。今回豊島九段は、どんな振り飛車を見せてくれるのか。
藤井名人は穴熊を明示した。AIは穴熊を好まないが、人間は指す。棋士も、そこまでAIに従属はしないのだ。
と、藤井名人は6筋の歩を突き越した。だが、この歩は銀で取られるからタダである。リアルタイムで見ていたから記譜の間違いではないが、こんな手があるのか? 一歩損でも角道を通すことがそのココロだが、銀で取られてまだ銀の進出があるから、藤井名人は金を上がらなければならない。それなのにAIの評価は先手十分。私は訳が分からなかった。
ただ、この手を藤井名人は短考で指した。藤井名人も、豊島九段の振り飛車を視野に入れていたのだろう。
豊島九段、金を三段目に上がり、さらに四段目に上がった。花村元司を思わせる奔放な指し手だが、いかにも振り飛車らしい。豊島九段、振り飛車もイケルではないか。
豊島九段が飛車を転戦し、藤井名人が次の手を封じた。
角換わりは私には、どこが急所だかまったく分からないが、対抗形なら馴染みがある。2日目が楽しみだ。
(つづく)
コメント (2)
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